イランの防戦はどこまで、私の読むシナリオ

ひと月ちょっと前にこのブログで「トランプ大統領はG7に来ないかもしれない」と書いたのを覚えていらっしゃる方もいるでしょう。そう書いた理由はトランプ氏が「総意」という発想が好きではないからであり、常に2国間同士のやり取りを重視する以上、G7は彼にとってほとんど無意味なので来ない理由をつけると考えたのです。実際には参加しましたが、1日だけで晩餐をして即座に帰国しました。理由はイラン問題です。

G7カナナスキス・サミット 首相官邸HPより

残された「G6」のメンバーは「状況は理解できる」として送り出したとしていますが、私は強い失望と国際関係の変化を感じたのです。かつてはこの手の問題はG7で討議し、共同声明を発表し、対策を打ち出してきたものです。今回は「アメリカさん、がんばってね、いってらっしゃい」なのです。つまりG7はもはやG7としての国際平和と民主的手法による紛争解決の機能を失ったとしても過言ではないでしょう。いったん解散してもよいのではないかとすら思います。

さてそのトランプ氏の考えていることは世間で言われるイランとイスラエルの交戦の停戦仲介という次元ではないとみています。個人的にはフォルドゥの地中奥深くにある核施設の破壊、イランの将来の核開発放棄、そして究極には政権転覆ではないかとみています。つまりイスラエルとアメリカは名コンビであり、汚れ役をイスラエルが行い、「KING」のトランプ氏が圧倒的威力で政権を無能化させようという試みに見えるのです。

この交戦が始まって2、3日目にプーチン大統領が仲介を買って出ました。誰もそれをフォローしていないところを見ると現実のものにならなかったわけですが、プーチン氏はロシアの後ろ盾であるイランが無能化されるのは非常に困ります。よってプーチン氏の仲介は当然政治的意図がそこに隠されているわけで、トランプ氏も「プーチンさんもご一緒に」とは絶対にならないわけです。トランプ氏は確信的にイラン潰しを進める、それが私の読みです。

そこまでするにはシナリオがあるはずです。わたしの読みは将来的にプーチン氏を痛めつけるために将来、北朝鮮に圧力をかけ、ロシアの取り巻きの1つを無力化することにあるとみています。それに乗じて圧政でウクライナ問題も片付ける算段ではないか、と考えています。

ではこの作戦は成功するのか、これが最大の注目点ですが、予断を許さないと思います。イランは確かに長年の経済制裁もあり、あらゆる施設が老朽化し、戦力も物資も不足している中での戦いですのでイスラエル一国相手でも厳しい中、アメリカを敵に回すならば一巻の終わりと断言してもよいでしょう。事実、イスラエルの諜報部隊であるモサドが今回のイラン攻めにおいて果たした役割は尋常ではなく、要人の全ての行動とその予定が全て把握されている状態になっています。故にイスラエルがトランプ氏に「ハメニイ師を暗殺できる状況だがやっても良いか?」と打診した訳です。ここまでくると映画の世界です。

では何が怖いのか、といえば復讐であります。イランはもともとアメリカ嫌い。そしてイスラエルとは犬猿の関係。確かにリング上で正攻法に闘うには厳しいのですが、場外戦で相手が困ることはまだまだできる余力があります。その最大のカードであるホルムズ海峡封鎖に打って出るのでしょうか?ホルムズ海峡封鎖は原油が暴騰し、世界が困りますが、イランも困るのです。故にそこまではしないのではないか、というのが一般的解説です。ですが、もし、イランの原油施設が破壊され、イランの原油輸出が経済封鎖で実質閉ざされたならばホルムズ海峡に船を沈め、通行できなくする蛮行をしないとは言えないでしょう。つまりイランもイスラエルもアメリカも判断に繊細さを要求されるところであります。

本来であればここでG6が仲裁に入るべきですが、基本的には人道的立場を除き、中立ないしドイツのようにイスラエル寄りに舵が切られています。多分ですが、遠巻きに見るだけで留まると思います。

もう一つ、誰も指摘していないイランの破れかぶれの方策としてサウジなど中東の石油施設を爆破する作戦は選択肢にあるかもしれません。人質作戦とでも言いましょうか?中東を攻め、アメリカを困らせるのです。結局、12万人強が在籍しているとされるイラン革命防衛隊がどういうあがきをするか次第だと思います。よって一部でいう1週間で片付くようなレベルではないとみています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年6月18日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。