パレスチナ自治区ガザで25日、数百人の住民がイスラエルに対する戦争の終結を求めて自発的にデモを行い、その際、同地区を支配するイスラム過激派テロ組織「ハマス」に対するシュプレヒコールも聞かれた。目撃者の報告によると、ガザ地区北部のベイト・ラヒアで行われた抗議集会では、主に男性のデモ参加者が「ハマス出て行け」「ハマスはテロリスト」と叫んだ。また、近くのジャバリヤや封鎖された沿岸地域南部のカーンユニスでも同様の抗議活動があった。ガザ地区ではこのようなデモは珍しい。ハマスは内部の敵対者を取り締まることでよく知られているからだ。

荒廃したパレスチナ自治区ガザ、UNRWA公式サイトから
このニュースを読んで、イスラエルへの憎悪は変わらないが、パレスチナ人の中にハマスへの怒りが生まれてきているのではないかと思った。パレスチナ自治区に住む住民の間に「ハマスはテロリストだ」と叫ぶ者が出てきたことは新しい動きだ。パレスチナ人住民がガザでハマスを公の場で批判すれば身の危険もあることを考えると、「ハマスはガザから出ていけ」と叫んだ住民は命がけだったはずだ。
独民間放送ニュース専門局NTVは25日、「ガザでハマスへの抗議デモ」という見出しで報じているが、それによると「少なくとも1件の抗議の呼びかけがオンラインサービスのテレグラム上で広まった。あるデモ参加者は、誰がデモを組織したのか分からないという。また別の参加者の一人は『私は国民を代表して戦争を終わらせるというメッセージを送るために参加した』と述べている。報復を恐れて匿名で答えた男性は、私服を着たハマスの治安部隊が抗議活動を解散させているのを見たと語った」という。ハマスが抗議デモを解散させようと腐心していたことが伺える。
「ハマス」は2023年10月7日、イスラエル領に侵入し、1210人以上のイスラエルを殺害し、250人余りを人質にした。それに激怒したイスラエル側は「ハマス壊滅」を掲げてこれまで戦闘を繰り返してきた。ハマスの奇襲テロがなければ、イスラエルとの戦闘はなかったということが、パレスチナ自治区の住民の間にも広まってきているわけだ。抗議デモ参加者は「私たちは疲れている」と呟いたという。イスラエルとの戦闘が長期化するのにつれ、パレスチナ人住民の間にハマスへの不信が深まってきているのだろう。
イスラエルと「ハマス」の間で1月19日、停戦が合意されたが、ここにきて再び戦闘が始まった。イスラエル側がハマスが停戦の合意を違反したとして、ガザ地区のハマス拠点への大規模な空爆を再開した。現地からの外電によると、イスラエル軍は今月19日、パレスチナ自治区で新たな地上作戦を開始したという。
ハマスは武器を放棄し、生き残った人質を解放することを拒否しているという。一人のデモ参観者は「ハマスにとって解決策が権力放棄につながるとしても、住民を守るためならなぜ権力を放棄しないのか」と語っている。
米国のウィトコフ中東担当特使によると、ハマスが実現不可能な要求を突き付けるなど、停戦延長交渉は難航している。ハマスの出方は分からないだけに、ラマダン明けのパレスチナ情勢は不透明だ。
なお、「ハマス」側の発表によれば、これまでに50,000人以上が死亡したという。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年3月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。