黒坂岳央です。
企業の広告は時に人の心を打つものがある。Citi社の広告もそのひとつだ。
Why do we spend our youth chasing money and, when we find it, spend our money chasing youth?
(なぜ私たちは若い時代をお金を追いかけて過ごし、お金を得ると若さを追いかけてお金を使うのか?)
このシンプルな問いかけは、多くの人が見落としがちな「人生の逆説」を鋭く突いている。我々は常に「今ここにないもの」を欲しがる存在なのだ。

sdominick/iStock
若い頃はお金を求める
若い頃は誰しもお金を求める。自分も例外ではなく、むしろ人並み以上にお金がほしいと思っていた。
実家はずっとお金のことで揉めていた。氷河期世代、フリーターを長くやって遅れて大学を出たらちょうどリーマン・ショックの打撃で就職難。
氷河期世代として苦しい就職活動を経験し、ようやく社会に出た20代後半、自分の経済状況を人に話すのがどこか恥ずかしかった。ブランドロゴが大きく入ったバッグを買って見栄を張ったこともある。
実際の生活はそこまで苦しくもないのに、周囲から「お金がない」と思われることがカッコ悪いという間違った認識で自縄自縛になっていたのだ。
年を重ねると若さを求める
しかし、今は明らかに価値観が変わった。もちろんお金は大切だが、それ以上に家族との時間、健康、体力といった要素が遥かに優先されるようになった。
資産がある程度積み上がると、それは単なる「数字」に過ぎなくなる。極端な話、資産10億円が20億円になっても、日常生活の幸福度は何も変わらない。
承認欲求の奴隷になってお金の自慢なんてすれば、嫌われるか、もしくは自らを危険にするだけでしかない。年を取ってわざわざそんな愚かでバカげたことをやろうとは思わない。
そもそも、若い内に財産を築くことがすごいのである。ある程度年齢を重ねているなら、時間を味方に多少の経済的余裕があることは特段驚くことではないのだ。そんな人は探せば世の中にいくらでもいるわけで、周囲からも「羨ましい!」とは思われないだろう。
だが健康や体力は違う。確実に人生をポジティブにしてくれる。筆者は日々の食事や栄養管理を行い、筋トレやトレッドミル、エアロバイクと毎日1時間以上運動に時間を使っているが、運動不足気味だった20代と比べても今の方がよほど筋肉量も体力もある。
そのおかげで、仕事や勉強も捗るし、子供たちを連れての旅行も楽しめる。だが、生物学的にどれだけ努力してもここからは下り坂への一本道が待っている。それが分かるから「ああ、たとえ資産や収入が半分になっていいからできれば10年…いや5年でいいから若返りたい」と思ってしまうのだ。
人生は一生ないものねだり
思うに人生は一生ないものねだりが続く旅なのだと思う。
学生の頃は足が早い子に憧れ、勉強ができる子に憧れる。
社会人になるとハイキャリア、高収入に憧れる。
中年になると若さに憧れる。
結局、一生ないものねだりなのだ。そして若い頃にお金に焦がれている時はまだ夢がある。「今はまだ自分の本当に人生が始まっていない。まだまだこれから」と。しかし、中年になると、もはや若さは確実に、そして永遠に失われる。
30代後半から人は一生、若さを追求する人生がスタートする。だから若いうちに「若さこそが人生最大の資本」と気づけた人は、人生からより多くの価値を引き出せるだろう。
◇
結局、我々は「今ここにあるもの」の価値を過小評価してしまいがちだ。
若さも、健康も、時間も、失って初めてその重みを思い知る。だからこそ、伝えたい。「若さ」や「健康」をあって当たり前と考えず、「未来を作る最大の投資資産」ということを。
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