2016年、東京都足立区の病院で手術を受けた女性患者に対し、わいせつな行為をしたとして準強制わいせつ罪に問われた男性医師の差し戻し控訴審の判決が12日、東京高裁で言い渡されました。斉藤啓昭裁判長は、一審の東京地裁が無罪とした判決を支持し、検察側の控訴を棄却しました。
本件では、女性患者の証言が手術後に生じる意識障害である「術後せん妄」による幻覚であった可能性や、患者の胸から検出された医師のDNA型鑑定の信頼性が争点となりました。しかし、マスコミは報道において「術後わいせつ」という表現を繰り返し使用し、判決の趣旨とは異なる印象を与えています。
判決では、麻酔学や精神医学の知見を踏まえ、女性が麻酔から覚醒する際に術後せん妄を発症し、幻覚を見た可能性を否定できないと判断しました。また、DNA型鑑定についても、結果には一定の誤差が生じる可能性があると指摘し、DNAが多量に検出されたとしても、わいせつ行為を証明するには不十分であると結論づけました。しかし、この告発が術後せん妄によるものであった可能性があるにもかかわらず、医師は長年にわたり苦しめられ、さらにご子息が自ら命を絶つという悲劇も生じています。
2019年の一審・東京地裁は、女性が幻覚を体験した可能性を指摘し、DNAの付着も会話や触診によるものと判断して無罪を言い渡しました。しかし、2020年の二審・東京高裁はDNAの量を根拠に懲役2年の有罪判決を下しました。最高裁はこの判決を破棄し、高裁に差し戻した結果、最終的に無罪が確定しました。それにもかかわらず、「術後わいせつ」という見出しは誤解を招く可能性があります。
検察が有罪を立証できなかったことは明らかであり、審理の差し戻しではなく、無罪判決を確定させるべきだったと考えられます。
この報道姿勢に対しては、すでに「クソ見出しオブザイヤー2025」のグランプリではないかとの声も上がっています。
無罪判決を受けた男性医師は、判決後の会見で「長かった」「生活と仕事を奪われ、警察と検察に強い憤りを感じる」と述べています。
東京高等裁判所HPより