ウクライナ抜きの米露停戦交渉は第2のミュンヘン会談となるのか?

ウクライナのゼレンスキー大統領は15日、ドイツで開催中のミュンヘン安全保障会議で演説し、トランプ米政権が欧州防衛への関与を弱める可能性を踏まえ、「欧州軍」の創設を提案しました。「欧州と米国の関係は変化した。欧州軍を創設し、自らの未来を決めるべきだ」と強調し、トランプ米大統領がプーチン露大統領と会談すれば「危険だ」と警告しました。また、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟の必要性を訴えました。

一方、トランプ大統領は13日、ホワイトハウスで記者団に対し、中国およびロシアに軍事費削減や核軍縮を働き掛ける方針を明らかにしました。ウクライナ戦争や中東情勢が落ち着けば、ロシア・中国の首脳と会談し、「軍事予算を半減させる」と提案する考えを示しました。また、ロシアをG8に復帰させるべきだと主張し「G8からの除外は誤りだった」と述べました。

ゼレンスキー大統領とトランプ大統領 両大統領SNSより

ゼレンスキー大統領は演説で「和平合意はミュンヘンで署名されるべきではない。ここで何が署名されたのかを覚えており、同じ過ちを繰り返さない」と述べました。

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トランプ大統領がプーチン大統領と交渉しても戦争が終結するとは限らず、むしろ継続する可能性が高まる恐れがあります。

民主主義陣営がロシアに譲歩すれば、深刻な事態を招く可能性も指摘されています。

現時点でNATOからアメリカが撤退すれば、欧州の地位が低下してしまうことも憂慮されます。

ロシアが交渉に応じなかった場合、米軍派兵も選択肢に含まれるとの報道がありましたが、ヴァンス副大統領はこれを明確に否定しました。米国の軍事的関与の可能性は低いと考えられます。

トランプ大統領は外交を損得で判断するため、「ロシアを抑え込むために多少の損失を受け入れる」といった考えは期待できません。短期的な利益を重視する傾向が強く、長期的なリスクを見据えた対応は難しいかもしれません。

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ロシアにしても、仮にウクライナ戦争で優勢となり停戦したとしても、戦後の国家運営は厳しい状況に直面します。中国の経済支援や北朝鮮の軍事支援なしでは、持続可能な体制の維持は難しいと考えられます。

ミュンヘン会談は、1938年にチェコスロバキアのズデーテン地方の帰属問題を巡り、ドイツのミュンヘンで開催されました。会談にはイギリス、フランス、イタリア、ドイツの首脳が出席しました。ドイツ系住民が多いズデーテン地方の併合を求めるアドルフ・ヒトラーに対し、イギリスとフランスは、これ以上の領土要求を行わないことを条件にヒトラーの要求を受け入れ、合意しました。しかし、英仏の意図とは異なり、ドイツのさらなる膨張を助長し第二次世界大戦の勃発を招きました。