証券口座の乗っ取り問題による不正取引額は3000億円で証券会社は17社に広がっているようです。証券会社のシステムがハックされたわけではないので個々人の口座に何らかの方法で侵入したのが原因です。最近のフィッシングサイトはAIで作成されるため、何が本当か判別できません。そこで私が見るのは送られてくるメールのドメインです。怪しいメールはドメインがもっと怪しそうでその場合はほぼ判別できます。彼らはドメインをある程度使い捨てにする必要があり、一般企業がよく使う@xcompany.co.jpという形を維持するのは難しいでしょう。私は海外に住んでいるので性悪説、つまりなんでも疑えなのですが、日本はそのあたりがまだ緩いとみられているのでしょうね。
では今週のつぶやきをお送りします。
アメリカの金利は下がるのか?
トランプ氏とパウエル氏が面会をしました。トランプ氏が会談を求めました。その会話は実にあっさりしたものでパウエル氏はいつもの記者会見の論調でデータが決める、政治的に中立との立場を崩しませんでした。FRBの政策決定委員も金利の早期引き下げには否定的な意見が多いのは事実です。ただパウエル氏はあまりにもデータ過信でデータがなぜそうなるのかを踏まえたpreventive (予防的)な行動に出ない点でトランプ氏のいらだちに私も同じ気持ちです。
パウエル氏はデータが揺らいだとしてもそれが一時的なものか、恒常的なものかを見極めるために判断を先送する傾向が強いのは紛れもない事実。では今週発表されたデータをどう解釈するかです。1つは4月のPCE(個人消費支出統計)で総合指数が前年同月比2.1%上昇、コアは2.5%上昇です。インフレ率低下は確実なトレンドのようです。もう1つは4月の前渡し商品貿易が3月に比べて19.8%減少しています。もちろん関税導入前の駆け込み輸入の反動ですが、1-3月のGDPでも消費部門が弱く、企業は在庫過多になる公算があり、景気が失速しそうな気配を感じます。
次回のFOMCは6月17-18日です。その次が7月29-30日、その次は9月16-17日です。夏休みは大きな判断をしにくく仮に景気が失速する気配がデータで確認できるなら6月は予防的措置により利下げするべきだと思います。パウエル氏はトランプ氏に対してあまりにも頑なになりすぎており、本来の判断力を失いつつあるように見えるのです。その結果、主要国の中でアメリカだけが取り残された高金利国という現状に見えるのです。確かにドルは基軸通貨だけに他国の通貨政策とはやや違いますが、FRBの本来の目的は物価と雇用の安定に変わりはありません。利下げも二者択一の話ではなく方向性として何段階か経るのが常であり、シームレスな流れこそ、経済界や産業界に予防的準備を提供するものではないでしょうか?
食傷気味のコメ、米、こめ
コメを食べなくてもコメを食べた気になるほどコメ一色の日本の報道。私はコメ価格はいずれ下がるが小泉氏の政策はその引き金となる、と申し上げました。その間、様々な論調の意見がメディアに登場し、下がる下がらないの言い合いとなっています。下がります、100%確信があります。それは江藤氏の下で放出した備蓄米が売れなくなり、損失覚悟で放出するとみているからです。私も報道をいちいちチェックしてませんが、1つだけ価値があったのはドンキの運営会社PPIHが小泉大臣に送った提言書。これは読む価値があると思います。これがきっと本質をついているのでしょう。
これが正しいならコメ流通にハイエナがたくさんいたということです。JAの下に流通業者が多い場合には5次まであるそうで、それらが将来の利益を見込んで倉庫にため込んでしまったと思われるのです。仕入れ価格は江藤氏が主導した競争入札ですから高い金額です。彼らは今、小泉氏を恨んでいるでしょう。なぜならそのコメは大損を免れない不良在庫になるからです。そのうち、彼らは倉庫代が払えず、損失覚悟でキャッシュ捻出の放出をします。つまり体力の限界です。倒産するところも出るかもしれません。正義が勝つ、ハイエナが負ける、これは当然のことです。
