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皆さんは来月、万博がはじまることをご存じでしょうか。
バカなことを聞くようだが、最近大阪に行き、当たり前とはいえ、やはりあまりの温度差に驚いた。大阪ではテレビをはじめいろんなところで万博を盛り上げているのである。しかもゴールデンタイムでも。
ところが私の住んでいる静岡では、万博のことを取り上げている全国ネットのメディアはあまり見かけない。万博は大阪だけのものではないのに、大阪だけのイベントのようである。
本来なら今頃は全国ネットで、切符の買い方や場内での楽しみ方その他万博の満喫のしかたを各メディアが競ってやっているべき時期ではないだろうか(少し遅い気もするが、ディズニーランドの楽しみ方の番組があるのだから、それよりもすごいはずである万博の特番が、1ヶ月前の今、ガンガンあってもおかしくはないはずでしょう)。
大阪との違いにあまりにも驚いたので、もはや遅きに失しているかもしれないが、それでも一筆書かせていただくことにした。数ヶ月前、開催半年前のタイミングになっても万博を応援しないことの愚について書いたが、あえて、前回とほとんど同じことを書かざるを得なかったことは、ご容赦ください。
私は数ヶ月前の投稿に
「夢洲・舞洲などの大阪の埋め立て地を活用するという名目で、維新の会がカジノを呼ぶために万博を誘致したと思っている。万博による地域活性化という聞こえのいいイベントを誘致し、その跡地はもったいないのでカジノしかないね、という、そういう目的の万博開催だと考えている。成功裏に終われば大きな経済効果があるので、それも期待しての開催ということは認めるにしても、カジノが透けて見えるだけにいい気がしない」
と書いたが、その反面、開催が半年にせまった当時ですら万博を応援しないのは国益の毀損であると書いた。でも、上記のとおりマスコミなどによる国益の棄損はまだ続いているようである。
とはいえ、以前の投稿時に比べれば最近は、関西以外でも人の集まるところなどでポスター等の啓発告知を見かけるようになってきたし、全国ネットのマスコミでも万博に触れる番組は多少増え、まともに応援している番組も出てはきたが、まだまだ万博を茶化すようなものも多いような気がする。静岡でも全国ネットの番組は流れるので、これは私の在地の静岡だけの現象ではないだろう。
少し話は変わるが、先日、ある人と話をしたところ、「あんな税金の無駄遣いはやめるべきだ」「私は絶対に行かない」ということであった。
開催まであと1ヶ月に迫った中で、税金の無駄遣いだからやめよう、といまだにいっている人がいるのには驚いたが、マスコミを見ればさもありなんである。もっと早くならやめられたかもしれないが、すでに辞めるべきタイミングはとっくに過ぎているのに、なぜ気づかないのだろう。
いまさら開催中止となれば後始末にどれだけ税金や民間負担がかかると思っているのだろうか。しかも、世界からの日本の評価ダウンは金額換算などとてもできないのである。
万博に使う金があればもっと他に使えればよかったかもしれないという点では、「維新はなんということをしてくれたのか」と思ったとしても、今やめるとどうなるのだろうか。これまで使った金は返ってくるわけではない(いわゆる埋没費用である)ので、さらに支出が増えたにせよ投資額より少しでも大きい金額が回収できるようにするしかないのである。
「投資額より少しでも大きい金額」と書いたが、3兆円と言われる経済効果を考えれば、直接的な大阪府民の負担・国の負担がこれからさらにいくら増えようと、少なくとも成功すれば日本国全体ではプラスになるのである。
でも、万博に否定的な人の多くは、こういうことを理解して反対しているわけではないように思う。たぶん、あり得ない開催中止をいうことで、国の威信に関わることを政争の道具にして万博を不成功に終わらせ、「だから維新はダメだ」と言いたいか、「税金の無駄遣いなんてするから、いい気味だ」とい言いたいか、というところで思考がとまっているのかもしれない。
