トランプ氏とプーチン氏が1時間半にわたる電話会談を行い、ウクライナ問題を中心に議論したと報じられています。双方が戦争終結に向けた打開策を協議、ウクライナのNATO加盟は現実的ではないこと、ウクライナの領土を2014年前の国境、つまりロシアが初めにクリミアを略奪したところに戻すのもどうか、という線で議論が進んでいるようです。
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トランプ大統領とプーチン大統領 2018年 クレムリンHPより
またプーチン氏はトランプ氏をモスクワに招聘し、トランプ氏は国務長官を中心とする停戦交渉の主要メンバーを決めました。
この現実解の可能性はこの戦争が始まって1年ぐらいたった頃にはささやかれていたものであり、私もそうなるのではないか、という趣旨のことをこのブログに以前、書き込んでおりました。
公平な目で見て、一方が力による侵略を行い、それを大国であるアメリカが後押しすることが世の中の常識に当てはまるのか、という議論は慎重に行わねばならないでしょう。例えば過去の戦争ではどちらか一方が明白に敗戦になった場合の講和条約では敗戦国が不利な条件下で締結というのはありますが、今回はウクライナがまだそのような宣言をしていない中でボクシングでいうTKOに近い終戦を前提にしており、当事国ではなく第三国により判定が下されようとする点はゼレンスキー大統領にとって忸怩たる思いでありましょう。
またアメリカの政権交代によりここまで戦局が変わってしまうのも恐ろしいのですが、個人的な意見としてはゼレンスキー氏の指導力にも限界があったような気がしてなりません。ましてや戦争を理由に同氏が大統領選を延期し続けたのは国民への信認確認を怠ったという点で外交上も不利に働いたと考えています。もしもゼレンスキー氏に絶対的自信と指導力が伴うと考えているなら大統領選はしかるべきに行うべきだったし、そこで再選されれば国際社会からの評価はまた別のものになっていたかもしれません。
ではお前は今回のトランプ/プーチン会談の講和に向けた方向性が正しいかと言われると非常に苦しいのです。つまり現実解ではありますが、ウクライナにとってほぼ得るものが何もない状態で終わるのです。言ってみれば完敗。私はこれが自国で起きたらどうなのだろうと想像するだけで胸が痛くなるのです。勝手に侵入してきて領土をごっそり取られ、残った国土を将来的に守る算段である安全保障が確保されていないのです。これを「当然の結果」とは誰も言えないと思います。
一方で膠着状態が続く戦争をいつまでも続けるわけにもいかない、これはトランプ氏の考え方に賛同をします。どういう形にせよ、止めさせる、これが必要でした。ただトランプ氏は同国の資源を手玉に将来ロシアの一部になるか、アメリカとディールをするかと迫るその姿はかつてイラク戦争で同国の石油資源を求めたブッシュ政権と重なるものを感じるのです。
プーチン氏から見れば「この戦争の引き際」のタイミングを計っていたことはあると思います。兵士や武器の損失は膨大なものであり、意地の張り合いのような状態においてトランプ氏が大統領になれば戦局は変わると分析していたと思われます。つまりずっと待っていた、これが正直なところでしょう。そしてディール好きのトランプ氏と何らかの発表していない取引材料があったと思われます。これは全く発表されていないので想像の域を出ませんが、この両名が純粋なディールをするとは思えないのです。
さて、仮に何らかの形で終戦し、講和が結ばれたとします。その時の世界地図を私は想像してみました。何が起きるでしょうか?いわゆる大国主義の復活ではないかと思うのです。つまりアメリカ、中国、ロシアであります。アメリカは中国と争っているのではないか、という意見もあると思うのですが、トランプ2.0になってそれは明白に変わっているとみています。一定の譲歩を感じるのです。トランプ1.0の時は中国がその敵対相手でした。今回はカナダ、メキシコ、パナマ、グリーンランドをめぐるデンマークが今のところ対象であり、今後、欧州各国もその相手になるのではないかとみています。その背景にトランプ氏はもしかすると中国とロシアの現状のポリシーと主権や姿勢を認める代わりに残りの国々についてアメリカ服従体制を取らせるのではないかという気がするのです。
トランプ氏が石破氏と会談した際、ほぼ外交問題にしては無風の状態で終わりました。さまざまな見方があると思いますが、一つには日米関係は確立されており、手がかからないと判断していたとしたらどうでしょうか?
異論はあると思いますが、絶対に違うということにもならないでしょう。
2025年は世界勢力地図が大きく塗り替わる第一歩になるのでしょうか?
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年2月13日の記事より転載させていただきました。