日本衰退の原因は中学高校での社会科教育の軽視じゃないか

ぼくはこの30年の日本の衰退の原因は中学と高校での社会科教育を軽視した結果の愚民化だと思っています。特に社会に対する関心や理解の低さだと思います。昭和の時代であれば行革ブームなどもあり、財政赤字がGDPの2.6倍になっても更にバラマキを要求して財務省が悪いとデモを起こす。これが世間知らずの学生ならまだしも、いい年した大人がです。

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今の子どもの教育は知りませんが、ぼくらの時代から社会科は軽視されていました。その連中が社会の指導層と、中核を占めています。

高校時代、世界史、日本史、地理、公民などの社会科目がありましたが、進学校で問題となるのは英語、数学、国語の3教科でした。「いい大学」に入るためには社会科は勉強する必要がなかった。
しかも大学入試で5科目の場合選択される社会科はたいてい歴史です。ですから社会の仕組みを教える公民には皆力を入れませんでした。

そして歴史は昔の方から教えていって、時間が無くなって近世から現代についてはあまり教えませんでした。つまり我々の生活に関係が深い近代から現代史を軽視してきた。

本来自分たちの生活に直結する公民は最重視すべきだし、それを勉強するインセンティブも必要でした。また歴史にしても自分たちに関わってくる問題はたいてい近代以降です。

多くの学生は近代以降の歴史について無知です。

ですから「社会性のない大人」が大量生産されて、多数派になりました。いわゆるインテリ層でもまともな社会的素養がない人が多い。これでは政治にも選挙にも興味がなくなるのは当然だし、事実上の官製脱税で、自分たちを苦しめるふるさと納税を大歓迎します。

単に公民を入試で重用するのではなく、自分たちの生活に直接関わる「実学」として教えるべきです。ある意味「家庭科」や「保健」と同じような位置づけにするべき教科です。

また勉強しないと入試に不利益になるようなシステムも作って勉強せざるを得ない状態に持って行くべきです。併せて社会かも近代以後に主軸をおいて、まずは近代から現代を教えて、その後古代からを教えるように変えていくべきです。

社会科教育のキモは衆愚政治に騙されない有権者、納税者の育成にこそあるのではないでしょうか。

それから「経済学の専門家」が「経済の専門家」を僭称するのは止めてほしいものです。現実に世界相手に商売している人間に向かって「お前は経済学を知らない」と学歴をひけらかしてマウント取るのは醜悪だし、社会の迷惑です。

じゃあ、なんでその「経済の専門家」たちがリーマン・ショックやアベノミクスの失敗を予見できなかったのか?金融工学でリスクは完全にヘッジできる、ノーベル賞学者もそういって起きたのがリーマン・ショックやサブプライム問題でした。

ぼくはアベノミクスは失敗すると安倍首相就任前からしてきしていましたが、東京大学名誉教授、イェール大学名誉教授、Econometric Society終身フェロー、元内閣官房参与、理論・計量経済学会(現日本経済学会)会長、法と経済学会初代会長、Econometric Society理事、世界貿易機関事務局長助言グループのメンバーを歴任した浜田宏一名誉教授や、政策研究大学院大学学長、内閣府大臣官房審議官、内閣府政策統括官、経済財政担当大臣、内閣府規制改革推進会議議長、鹿児島県立鶴丸高等学校生徒会長、フランス・社会科学高等研究院日本語客員教授、株式会社みずほフィナンシャルグループ取締役会議長などを歴任した大田弘子教授らはなぜアベノミクスのようなクズ政策が成功すると支持、吹聴してきたのか。それでも浜田教授は不明を認めましたが、大田教授は未だに公式に謝罪しておりません。

彼らは先の戦争でいえばA級戦犯です。

例えれば経済学とうのは理論物理学みたいなものです。それが実体経済を語り、政策を策定するのは理論物理学の学者が、全く工学を知らずに、原子炉を開発して稼働させるようなものです。

それがわからない程度の知性しか持ち合わせていない生き物です。所詮経済学はカルトです。現在の「経済学」はアメリカで作られたものであり、それを唯一無二であるかのように世間を洗脳してきた。

そして経済学は実体経済で検証不可能で、理論か過去の分析しかできない。で、ノーベル賞を取ったとか、声のでデカイやつが自分の論理を「この世の理」であるかの用に吹聴する。カルト宗教と同じです。

こういう自称「専門家」を重用してきた日本経済新聞を筆頭としたメディアの責任も大変大きいです。

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編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2025年3月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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