大和ハウスなど大手企業が新卒採用を大幅削減:売り手市場は終わるのか?

新卒採用の見直しが広がっています。新卒採用市場が活況を呈する中で、あえて採用人数を大幅に減らす企業が出てきています。大和ハウス工業は、2026年卒の採用人数を前年度の約670人から150人にまで8割近く削減する方針です。

人事部長は「全社的に適正人員を見極めるため、経営判断として大幅に削減した」と説明しているそうです。

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こうした動きは他の大手企業にも広がっており、新卒の売り手市場はあと1~2年で終わる可能性もあるという見方も広がっています。

新卒は教育コストがかかるうえに初任給も上がっていて、企業にとっては割高な存在になりつつあります。ただ、中途採用に切り替えたからといって、思い通りに適した人材が見つかるとは限らず、うまくいくかどうかは慎重に見極める必要がありそうです。

最近では、新卒を多く採用しても、育成に時間とコストをかけた結果、数年で他社に転職されてしまうケースが増えているようです。かつては長期雇用を前提にした「一括採用・終身雇用」のモデルが主流でしたが、今は働き方やキャリア観が多様化し、会社に長くとどまらない人も珍しくありません。

ジョブ型雇用に変わっていくと、年齢の若さにこだわる必要がなくなるため、新卒を一度にまとめて採用する仕組みは自然と必要なくなります。最近、初任給が大きく上がっているのも、こうした働き方の変化が背景にあります。

こうした状況では、企業側にとっても新卒を大量に採用し、育成するのはコストに見合わず、リスクが大きくなります。今後は新卒一括採用にこだわらず、通年で即戦力となる中途人材を見極めて採用する動きが主流になっていくかもしれません。

新卒を一から育てるより、他社が育てた優秀な人材を好条件で引き抜く方が効率的と考える企業も増えています。ただ、その流れが進めば、新卒を誰が育てるのかという問題が残ります。

TOPPANも構造改革を見据えて採用を3割減らし、富士通は通年採用に移行して職務に合った即戦力の獲得を重視していくようです。

少子化が進む中、企業は採用人数よりも「適正」や「適性」を重視する方向に変わっています。一方、日本では「正社員を解雇する前に非正規を切るべき」とする判例があり、基幹業務は正社員に限定されがちです。

少子化や若手人材の流動化が進み、新卒の確保や定着が難しくなっている今、無理に引き留め策を講じるよりも、この機会に年齢や雇用形態にとらわれない、より公平で柔軟な雇用制度へと転換していくべきではないでしょうか。

AIの普及で「ゾンビ社員」の問題が深刻化していくと思われますが、日本では解雇が難しいため、新卒採用を絞る動きに繋がってしまいます。このままでは若者が就職しづらい「AI氷河期」が来る可能性があり、雇用の硬直性が改革の妨げとなっています。

就職氷河期の歴史は韻を踏むのでしょうか。