黒坂岳央です。
40代、人生の折り返し地点である。筆者も現在進行系でこの年代なわけだが、仕事や人生をさらに発展させていく上で持っていると損をするので早めに手放すべきものがあると思っている。
「40代がより良い人生を築くために、筆者が経験をもとに考えたポイントを紹介したい。

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ズレた承認欲求
人間は生まれつき、誰しも他者と比較する生き物だ。これは承認欲求の一種で人間が社会的動物という本能と言っていいだろう。
子供と会話する中で、上の子を褒めると、「自分の方がすごいよ!」と対抗するように自己PRを始めるし、逆も然り。誰しも大小差こそあれ、生まれつき自分を認めてもらいたい気持ちを持っている。もちろん筆者もそうだ。
だが、40代以降、過度に承認欲求を周囲に求めるのは、周囲から幼く見えるリスクがあるかもしれない。例えば、全身ブランドづくめやお金持ち、学歴・経歴の自慢に頼る人も見かける。
30代前半までならわからなくもないが、さすがに40代を超えてもそういうPRをやめられないと「この人はそんなことを自慢できるネタと考える人物なのだな」と周囲から理解されにくい場合もある。
40代以降の上手な承認欲求を消化する手段は「社会貢献」である。いい仕事をして顧客から感謝の言葉が返ってくる、これが最高に健全で望ましい形である。
「ありがとう!」といろんな人から言われるような、感謝される仕事ができれば、過度な自己アピールをしなくても自然に自己肯定感が満たされるものだ。それこそが中年期以降の落ち着きの正体だと思うのだ。
他者比較
若い頃、誰しも「あの人はいいなあ。それに引き換え自分は…」と誰かと自分を比較して落ち込むことが少なくない。筆者も若い頃は能力が高い人を見て自信を失うことがよくあった。
だが、さすがに40代となると無用な他者比較からは卒業するべきだ。40代ともなると見えてくるのが「他者比較が本質的に難しく、場合によっては無意味だと気づくことが多いからだ。
たとえば年収の多寡、住んでいる場所、勤務先の規模や知名度、結婚の有無や子供の数、そうした変数で他者比較をして劣等感を感じているのは厳しい言葉で言うと「青さを感じさせる感情」でしかない。
その理由はシンプルで、他人のいい部分を偏重的に情報収集をして曲解して解釈をしているためだ。たとえば筆者は労働時間が減少することを受け入れて、子育てを受け入れている。
もしも人生にABテストができるなら、きっと子供を持たず仕事にフルインベストメントしている人生の方が、収入も資産も今よりもっと多いことは明らかである。
だが、それはもう個人の価値観による選択だ。自らの意志で人生の意思決定をしているのだから、自分より収入や資産が多い人をうらやむことはしないし、そうでない人を下に見ることもない。
自分は自分の人生の幸福度を最大化させるための戦略を選び続けるだけであり、他人は他人の価値観で違った戦略を取るはずだ。
そう考えると、他者と自分を比較すること自体がナンセンスで、時間のムダでしかないと分かる。比較できると思っているのは、本来は水平比較不可能な変数同士で優劣を論じることが可能だと考えており、視野狭窄と言わざるを得ない。40代となればそのあたりの柔軟性は求められるだろう。
無駄なプライド
若い頃は「なんでも教えて下さい」と素直に相手に教えを請い、相手も若い人なら親切に対応してくれる。だが、40代以降は過去の実績や経験がある分、それが無用なプライドにつながりやすい。
筆者がサラリーマンの頃、アメリカ由来のITシステム導入の部署にいて子会社の社員を集めて「システムが変更になります」と周知したところ、大変な反発を受けた。
「現場の俺達の苦労も知らないくせに上で勝手に決めるな」という怒りの声や「自分たちはこれまでこのシステムでうまくやってきたから新システムなど要らない」といった意見が多かった。
だが、冷静に現場から上がってきた意見を分析しても、特に決定的なデメリットにつながるものはなかったので、社として導入を決定することになる。
その後、会社の意思決定に反発して退職した社員が数名出たが、結局は一年もすると誰も文句を言わず平常運転となった。新システム導入で生産性も高まり、皮肉なことに退職者が出た分も自然に穴埋めとなり、残業時間も減った。これにより、システム導入の成功を証明する形となった。
このケースからもわかるように、無駄なプライドは変化を受け入れるチャンスを失わせ、結果として個人や組織の成長を阻害する。
人はそれまで自分がやってきた経験や実績を、いきなり白紙にされることに反発心が芽生えるものだ。最近の話でいえばAIだろう。
しかし、過去に固執して変化を拒めば消えるのは自分自身であることは歴史が証明している。仕事はまずは結果を出すことが全てである。結果を出す上で無用なプライドはジャマでしかない。
◇
40代は人生の折り返し地点であり、ここでの考え方がその後の人生を大きく左右する。
- ズレた承認欲求を手放し、社会貢献を通じた自己承認を得る
- 無意味な他者比較から卒業し、自分の幸福を追求する
- 無駄なプライドを捨て、新しい変化を柔軟に受け入れる
この3つを意識することで、より充実した40代を送ることができるはずだ。
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