ただ、どうもこれらの方々のお考えは、その方々の信念というより、維新以外の各政党が万博を無視するか否定し、マスコミも批判的にしか取り上げなかったことに影響された結果のように感じる。オリンピックのときの開催前と開催後のマスコミの態度の変わりようやその前後の批判的であった何割かの国民の気持ちの変化を見ればわかるように、開催1ヶ月前の時点でここまで万博の報道が少ない状況をみれば、うなずく方も多いに違いない。
繰返しいうが、ちゃんと考えたら、あるタイミングを過ぎたら、反対していた人たちもマスコミも態度を切り替えるべきである。ここまで来たら、国をあげて成功させないことにはどうしようもないのに・・・もう中止は間に合わず、使ってしまった埋没費用は消せるわけではないのである。
「国益」という左翼の嫌いな書き方をしているが、万博を政争の具にし、しかもマスコミその他の反対で中途半端に実施せざるを得なくなるようになってしまったオリンピックのようなことはすべきではない。当時、オリンピックを否定する野党やメディアが開会前にやったことにより、費用効果だけでなく向上すべき国益をいかに毀損してしまったか、国民の一体感をだいなしにしてしまったか、そんなことは、今回の万博で繰り返さないでほしい。
今の状態で、万博を大阪(関西?)だけのものとして実施して、経済効果だけでなく国益を毀損し、地域を分断することの何の意味があるのか。
万博開催にまだまだ不安な点があるのは承知している。しかし、本来ならばもっと前に、マスコミが今までのような否定的な報道ではなく、万博を成功させるために肯定的なやりかたで、つまり、近畿以外から見た、万博本体だけでなく関西全般の利便性や各種の改善点をテーマに応援番組を組んだりすることで、円滑実施に向けて前向きに改善することもでき、激増するインバウンドと万博を共存するようなアイデアをもっとだせたはずだが、今となってはどうしょうもない。
今となっては、とはいったが、それでも、やはり言いたい。これまで万博に反対していた維新以外の野党も「万博開催は間違っていたが、中止できないこの時点まで来たら、これ以上国益を損なわないよう、今までの消極的な姿勢を変え、国益を最大にすることに徹底的に貢献することを宣言します」とならないのだろうか(なんなら「維新の失敗は終了後に徹底追及します」くらいは表明したらいい)。
マスコミは儲かればいい(視聴率を取れればいい)ので、関西以外の局は、オリンピックのようにギリギリまで無視して、今は他の報道で視聴率を稼ぎ、万博が始まってから手のひらを返すつもりだろう。
現時点の消極的な報道のレベルは「開催前から我が局は応援してました」というマスコミのアリバイ作りのような気がする。マスコミがここまでするのが「維新憎し」という理由ならとんでもない話だが、視聴率の話だけなら、 (本来、自然発生的な報道であるべきであるが)ここまでくればマスコミ得意の世論誘導という手を使えば、最初は興味がない人が多くとも、日本国の一大イベントとして各局が盛り上げることで話題になり、視聴率もとれるはずである。
そうでなくとも、維新以外の野党の方針変換が追い風になれば、マスコミの論調も変わるだろう。国益と報道姿勢は両立するはずである。
野党もマスコミも、こういった、政局や思想、視聴率優先から、「国益重視」にそろそろ切り替えられないのかなぁ。
※ 静岡以外ではどうなっているのかわかりませんが、フジテレビもどうせ差し替えるならACでなくて万博応援CMでもガンガンすればいいのに・・・関西のTV局には使えるCMネタはあるはずだし、スポンサーなどの関係があっても、それくらいフジが頑張れば何とかなると思うけど・・・(フジにとっては挽回のチャンスですよ!)。
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田中 奏歌
某企業にて、数年間の海外駐在や医薬関係業界団体副事務局長としての出向を含め、経理・総務関係を中心に勤務。出身企業退職後は関係会社のガバナンスアドバイザーを経て、現在は隠居生活。