人生の分岐点では自分の気持ちに正直になった方が良い

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私は今でこそ、1人で気ままに自分の好きな仕事だけをやっていますが、1986年に社会人になってから2013年に独立するまではずっと会社員として平日はオフィスに勤務していました。これまでの40年近い社会人生活を振り返ってみると、2つの分岐点があったように思います。

1つは1999年5月にマネックス証券の創業に参加したことです。イギリス系の投資顧問会社でファンドマネージャーとして仕事をしている時に、大学時代のクラスメイトがネット証券を立ち上げるという話を聞き、オフィスに遊びに行っている間に転職を決意しました。

ベンチャーなので収入は転職前よりも減ってしまい、将来の安定も保証されていません。条件面だけを考えれば躊躇するところです。でも、チャレンジしないで後から後悔したくないという「やらない後悔」を恐れて、思い切って社員4人・売上ゼロの出来立ての会社に飛び込みました。

もう1つの分岐点は、マネックスグループの後に勤務したスイス系のプライベートバンクを辞めて、2012年末に資産デザイン研究所を設立したことです。

27年間も続けてきた会社員生活を48歳で終わらせてゼロから会社を自分で立ち上げるのは、ベンチャーに転職する以上の勇気が必要でした。

しかし、この時は今まで仕事をしてきた金融機関が個人投資家に提供できる価値について疑問を持つことが多くなっていました。自分が納得できる付加価値を顧客に対して提供する仕事ができる会社が見つかりませんでした。だったら自分でやってみようと思ったのです。

やらない後悔ではなく、金融機関の仕事を自分の気持ちに反して無理に続けることで、後から「やって後悔」したくないという気持ちを優先したのです。

歴史に「もし」は無いと言いますが、「もしマネックスに転職しなければ」「もし資産デザイン研究所を設立しなければ」と考えることは時々あります。

もしかしたら、今日も朝から電車に乗って会社に出かけていたのかもしれないと思ったり、やりたくない仕事を好きでもない人たちと一緒にやっているのかもしれません。

お昼から好きな人と築地でお酒を飲みながらお寿司を食べることもきっとないでしょう。

そんな想像をすると、リスクを取って自分の気持ちに正直に行動したことに後悔はありません。

お金の自由や時間の自由だけではなく、誰と付き合うかも自分で決められる人間関係の自由を手に入れられたのは、たまたまラッキーだっただけかもしれません。

でも、私は人生の分岐点で自分の気持ちに正直にリスクにチャレンジしたことに対する神様からのご褒美だとポジティブの捉えるようにしています。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年5月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。