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コロナワクチンは、「感染予防効果はないが重症化予防効果があるから」という理由で、現在、国も関連医学会もコロナワクチンの接種を推奨している。
昨年12月17日に開催された参議院予算委員会でも、川田龍平議員の、「わが国が高齢者にコロナワクチンの接種を勧めるのは、ワクチンに重症化予防効果があるからなのか」という質問に対して、石破総理大臣は「コロナワクチンには重症化予防効果があると認識している。」と答弁している。しかし、わが国におけるその根拠とされる研究は、小規模でかつ観察期間も短く、十分な根拠にはなり得ない。
重症化および死亡予防効果を検討するには、ワクチン未接種のグループと接種したグループを、大規模にそれも長期間にわたって比較したリアルワールドのデータが、最も説得力がある。イギリスやイタリアから報告されたリアルワールドデータでは、コロナワクチンに死亡予防効果は見られず、未接種群と比較してワクチン接種群の方が、かえって死亡率が高かった。
リアルワールドデータによるコロナワクチン接種回数別全死因死亡率の検討
わが国には、全国規模で未接種群と接種群の重症化や死亡予防効果を検討したリアルワールドデータは存在しない。
最近、いくつかの地方自治体が、コロナワクチン接種後の死亡に関するデータの開示を始めた。開示されたデータには、年齢、ワクチンの接種回数、ロット番号、接種日、さらに死亡した場合には死亡日が含まれているので、ワクチンの死亡予防効果の検討が可能である。
本項では、静岡県浜松市、愛知県春日井市、豊川市の開示されたデータを用いて、コロナワクチンの死亡予防効果を検討した。2024年における浜松市、春日井市、豊川市の人口は、それぞれ、78万6,000人、30万7,000人、18万6,000人である。
図1は、浜松市、春日井市、豊川市の80歳以上高齢者における接種回数別の死亡数の推移を示す。もちろん、この死亡数には、偶発的なものがその多くを占めている。高齢者における接種率が90%に達した2021年の秋以降は、死亡者に未接種者が占める割合は10~15%と一定であった。また、ワクチン接種後の死亡は、接種開始直後のみでなく、その後も長期にわたって観察されることも、3都市間で共通であった。
図1 80歳以上の高齢者におけるコロナワクチン接種回数別の死亡数の推移
藤川賢治氏データ解析
図2には、3都市におけるコロナワクチン接種回数と10万人年あたりの死亡数(全死因)を示す。各回の接種開始直後には、未接種者の死亡数が、接種者の死亡数を超えることもあたったが、その後、接種群の死亡数は未接種群の死亡数を凌駕した。すなわち、ワクチンを接種しても、浜松市、春日井市、豊川市において、死亡数が減ることは見られなかった。
図2 80歳以上の高齢者におけるワクチン接種回数と10万人年あたりの死亡数
藤川賢治氏データ解析
イギリスやイタリアと同様に、わが国の3都市におけるリアルワールドデータの検討でも、ワクチンの死亡予防効果は確認できなかった。
わが国は、コロナワクチンに重症化予防効果があるとして、すなわち、ワクチンを接種することで死亡を減らすことができるとして、いまだに、ワクチン接種を推奨している世界でも数少ない国である。わが国におけるリアルワールドデータに基づく新しい知見が出てきた現在、このままワクチン接種の推進を進めるべきか否かの議論をする時期ではないだろうか。