
monzenmachi/iStock
私は、地方創生が日本経済の再生を行う上での鍵になると言ってきた。具体的には日本らしさを再認識する『ネオ・ジャポニズム』と、各地の特性を活かしAIを活用した取り組みが大切だとも言ってきた。
別に私は石破茂政権を支持してない。むしろ徹底批判してる。SNSでも石破茂をこき下ろしてきたし、前回の自民党総裁選直後からnoteの拙稿でも徹底的に石破茂批判を行なってきた。政治のリーダーとしての石破茂は、即刻、総理総裁をやめるべきだとの考えは変わらない。
ただ、『地方創生2.0』だけは、日本社会と日本国民にある閉塞感を打開する、一つの有効な手段になると考えている。
今回は更に踏み込んで、何故、地方創生が鍵になるか?を考察しよう。
アベノミクス再考
今、日本社会の危機的状況の一つの要素が少子高齢化というのは、誰しもが感じるところ。ところが、少子高齢化は今に始まった考え方じゃなくて、1970年代には既に危機感を以って語る人は数多くいた。
しかし、その時はバブル全盛で、特に現役世代は誰もそんなこと気にも留めなかった。何せ、六本木で一万円札を振ってタクシーを止めてた時代だ。世の中は、この英華がこれからも続くと考えてた。企業も政治家も庶民も・・・。
現実は日本国民の想像の遥か先を進み、1980年代の終わり、「あ、バブルが崩壊する・・・」と感じる間もなく、日本経済は一つの終わりを迎えた。
バブル崩壊
日本経済の好調は、不動産への過度な投資と、銀行による過剰な融資がその原因とされているけど、実はそればかりでもない。
企業は過剰な不動産投資と日本の高度成長に対する楽観主義が招いたと、近代経済学者は分析する。つまり、いつまでも日本経済は成長し続けるのだから、儲けられる時に儲けておけという心理が、企業にも労働者にも金融機関にも政府にも働いた。
その発端となったのが、過度な不動産投資に警戒感を抱いた日銀による金利政策だった。プラザ合意以後、日本は円高に陥っていたが、不動産と株式への投資は加熱するばかり。このままだと円高なのにインフレを起こす危機感(スタグフレーション)から、日銀は金融引き締めを目的に政策金利を上げた途端、一気に、国内に流通する資金(流動性)が止まってしまった。
その結果、株価と不動産価格が下落し、金融機関は大量の不良債権を抱えることになり、需要が落ち込んでしまったことにより企業収益も一気に低下した。
これがバブル崩壊で、その後、消費税増税もその一因となり、日本社会はデフレ不況に陥ったが、日本経済は悪夢の30年間に突入することになる。
【参考】
非合理な熱狂(Irrational Exuberance)
Robert Shiller:
During Japan’s bubble era, the Nikkei 225 peaked at 38,915 yen in 1989, and real estate prices soared. Shiller attributes this to a “feedback loop,” where rising prices fueled further expectations of gains, drawing in more investors. In his writings, he connects the subsequent crash—marked by sharp declines in stock and land prices—and the prolonged economic stagnation (the “Lost Decades”) to a sudden cooling of investor sentiment.
流動性の罠(Liquidity Trap)
Paul Krugman:
After the bubble burst, the Bank of Japan (BOJ) adopted a zero-interest-rate policy in 1999, but businesses and households did not increase borrowing, and investment and consumption remained stagnant. Krugman labels this a “Liquidity Trap,” where expectations of future deflation lead economic agents to hoard cash, trapping the economy in a vicious cycle of stagnation. He sees Japan as a modern demonstration of Keynesian “insufficient effective demand.”
バランスシート不況(Balance Sheet Recession)
Ben Bernanke:
After the bubble burst, Japanese firms and financial institutions were burdened with excessive debt (non-performing loans), leading to deteriorated balance sheets. This triggered a “balance sheet adjustment,” where firms prioritized debt repayment over borrowing or investment, further shrinking demand and prolonging deflation. Bernanke highlights the 1990s banking crises (e.g., Hokkaido Takushoku Bank, Yamaichi Securities) and the government’s slow response as aggravating factors.
