利益6倍?チョコザップ「フランチャイズ化」の行方

ライザップの来期業績予想に異変が起きている。

売上高予想の1,720億円は、今期(実績)1,710億円からほとんど変わらない。にもかかわらず、営業利益は「110億円」と、今期「19億円」のおよそ6倍に。営業利益率は「6.4%」と、今期「1.1%」から大幅に改善している。売上を変えず利益をここまで増やすのは、ビジネスモデルの大変革と言って良い。

変革の要はチョコザップである。これまでの直営出店方式を改め、フランチャイズ展開を進めていくという。フランチャイズ加盟を増やすため訴求しているのが

「採用不要」

というメリットだ。無人店舗だからスタッフ不要。店舗の清掃や機器の保守・修理は、「客」すなわち会員が行う。チョコザップには、清掃・修理を行った会員の月会費を割り引く(あるいは報酬としてギフト券を渡す)サポート会員という制度があるのだ。だが、この制度には、やや不安がある。

ライザップ プレスリリースより

サポート会員の懸念

サポート会員には、掃除などを行うと月会費(最大2000円)が割り引かれる「フレンドリー会員」と、機器・設備の修繕を行うとAmazonギフト券(500~2000円)がもらえる「セルフメンテナンス会員」の2タイプがある。

「セルフメンテナンス会員」に求められる資質は決して低くはない。

  • 「身長や力が必要な場合あり」「修理の知識や経験をお持ちの方推奨」(レベル2)
  • 「知識や経験がないと難しい可能性が高い」「工具を持参いただいたり電話代等の費用が発生する場合あり」(レベル3)

※レベル1は「力や予備知識がなくても実施可能」とされる

知識や経験がある人物が、役務を提供する。これは労働ではないのか? と疑問視する声がある。だが、ライザップは、“お手伝い”だと主張する。さらに、店舗の清掃や機材の修理・メンテナンスを行うことが

「社会貢献」

につながるという。

「『誰かの役に立っている』というプレゼンスの実感から社会貢献や自己実現、ひいては孤立抑制にもつながり、社会性のあるスキームとして運用しています」

chocoZAP、清掃・メンテナンスのサポート会員制度を本格展開 会員による”お手伝い活動”を経営資源に活かした新しい無人運営を実現 ~chocoZAPのサステナブルな事業運営~ | RIZAPグループ株式会社

だが、サポート会員たちが貢献するのは「社会」より、むしろライザップだ。

「例えば清掃業者にお願いするとき、仮に1回1時間の清掃で3,000~4,000円かかり、月に8~10回程度、それが全国に約1,800店舗あることを考えると、清掃にかかる費用のおおよそが見えてきます。でもフレンドリー会員様にご協力いただくことで、大幅なコストカットになります」

会員もスタッフの一員に!? 人手不足時代を生き抜くチョコザップの「顧客共創モデル」とは | マイナビニュース

しかし、サポート会員の中には、

「個室掃除と備品補充に小一時間はかかる」
「自分が整備したマシンで怪我をさせてしまわないか不安」
「トラブル・事故の責任の所在がわからない」

など不満・不安を吐露する会員も。チョコザップの無人運営システムは、サポート会員を前提に成り立っている。万一サポート会員が「割に合わない」と判断し急減したら、システムそのものが瓦解しかねない。

ライザップは、このサポート会員制度という、いささか不安のあるメリットを訴求することにより、フランチャイズ展開をしようとしているのだ。

ライザップ決算説明会資料より

蓄積したノウハウは2年分

ノウハウ面にも不安がある。

フランチャイズ加盟のメリットは、豊富なノウハウが提供されることだ。だが、チョコザップは創設からわずか2年。今月の決算説明会では、瀬戸社長が設備故障の頻発について

「夏も2回しか経験していないというところ」
「われわれの過去の実績が2年程度という中で」

と、実績年数の短さが要因ともとれる発言をしている。フランチャイザーとして提供できるだけのノウハウが蓄積されているのだろうか。

直営の限界

1年前、ライザップは以下のように語っていた。

「チョコザップは常にアップデートをし続けているので、『直営』の方がそのような変化に対して、スピード感を持って柔軟に対応できるからです」

chocoZAP、たった1年で業界最大手に成長…なぜフランチャイズ展開しないのか|ビジネスジャーナル

1年経った今、以下のように語っている。

「『直営』だけでは限界はある」

RIZAPグループ株式会社2025 年3月期 第2四半期決算説明会

朝令暮改ともとれる方針転換の理由は、資金調達に不安があるからだ。

ライザップはチョコザップに多額の投資をしてきた。認知度アップのための広告宣伝費は「数百億円」(決算説明会より)。結果、有利子負債は220億円に膨れ上がり、自己資本比率は「12.4%」に低下し、長期安全性は「赤信号」状態となった。ちなみに、競合する「エニタイム」の自己資本比率は59.2%である(24年3月期)。

24年6月の損保ジャパンからの300億円の出資受け入れにより、ようやく「30.4%」まで改善させた自己資本比率は、このまま維持したい。そんなライザップにとって、負債を増やさず、加盟店(フランチャイジー)オーナーの資金で店舗数を増やせるフランチャイズは魅力的なのだ。

将来のオーナーはどう判断するか

一方、加盟店(フランチャイジー)側からすれば、チョコザップには、高い知名度という魅力があるものの、サポート会員制度への過度な依存とノウハウ不足という不安要素もある。

はたして、将来のオーナーたちはどのように判断するのだろうか。

chocoZAP都内2店舗
筆者撮影

【参考】
ライザップ 決算説明会資料 他