トランプ大統領、ウォルマートに「関税を理由に値上げするな」の本末転倒

アメリカのトランプ大統領は5月17日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、米最大の小売企業ウォルマートが商品の値上げを予定していることに対して強く批判しました。

ウォルマートは、中国などからの輸入品にかかる関税の影響でコストが上昇し、5月下旬から一部商品を値上げすると発表していました。

これに対してトランプ大統領は、「ウォルマートは昨年、多額の利益を上げたのだから、関税コストは企業が吸収すべきであり、消費者に転嫁してはならない」と主張しました。彼は「関税を理由に値上げするのはやめろ」「関税は企業と中国が“食え”」と強く訴え、企業としての責任を果たすよう求めました。

一方、ウォルマートのマクミロン最高経営責任者(CEO)やレイニー最高財務責任者(CFO)は、会見やインタビューで「関税によるコストの増加は大きく、小売業の利益率の低さを考えると、すべてを自社で吸収するのは不可能だ」と説明しました。同社は中国やベトナムから衣類や雑貨、電子機器などを大量に輸入しており、関税の影響を大きく受けています。

ウォルマートは、食品など生活必需品の価格はできる限り抑えるとしつつも、電子機器やおもちゃなどを中心に5月末から段階的に値上げを進め、6月にはさらに拡大する可能性があると見込んでいます。

slobo/iStock

また、ベッセント財務長官は、関税がウォルマートなどに与える影響や、米国の信用格下げについて「それほど深刻な懸念ではない」との認識を示しました。トランプ政権は、連邦支出の削減と経済成長の両立を目指す方針だとしています。

しかし、こうした関税政策に対しては法的な反発も出ています。トランプ氏が独自に関税を設定する権限があるのかをめぐり、行政訴訟が提起され、大統領の関税権限を問う裁判が行われています。ウォルマートなどの企業は、関税によって多大な損失を被るとして、差し止めを求める訴訟を起こす可能性が高いと見られています。

トランプ関税は本来の意図を大きく外れるようになってきており、今後の貿易政策や物価動向への影響が懸念されています。