トランプ大統領とハーバード大学問題

国内のニュースは小泉農水大臣のコメ政策の手腕にスポットライトが当たり、ワシントンに向かった赤沢氏の影が薄いのはメディアも国民も生活への影響第一主義ということなのでしょう。小泉氏は潜在的人気が高く、いつかまた首相を狙える方だと思います。そういう意味で今回の手腕は確かに注目なのですが、個人的にはどこかで滞留しているコメ流通が小泉人気で本格的に動き出すきっかけになり、コメ価格が一気に大幅に下がる気がしています。流通業者は守勢になるでしょう。私はあとで振り返れば「あれはコメバブルだった」になると思います。

では今週のつぶやきをお送りします。

ビットコインと金相場

私は今週、ビットコインの関連銘柄を追加購入しました。金採掘会社への投資も再度参入するか、検討中です。理由はアメリカへの投資マネーがじわじわ減退すると見たからです。もちろん、先日格付けを下げられたこともありますが、それは大したことではなく、むしろ下院を1票差で通過したトランプ減税があまりにも稚拙であり、レベルが低いことに幻滅したからです。上院での審議は数か月に及び、相当の修正も出るだろうとされています。法案が多少修正されても全体像がさほど変わらないとすれば基本的にアメリカの債務問題に大きく影響するでしょう。

トランプ氏がEUとの関税交渉で行き詰まっていることから「税率を50%にするぞ」とつぶやきました。もちろんこれは脅しでそれがそのまま恒常的税率になると関係者や専門家は誰一人信じていません。ただカナダも欧州と歩調を合わせる傾向があるのでトランプ氏は敵を作りすぎているとも言えます。となればトランプ氏は成果が期待できるところにすがるしかなく、日本との関税交渉は絶対に失敗できない局面に立たされたとも言えるのです。その点で日米関税交渉は日本にとってサプライズ的に良い結果が出るかもしれません。(そう思っていたら日鉄のディールにお墨付きが出たようです!)

ビットコインと金は双方とも国境のない資産です。それこそアメリカ人も日本人も欧州の人もロシア人や中国人、インド人も大好きなのです。そして資産価値の担保的裏付けに乏しく、まさに信用だけで相場が成り立ちます。以前申し上げたようにビットコインの相場なんて1万ドルでも20万ドルでも論理的説明などできず、信用創造でしかありません。ただし、ビットコインと金には採掘コストがあり、それら採掘者が市場に売り出すことで過熱相場の冷やし玉となります。市場価格が採掘コストを下回るのは信用相場を前提とすると考えにくいとも言えます。アメリカ資産の信用が低いなら国境なき代替資産への需要は当然生じると考えています。

ハーバード大学問題

トランプ氏の話題が連荘になってしまい、申し訳ないですが、このハーバード大学へのトランプ氏の締め付けは個人的に許されないと思います。それこそ違憲であり、大統領としての地位を利用した強権以外の何物でもないと思います。イスラエル問題は日を改めて書きますが、要は全米のハイランクの大学にリベラル思想が強く、イスラエルの行動を容認できないとする学生が多く、大学側もそれを放置したことに対して大学向け補助金カットや留学生の禁止で大学経営を行き詰まらせようとしているわけです。ハーバードは訴訟していますが、もちろん大学が倒れることはなく、世界から支援の輪も広がるでしょう。

ハーバード大学 Marcio Silva/iStock

この話を聞いて思い出すのが1973年の映画「追憶 (The way we were)」。映画館で2,3度見たと思いますが、いわゆるベトナム反戦運動が60年代にアメリカで学生を中心に展開された記憶もまだある中で公開されたこの映画はまさに名画の1つといえるでしょう。重たい内容の映画ですが、今のアメリカと重なるストーリーラインかもしれません。反戦派の彼女とWASPの彼の恋愛物語を時代背景と思想面から鋭く追及したものでポラック監督にストライサンドとレッドフォードが主演、音楽がハムリッシュで当時敵なしのキャスティングでした。

リベラルをどう評価するか難しいのですが、反論覚悟の上で申し上げればアカデミアとしての知的水準が高い人には民主的思想が強いと思います。企業家の知的水準のそれとは違います。一方、高卒など学歴が低い人は保守的ながらも組合を通じた民主的手段で問題解決を図ります。ただ常に金銭的不満を抱えているといえます。ですのでトランプ氏は彼らにとっては神様のような存在です。しかし、アメリカには金も政治力も資源も広大な国土でも何でもある中、もう一つ、世界最高峰の知能が集まることで今のアメリカの地位を作ったことをまさかトランプ氏が忘れているわけがありません。何を思ってハーバードを抑え込み、次はコロンビア大学に照準を合わせていじめをするのか器量の狭さに私は愕然とするものを感じるのです。

なぜ若者は東京に集まるのか?

石破首相が第一義に掲げる地方創生も掛け声倒れなのか、若者は都市部に集中、特に東京はブラックホールのように若者を引き付けています。何がそうさせるのでしょうか?ずばり夜の街でありエンターテイメントでありイベントの多さだと思うのです。ネットの時代で便利になり、買い物からネフリやYoutubeなどオンラインアクセスがあれば日本何処にいても楽しめるじゃないか、と思われるでしょう。それはおじさま、おばさまの発想です。そうじゃないのです。リアルの融合、これがやはり面白いのです。

かつてリアルの融合とは社内の飲み会だったかもしれません。今は自分の好きなところに行き、同じ趣味をシェアできる人たちと盛り上がる、古い言葉ですが、「オフ会」なのだと思います。そしてオンラインやSNSで感じないリアルの興奮やここだけしか知りえないマル秘話などがファンをそそるとも言えます。またオタクが集まりやすいこともあるでしょう。

飲み屋に行けばおひとり様は当たり前。ではその人たちは単にグルメとして、あるいは腹を満たすためにそこに来るとは限らず、「私はひとりではない」という空気を求めていると思うのです。スタバでスマホやタブレットをいじるのも同様でお互いが話すことはないけれど似たような空気をシェアしているのです。名古屋の喫茶店に週末の朝、習慣のように行くことも同じ空気を分かち合うのだと思います。地方都市では無数ある同じ趣味や興味の人、同じ価値観の人が集まるのは難しいのです。店は夜9時半に閉まり、2軒目はなく、同じ趣味の人も見つけにくければ若者は自然と大都会を目指すのです。刺激を求める野性味でもあり、感性的なことだと思います。政策で決めつけるものではないのです。

後記

20年以上親しくさせている日本の友人が彼の友人と共に当地に来ており、6日間で4度会いました。淡泊な私にするとそこまで深く付き合う人はそう多くありません。が、彼と話をし、彼の食に対するこだわりを聞くと私にとって知らない世界だけに圧倒するものがあります。連れてきた友人はミシュラン3つ星の店の大将。当然、彼らと食事をする場所も私が普段行く店とまるで違います。彼らの溢れるほどの食に対する知識を伺っていると自分の事業の掘り方は甘いと思わず反省をしてしまいます。業務内容も住むところも違うけれど持つのは友だと改めて感じます。知らない世界への誘い、そして刺激とはこういうことだと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年5月24日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。