6月15日から17日までカナディアンロッキー山脈のふもとになるカナナスキスでG7が開催されます。また今回のG7は1975年に初めて開催されてからちょうど50周年という節目にもあたります。世界のリーダーが民主的社会を作り出すために年に一度、議長持ち回りで集まるイベントですが、今年のサミットは果たして成果があるものになるのか注目されているところです。
一部ではサミット不要論もあるように聞きます。確かに膨大な事務方の準備作業を要するのですが、アウトプット(=共同宣言)と比べ、あまりに非効率ということもあるのでしょう。特に前回カナダで開催した際、議長のトルドー氏が首脳宣言を取りまとめるもトランプ氏がその数時間後に拒否するという「事件」もありました。
更に今回はトランプ氏の暴走とそれに対する6カ国の防戦、説得という構図が予想されているのか、一部からは共同宣言を端から諦めているという声も聞こえてきます。議長を務めるのはカナダの首相、マーク カーニー氏であります。首相になって日も浅く、メディアの露出も比較的少なく、地味ながらも緻密な首相がどのような手腕でこの会議を乗り切るのでしょうか?特に今回は多くの国でトップが入れ替わり、参加9人のうち6人の顔ぶれが昨年と変わる状況になっています。

トランプ大統領 ホワイトハウスXより
感覚的にはサミットのベテランとなるフランスのマクロン氏がトランプ氏とどう対峙するのか、欧州勢は一枚岩になれるのか、カナダは議長として中立を維持するのか、それとも欧州側につくのか、このあたりを注目しています。石破氏の存在はかなり薄くなると思います。今回参加する首脳は比較的濃い性格の方が多く、石破氏が早い展開で進むであろう議論について行けるのか、気になるところです。唯一、石破氏に注目しているのは中国問題でどういう立ち位置を取るのかであります。欧米と歩調を合わせるのか、それとも石破氏の中国寄りの姿勢が強調されるのでしょうか?
議題はまだ公表されていませんが、予想としては2つの戦争と対中国政策に重点が置かれるとみています。何故なら内容的にどの国も同じようなベクトルにあるからで議論しやすいからです。関税問題は世界の問題というよりアメリカが吹っ掛けている問題であり、ここでそれを俎上に載せるのは政治的に正しいのか、判断に迷うところではないでしょうか?特に英国とは既にいったん終了していますし、多分、残り全ての国も現在鋭意交渉中で一部の国は最終の詰めの段階にあるかと思います。よって最後のまとめをするところでちゃぶ台返しをしたくないという思いがないとも言い切れない気がします。よって議論があってもうわべだけの話に留まるとみています。
環境問題のテーマはトランプ氏と欧州が明らかに違う方向にあり、議論にならないし、まとまりを欠く気がします。安全保障については火種のある地域をどう鎮静化させ、2つの戦争が導火線にならないよう最大限の抑止力の議論はしてもらいたいところです。この点はトランプ氏も戦争嫌いですから一定のまとまりは期待できるかもしれません。
もう一つ、グローバルサウスとのG7諸国の付き合い方も議論になるのかもしれません。変な話ですが、G7諸国はグローバルサウスの国々を自陣に取り込みたいわけです。中国、ロシアも虎視眈々とそれを狙っています。ですが、当のグローバルサウス諸国は独立独歩的な発想を持っています。つまりどこにも影響されず、かつどちらとも適度な関係を維持したいのです。八方美人的な感じになると思います。個人的にはG7諸国が彼らのハートをガチ掴みするのは難しいと思います。
表題のG7サミットは不要か、という題目に対して「今年も期待できないね、だからもういいんじゃねぇ」と言うべきか、せっかく作った枠組みは無駄になっても維持すべきか、意見があるところでしょう。私は相違する意見を戦わせながらも民主主義をどう守るのか、地球規模の平和と経済と政治の安定をリーダー国としてどうシナリオを作るのかひざ詰め談判するには絶好の機会だと思っています。特にトランプ氏に権威主義的な行動がみられる中、ガバナンスという基本の中の基本にもう一度立ち返るのだ、という意識を持ってもらいたいと考えています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年6月3日の記事より転載させていただきました。