黒坂岳央です。
長い間、生きてきて、ようやくわかったことがある。
人生で幸せになりたければ、「戦いに勝つ」か「戦いから降りる」か──このどちらかしかないということに。
これは極論に聞こえるかもしれないが、逆を考えればすぐにわかる。「負け続ける」か、「望まない戦いに無理やり駆り出される」──これが続く限り、人は確実に不幸になる。その意味で、やはりこの仮説は遠からず真実だと思っている。
今回は、個人的な体験を交えながら、この考えを深掘りしてみたい。

Andreyuu/iStock
この世界は、競争社会である
まず前提として、我々は望むと望まざるとにかかわらず、競争社会に生まれ落ちた。受験、就職、昇進、恋愛、婚活、果てはSNSでの「いいね!」数──人生のあらゆる局面が競争に満ちている。
人生における「勝利」とは、自分の望みを明確に持ち、それを達成することだ。しかし、富や地位、愛情、リソースには限りがある。同じものを求める誰かと必ず競り合うことになり、そこに競争が生まれる。
こう書くと、なんだか恐ろしい世界に思えるかもしれない。だが、実際にはそう悪いものでもない。健全な競争はむしろ楽しいし、人生を豊かにする。
勝利を目指す過程で人は思考し、成長し、自信や達成感を得る。どうやれば目的を達成できるか?という戦略を立案する過程がすでにエンタメなのである。
記事や動画を出してあまり反響がない日々が続く中、試行錯誤しながら改善を繰り返した結果、反響が大きく取れた時はものすごく爽快な気分になる。反響が取れた実績も残るし、試行錯誤してレベルアップした経験値も残る。この一連のプロセスは後続の人生も良いものにしてくれるのだ。
戦わないという選択肢
とはいえ、常に勝てるわけではない。だからこそ「戦いから降りる」という選択が必要だ。
「戦いから降りる」──それは敗北ではない。むしろ、自分が本当に戦うべきフィールドを見極める、勇気ある決断だ。
筆者は30代半ばでサラリーマンをやめた時から、完全に戦いから降りて生活をしている。サラリーマンの頃や、独立して駆け出しの時期は強すぎるライバルの存在に心折られることもあった。しかし、今はやめた。意識するべきは競合が何をやっているか?より、顧客ペイン(悩み)の方であると理解できたからだ。
今も仕事は続けている。日々、頭の中がいっぱいなことは、顧客のニーズを満たすことであり、ライバルの動向ではない。記事や動画は投稿するが、ライバルの作品は見ないし、そもそもまったく興味もない(別ジャンルの競合ではない記事や動画は参考にすることはよくあるが)。
筆者は「あの人(ライバル)と意見が違うようですが、そこはどうお考えですか?」と意見を求められることがあるのだが、「すいません、その人のことはよく知りません」と正直に答えている。これは嘘ではなく、本当に興味がなくてライバルのことをよく知らないのだ。
意識しているのは自分の過去作品と比べてより良いものになっているか?それから読者や視聴者のペインを解消する仕事ができているか?これだけである。
誰とも戦わない生き方でも今日まで十分満足に生きてこられたし、今後も寿命をまっとうするまではそれでいけると考えている。
望まぬ戦いに駆り出されることのない生活は楽しい。合わない人と無理に関わることもないし、ライバルの動向に気持ちがざわつくこともない。お客さんを満足させることだけを考えればいいので、常に前向きな思考で健全に仕事ができると思っている。
勝てない戦いは最大の不幸
逆に──「勝てないとわかっている戦い」に縛られ続ける人生は、地獄である。
絶対に良い結果が出せないと分かりきっていて、組織の足手まといのような存在であることを強く認識しながら毎日働くのだ。成果が出ない。存在意義も感じられない。劣等感と無力感に蝕まれ、毎日が灰色になる。
自分自身が昔、そのような立場だったのでよく分かるが、このような仕事に面白さは感じないだろう。仕事以外でもそうだ。ワクワクするはずの金曜日の夕方の時点で、すでに日曜日の夜を想像して気持ちが落ち込んでいたのだ。
この経験から、筆者は確信している。勝てない戦いにしがみつくぐらいなら、さっさと降りた方がいいと。
そして思考するのだ。自分はどんな仕事や活動なら、競争に勝てるのか?また人との競争から降りても生きていけるのか?人生はそれを探求する旅のようなものといっていいと思っている。
◇
結局、人生とは、「どこで戦い、どこで降りるか」この選択の連続なのだと思う。
大切なのは、誰かに勝つことでも、誰かに勝たせることでもない。「自分が心から納得できる生き方」を選ぶことだ。
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