スタグフレーション(Stagflation)
・Stagnant economic growth (low or negative GDP growth).
・High unemployment rates (deteriorating job market).
・Persistent price increases (high inflation rate).
何故、アベノミクスだったのか?
バブル崩壊した後、安価な人件費と原材料を求め、日本の製造業は中国に進出することになる。この当時は、チャイナリスクという概念は存在せず、世界一の高効率、高品質な製造技術を有した日本企業は、中国の甘い言葉に乗せられ、また企業の収益確保の為、円高デフレに喘ぐ日本から脱出せざるを得なかった。お陰で、中国サマは日本の高い技術を盗み放題となり、世界の工場として金儲けに勤しむことができた。
これは誰も責められない。責めを負うとすれば、デフレ不況への対策が遅れた政府だろう。しかし、これも、東日本大震災という有事が足踏みをさせたと言えなくもない。
何故、旧民主党が悪夢の民主党時代と言われるかと言うと、東日本大震災復興を足がかりに、日本経済の立て直しそのものに着手する大きなチャンスだったのに、みすみすその機会を逸したことだ。あまつさえ、消費税の更なる引き上げという愚策を行なった。
デフレ期待とゼロ金利政策でも設備投資に及び腰な企業により、日本はデフレ不況から抜け出せない。
フィードバックループ(価格上昇期待によるバブルと下落期待による停滞)現象が起きている日本経済の閉塞感を打破する策として、政府の財政出動とインフレ期待を呼び込む方策として選択されたのが、世界の誰も思っても出来なかった大規模金融緩和だ。
大規模金融緩和(マネタリーベースの増加)によって、政府と日銀としては、市中により多くのお金が流れること(マネーサプライの増加)を目的にしていた。しかし現実は、貸出リスクを勘案した金融機関の腰が引けた状態になっていて、マイナス金利であっても金融機関は日銀当座預金にお金を預けっぱなし。その額が2023年時点で500兆円にまで膨らんだ。
アベノミクス以後、有効求人倍率と株価は上昇し、円安傾向になったとは言え、大規模金融緩和の影響が市場に出るには、決定的に欠けていたものがある。
それがアベノミクス第三の矢である構造改革だ。
金融市場を動かすことには効いたけど、実体経済に影響を与えるまでは行ってない。そして道半ばで安倍晋三元総理は病に負け暗殺されてしまった。
その後、アベノミクスは失敗だったとする論調が、一部で囁かれることになる。
では、本当にアベノミクスは終わったのか?
次の拙稿で、その点について踏み込んでいきたい。
【参考】
フィードバックループ(feedback loop)
Robert Shiller:
In Irrational Exuberance, Shiller uses behavioral economics to frame Japan’s experience as a “feedback loop”—rising price expectations fueled the bubble, and falling expectations deepened the stagnation. His CAPE ratio analysis highlights the bubble’s overheating and subsequent overcorrection.
インフレ期待を高める大胆な金融政策(quantitative easing, inflation targeting)
Paul Krugman:
Applying his “Liquidity Trap” theory, Krugman advocates bold monetary policies (quantitative easing, inflation targeting) to boost inflation expectations. In The Return of Depression Economics (1999), he frames Japan as a lesson for modern crises.
金融加速器理論(beyond zero rates)
Ben Bernanke:
His “Balance Sheet Recession” theory, rooted in the Financial Accelerator, explains how asset price declines trigger credit contraction, harming the real economy. He suggests early quantitative easing and inflation targeting.
債務最小化(debt minimization)
Richard Koo:
His “Balance Sheet Recession” theory highlights a shift to “debt minimization” by the private sector. Like Krugman, he notes zero rates’ ineffectiveness but stresses fiscal policy’s primacy.