フランシスコ教皇の入院は長引きそうだ

世界に約14億人の信者を有する最大のキリスト教派、ローマ・カトリック教会の最高指導者、フランシスコ教皇は14日以来、ローマのジェメッリ総合病院に入院中だ。88歳のフランシスコ教皇の病状は、入院当初は気管支炎といわれたが、その後、両肺に炎症が広がっていることが分かった。22日夜は、教皇の容体が悪化し、一時期、持続性喘息性呼吸危機の症状となり、酸素呼吸が行われ、血液検査で血小板減少症と診断され、輸血が必要となった。その後容体は少し改善、呼吸困難は治まった。軽度の腎不全は心配はないという。バチカンが26日午前発表したところによると、「フランシスコ教皇は静かな夜を過ごしたが、健康状況はまだ重篤に分類される」という。教皇の入院は長引きそうだ。

フランシスコ教皇インスタグラムより

フランシスコ教皇が入院するジェメッリ総合病院、バチカンニュース、2025年2月24日、写真ANSA通信

バチカンニュースによると、教皇は病室にピエトロ・パロリン国務長官とエドガー・ペーニャ・パラ大司教を迎え、25日に発表された列聖に関する法令に署名するなど、職務を行っている。
バチカンは信者らに、サンピエトロ広場で教皇のために毎日祈るよう呼び掛けている。フランシスコ教皇の出身、ブエノスアイレスでも教皇のための祈りが行われているという。

フランシスコ教皇は在職中の教皇としては2番目の高齢者だ。アルゼンチン出身のフランシスコ教皇(本名ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ)は1936年12月17日生まれで、今年12月に89歳を迎える(フランシスコ教皇より高齢教皇はレオ13世で1903年7月20日生まれ、93歳で亡くなった)。教皇は若い時、肺炎で右肺の一部を摘出したことがある。ローマ教皇に就任後も2021年7月には結腸の憩室狭窄の手術を受けた。最近は変形性膝関節症に悩まされている。膝の関節の軟骨の質が低下し、少しずつ擦り減り、歩行時に膝の痛みがある。最近は一般謁見でも車いすで対応してきた。

ベネディクト16世が生前退位した直後、フランシスコ教皇は頻繁に「職務が不能な状況になったら即退位する」と述べていたが、ここ2、3年は生前退位といったシナリオは教皇の口からは飛び出さなくなった。しかし、フランシスコ教皇の病状が伝えられると、「教皇は退位するのではないか」と、メディアで報じられだした。ただし、バチカン教皇庁のナンバー2、パロリン国務長官は「生前退位の話は聞いていない」と一蹴している。

フランシスコ教皇は就任以来、教会の刷新には積極的な発言を繰り返してきた。バチカンで昨年10月、教会の刷新、改革について話し合う世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会が開催された。教皇はシノドス開会前のサン・ピエトロ広場でのミサの中で、「私たちの集まりは議会ではなく、共同体だ。シノドスは多様性の中で調和を生み出すことが目的である。シノドスは、同じ信仰に満たされ、聖性への同じ願いに駆り立てられている兄弟姉妹たちのためであり、私たちは彼らと共に、また彼らのために、主が導こうとしている道を理解することに努めている。参加者は忍耐強く他者の意見に耳を傾けてほしい」と語り、シノドスを通じて教会の精神的刷新を期待している。

2025年は「聖年」だ。「聖年」の幕開けは、ローマ教皇が大聖堂にある「聖なる戸」(HolyDoor)を開ける象徴的な儀式から始まったばかりだ。これは、神への道が特別に開かれる象徴とされている。世界中から多くの巡礼者がローマを訪れる「聖年」は信者にとって、信仰を再確認し、心の刷新を行う絶好の機会といわれる。その「聖年」の始めにフランシスコ教皇が病に伏せたわけだ。

なお、バチカンウオッチャーの間では既に「Xデー」が囁かれ出した。具体的にはコンクラーベ(教皇選出会)の招集だ。教皇死去または退位後、ペテロの後継者、新たな教皇選出が大きな課題となる。コンクラーベには80歳未満の枢機卿が選挙権を有している。誰が選ばれるとしても、聖職者の未成年者への性的虐待問題や不正財政問題などで失った教会の信頼性を取り戻すことは容易ではない。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年2月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。