「ガザ所有」:トランプ発言の具体案

石破総理がトランプ大統領との初御手合わせを、まずまず「無難にこなし」、前評判を覆したことに驚いている日本国民は多かろう。が、国際社会ではトランプの「ガザ所有」発言に対する驚きで、我が総理の話などまったく隅っこに追いやられてしまった。

但し、帰国後の日鉄によるUSスチール買収に関する石破氏の報告が、「単なる買収ではない。投資を行い、あくまで米国の企業であり続ける」だけだったのは如何なものか。その場合に日鉄の見返りが何なのか、つまり日本が得るものについてトランプとどんなやり取りをしたのかが抜けている。渡米前に拙稿で、「投資といえば良い」との趣旨を書いた手前、少々頂けない。

さて、5日の『産経』記事には、トランプは4日に行ったネタニヤフ首相との会談で、「全てのガザ住民を永続的にガザ域外へ移住させるべきだと主張。その上で米国がガザを『長期的に所有』する考えを示し」、住民の移住先として「エジプトとヨルダンの他にも多くの国」に受け入れを求めるとし、「将来的な住民の帰還は認めない考え」を示唆したとあった。

米国がガザを所有した場合、不発弾やがれきの処理などの後に都市を建設し「世界の人が来られる場所にする」ともトランプは述べ、「米軍のガザ派兵についても否定しなかった」という。記事の通り「将来的な住民の帰還は認めない」なら、200万超の住民が移住を拒み、近隣アラブ諸国が受け入れ拒むのも当然だ。

早速、国連の報道官は5日、グテ―レス事務総長が「いかなる強制的な移住も民族浄化に等しい」と考えていると、記者の質問に対して述べた。パレスチナのアッバス大統領も、ガザを「パレスチナ国家の不可分の一部」だとし、トランプ提案を即座に拒否した。

移住先に挙げられたエジプト、ヨルダン、サウジアラビア、その他この地域の多くの国々も、誰もが予想する通り、パレスチナ人をガザから追放するいかなる計画にも反対する姿勢を明確にしている。まあそうだろう。

が、時間が経つに連れ、トランプ流のレトリックの中身が漏れ出している。6日の『産経』はルビオ国務長官が、住民の移住はガザ再建のあいだ一時的に離れるという意味であり、「ガザ所有」とは「米国が再建に責任を持つという意志だ」とし、米国ががれきや不発弾の撤去に従事すると説明した。

これならまだ理解できる。こうした修正はトランプ流レトリックには付き物だから、軽挙妄動は禁物である。更に7日の『Newsmax』が報じた、ネタニヤフ首相が「トランプ氏のガザ計画は『斬新なアイデア』」と述べた話を読むと、むしろこれ以外にガザ復旧の方途はないのではないかとさえ思う。

同首相は「トランプ大統領はいつも本題に切り込む。そして、人々が考えもしないような点にまで踏み込む」、それは「アブラハム合意をもたらした考え方だ」とし、トランプが語った「ガザ所有」の具体案を以下のように述べている。

彼(トランプ大統領)がこう言っていることを理解してほしい。「彼ら(ガザ住民)をどこか別の場所に移住させ、そしてガザを再建させよう。そうすれば人々は戻りたくなるだろう。もし彼らがテロを否定するなら戻って来させてやろう」。

彼らを(一時的に)受け入れてくれる国をどこに見つけるかが、重要な問題の一つだ。しかし、トランプ氏とそのチームがそれに取り組んでいると思う。それは非常に重要なことだ。

トランプ氏のビジョンに対する誤解は、米国はハマスを倒すために(ガザに)軍隊を派遣しなければならないというものだ。冗談じゃない。我々は任務を遂行している。重労働を担っている。米軍は必要ない。トランプ氏もそうすると示唆していない。

(傍からは)イスラエルと米国の税金を使ってガザを発展させるつもりかと言われた。 トランプ氏は、アラブ諸国にはそれができる国があるだろうし、おそらく民間業者にもできるだろうと考えている。(この計画によってガザが)物理的にもイデオロギー的にも再構築される。追求すべきアイデアだと思う。とても希望を持っています。

但し、トランプのレトリックが、常に多くの西側の人々が好ましいと考える方に軌道修正されるとは限らない。大きな障害にぶつかれば、「やーめた」となるかも知れぬ。計画実現の最も効果的な方法は、トランプの「ノーベル平和賞」受賞の声を皆で高めることだと思うが、どうか。

年内に「ロ・ウ戦争」を終結させられれば受賞に近づく。北朝鮮の非核化は中間選挙までに、台湾海峡の安定化(望むべくは習近平の台湾統一放棄)も任期中にお願いしたい。日本国民としては、石破総理には全く期待できない拉致問題の解決を、年内にぜひ頼みます。