さてコメ政策は今回の騒動を受けて全面見直しの機運が高まると思います。それと農協の抜本的見直しです。農協は小作農を農業支援のみならず、農家そのものをまるっぽで面倒みてきた歴史があります。故に農協の本質は農業指導よりも農家の共存共栄、薄利多売、農協だけがウハウハという前近代的なビジネス構造になっています。いみじくも産経の石井聡元論説委員長が「進次郎は『農協』をぶっ壊せるか」と題した論説を入れています。これは痛快であります。私から言わせれば農家が苦しんだのは農協と流通業者に利益を吸い取られたからであり、将来的な利益補償という発想はおかしいと考えています。
安倍昭恵氏に見る民間外交の是非
安倍昭恵氏がプーチン氏とクレムリンで会ったという報道はインパクトがありました。この時期にあえてプーチン氏と面会することを受け入れたのは仮にプーチン氏の策略だとしても私は昭恵氏がそれに引っかかったとは微塵とも思っていません。ご承知の通りトランプ氏が再選された後、オフィシャルに日本人で一番先に会ったのが昭恵氏であり、トランプ氏のフロリダの自宅で歓待されたのは記憶に新しいところです。今回のプーチン氏との会談において林官房長官は「政府として安倍昭恵元総理夫人とやり取りはしておらず、コメントする立場にはない」(ロイター)と述べ、前回のトランプ氏との会合の時も「政府としてコメントする立場にない」(日経)と全く同じコメントをしていました。

プーチン大統領と面会する安倍明恵氏 クレムリンHPより
林氏としてはそういわざるを得ないのです。その言葉は真意ではなく意図的に政府は間接的でかつ受動的立場であると言いたいのでしょう。政府が関与せずにプーチン氏との会談の席にいた通訳は誰がアレンジしたのでしょう?昭恵氏の安全を含め、外務省は黒子に徹したと思います。では昭恵氏の本意はどこにあるのか、これは容易には判明しませんが、私は民間外交なのだと思います。民間外交はレベルによりますが、外務省は嫌がると思います。1984年と85年に作家だった故山崎豊子氏が胡耀邦総書記に会っています。あの時、確か外務省は煙たがっていたと記憶しています。それは嫉妬心もあったはずで中国の総書記に好待遇で会えるのはせいぜい日本の首相ぐらいの時代に作家さんが2度も会えるのか、という気持ちだったのでしょう。
では外務省職員は優秀かといえば私も多くの外務省の方と接してきていますが、ムラはあると思います。それはトヨタの社員が全員優秀かという質問と同じです。例えば現駐カナダ大使の山野内勘二氏はお会いした時「この方は違う!」と実感し、近著「カナダ」は日本の書店でイチオシになっていると思います。私も読みましたがカナダの精通振りはすさまじいほどで素晴らしい内容です。一方、残念なことにどんな優秀な外交官でもローテーションがあるのです。故に時として長期的な関係維持は現地の日本人が多少なりとも関与すべきだし、昭恵夫人のようにコミュニケーターが意味を持つのは日本側からの目線ではなく、トランプ氏やプーチン氏の目線からして極めて効果的であることは強く申し上げたい点であります。
後記
情報化の時代、SNSにAIと言われながらある情報が欠落しているのです。それは弔慰の案内。まぁ年齢がそうさせるのだと思いますが、私の周りの知り合いにお亡くなりになる方が結構いらっしゃるのですが、まったく存じ上げず、1年ぐらいたってから風の便りに聞くこともしばしばです。昔はコミュニティ新聞など自分の関心のあるなしとは別にオールラウンドにコミュニティをカバーするメディアがあったし、人と人の接点も強かったのに今は取捨選択の時代で情報が「ふるい」にかかっているためにそんなことも知らなかったのか、と言うことが起きるのです。AIの時代、私の周りの慶弔情報ぐらいどうにか集めてくれる方法はありませんかね?
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年5月31日の記事より転載させていただきました。






