未完了の工事が15兆円の過去最高に:建設は作りたくても作れない時代へ

国内の建設業界では、深刻な人手不足と高齢化、そして2024年から導入された時間外労働の上限規制の影響により、工事の処理能力が大幅に低下しています。その結果、建設会社が契約済みで完了していない建設工事は15兆円を超え、過去最大となっているそうです。

とくに現場監督の不足が顕著で、職人の減少以上に深刻な課題となっており、受注ができても着工が数年後にずれ込む事例が各地で相次いでいます。

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建設業界では就業者数が減少し、高齢化も進んでいます。加齢により体力が衰える中、現場の人手確保は今後さらに困難になる見通しです。特に、大地震が起きた際にインフラや建物の復旧を担う人が不足する恐れがあり、人手不足によって当たり前だったことが当たり前でなくなる時代が近づいています。

時間外労働の規制により、一人あたりの労働時間が減少し、現場の作業員には限られた時間でより多くの業務が求められています。しかし、建設現場は人手を要する作業が多く、生産性向上には限界があります。加えて、技能者の減少が進行中であり、円安の影響もあって外国人労働者の確保も難しくなっています。

建物を建てたくても、人手が足りず工事が進まない時代になってきました。今見ている建物が、もしかすると最後のコンクリート建築になるかもしれません。

建設需要自体は旺盛で、特に設備投資を進める企業にとっては大きな機会ですが、建設会社は利益率の高い案件を優先する傾向を強めており、民間工事や公共事業の遅延も発生しています。

過去30年で建設作業員は大きく減少する一方、介護士やリハビリ職は急増していますが、その業務内容には実効性や不正請求への疑問も指摘されています。

この分析には批判的な意見もあり、国土交通省の建設工事費デフレーターによると、2015年度を100とした場合、2024年度は128を超えています。したがって、金額で議論するなら物価上昇を反映した補正が必要との指摘があります。今回も日本経済新聞の誇張された記事だと見る声もあります。

ゼネコンや下請け会社は、長年にわたりパワハラやカスタマーハラスメントを放置してきた結果、そのツケが今まわってきています。そんな職場環境では、若い人が建設業界に入りたいと思わないのも当然かもしれません。

建設業は日本のGDPの約5%を占める重要な産業であり、今後の経済成長やインフラの維持にとって欠かせません。AIでは代替できない仕事が多く、人手の価値がますます高まる分野でもあります。農業や建設、インフラ、介護・医療など、人の力が必要な仕事の方が、これからの時代に安定した未来があると考えられます。