黒坂岳央です。
東京を離れ、地方移住をして8年が過ぎた。「地方移住は実際どうなのか?」という問いに、実体験をもとに答えたいと思う。結論から言えば、「想像以上に良かった」というのが筆者の実感だ。
地方移住というと、ネットやSNS上では失敗談や警告ばかりが目立つ。だが、実際に長年地方で暮らし、周囲の移住者の様子を見ていると、大半は満足しているように感じられる。
※本記事は「地方移住を経験した筆者の視点から見た田舎暮らしの良さ」を紹介するものであり、都会での生活や都市居住者を否定・揶揄する意図はない。都会、田舎それぞれの良さがあり、「自分にとって何が幸福か」を考える一助となれば幸いである。

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激しい競争がない
地方移住で感じる最大のメリットは、過度な競争からの解放である。都会では、「港区のタワマンに住む」「お受験で有名塾に通わせる」といった競争が絶えない。収入や社会的ステータスで常に比較される環境で常にup or outの空気が流れていた。これでは嫌でもくっきりと勝ち負けを見せつけられてしまうだろう。
一方、地方ではそうした競争は驚くほど少ない。そもそも、お受験もタワマンなどはここにないからだ。
地元のコミュニティでの話題は「お得なセール情報」や「庭で栽培した果物のシェア」など、身近でささやかなものだ。他者と比較する必要がほぼなく、穏やかな日常が広がっている。
地方に住んでいると他者と収入や資産の比較をしないことで、自己肯定感を削られなくて済むと考える。
足るを知る幸せ
都会で働いていた頃、上を見ればきりがない世界を目の当たりにした。
東京に住んでいる時は上を見れば再現がないと感じていた。サラリーマン時代は年収1000万円、2000万円を稼ぐ社員がいることに仰天していると、シンガポール人の役員が「不動産投資で目標資産額に到達したので、退職してFIREします」といい出してやめていった。
会社員の世界だけでも、このように上の世界がどこまでも広がっていった。これが経営者や投資家となれば、資産10億円以降でミドル級という感じになり、平均的な人からはブッ飛んだ世界に感じるだろう。
地方に来て気づいたことは、多くの人が自分たちの生活レベルに満足しているように思える。悪く言えば向上心がないとも言えるが、SNSでよく見るような「年収1000万円でも足りない!」みたいな話は聞かない。
もちろん、地方にも高収入の経営者はおり、中には年収1億円以上を稼ぎ出す人もいる。だが、地元では名のしれた人で「あそこはうちとは違うから」と彼らは比較の対象にしない。我々が大谷翔平選手や孫正義氏の収入や資産に嫉妬しないのと同じで、次元が違うと嫉妬も起きないのだ。
「だが今どき、SNSが普及しているので住んでいる場所は関係ないのでは?」と思うかもしれない。実際には大半の人はSNSを鍵アカでリアルでの連絡ツールとして活用している。
SNSに過剰にのめり込む人はビジネス目的、情報収集、もしくは孤独で承認欲求に飢えた人くらいなものでそれは全体の少数派に過ぎない。実際の生活が充実している人ほど、SNSの使用頻度は少なくリアルの人間関係を大切にしている印象がある。
親切な人達のコミュニティ
地方移住で予想外に良かった点は、人間関係の温かさだ。「田舎は排他的」と言われることもあり、ネット上では意地悪で都会人を冷遇するイメージが描かれる内容を見ていたので、筆者は移住前にこれが不安の種だった。
しかし実際には、積極的に地域の情報を教えてくれたり、困ったときに助け合える親切なコミュニティだった。
そして地方では、大きな成功や高い地位を追求するよりも、「子供と過ごす時間」「家族で楽しむ休日」といった身近な幸福を大切にする人が多い。
以前の筆者は、六本木や広尾のレストランを楽しみ、渋谷や東京ビッグサイトで開催されるイベントに行くなど、都会的な華やかさを追求する生活を好んでいた。昔から一匹狼で馴れ合いが大嫌い、どこへ行くのも一人行動だったのだ。
しかし、そんな自分がここに来て休日には子供を連れ、大型モールや公園で遊ぶパパになっていた。公園やモールでも先生や保護者とばったり会うことも多いが、笑顔で挨拶をし、その場で軽い雑談を楽しむように変わった。
父親になったから、というのもあるが田舎のほのぼのとしたのんびり雰囲気がそうさせた要素はゼロではないと思っている。地方のコミュニティに馴染むことで、「本当の豊かさとは身近なところにある」と思うのだ。
◇
ビジネスの視点から地方移住を考えると、リモートワークの普及によって移住のハードルは確実に下がった。筆者はこの1ヶ月の間で1件の地上波のテレビ番組の出演、2件の雑誌社の取材、1件のネットメディアから仕事を受けたが、田舎に住みながら東京にある企業との仕事を続けることが出来ている。
「東京の仕事で地方に住む」のが自分が見出した最適解である。
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