内閣不信任案を出せなかった野田氏:参議院選は与党が制するのか

中野サンプラザ跡地開発が白紙撤回となったようです。同じデベロッパーの立場からコメントさせて頂くと関係者はヘタを打ったと思います。建設費が高騰するのは当たり前でオリンピックの時も万博の時も当たり前に報じられてきました。それは税金が関与するからであり、収益を生まないからであります。今回のサンプラザの場合、収益不動産開発なので海外では当たり前にとられるある方法を取り入れればよかったのです。それは容積を増やす、であります。バンクーバーの開発ではこのような状況に陥った時、許認可を発する役所とデベの間でディールを行い、階高を増やし、事業の健全性を担保する手法がとられます。日本の役所にはそんなウルトラCはないでしょう。発想の転換が必要でした。

では今週のつぶやきをお送りします。

ビットコインはつまらないのか?

日経の記事「『つまらなくなった』ビットコイン 変動低下で関心失う個人」は違和感がある記事であります。以前から申し上げているようにビットコインを含む仮想通貨は市民権を得るプロセスにあります。マーケティングのイノベーター理論でいうイノベーター(2.5%)からアーリーアダプター(13.5%)が終焉に差し掛かり、アーリーマジョリティ(34%)の段階に入るところだとみています。つまりそれまでは個人が一攫千金を狙うようなあやふやなものでしたが今では年金基金や機関投資家、企業などがこぞって保有資産の分散化の流れで少しずつその所有を増やしている段階です。

個人より長期的でグローバルな視野にたつ大口投資家が増えてくると相場に厚みができます。例えば中国上海市場は主軸が個人投資家で海外の機関投資家はほとんど入り込めないため価格形成が荒くなります。一方、NY市場は世界の様々な投資家が入り込むため価格の変動はより小幅になりやすくなります。同様にビットコイン相場の価格のブレが小さくなり、安定感を増したことは成熟期に入ってきたと同時に投資対象としての公認を受けたとも言えるのです。

よってそれを「つまらない」という表現で片づけてしまう日経のタイトルはセンスがないと思います。私はむしろこれからビットコインと同様の市民権を獲得できる仮想通貨探しが再度起きると思っています。イーサリアムに次ぐのがLITE COINなのかもしれません。ビットコインの発掘が困難になってくると必ず、代替手段を見つけるというのが市場の流れであり、その背景は基軸通貨ドルに対する担保であります。投資をする人は必ず考えます。「これはもう既に手垢がついたよな。だけどこちらならまだ将来性がある」と。「つまらないビットコイン相場」は仮想通貨をより使いやすいものにする第一歩だということです。

内閣不信任案を出せなかった野田氏

実質的に国会の会期が終わり、内閣不信任案提出の可能性が取りざたされたものの立憲の野田代表は「出さない」と表明、石破氏はそれを受けて解散総選挙をしない方向となりました。小沢一郎氏はきっと吠えているのでしょうね、千載一遇のチャンスをフイにしたと。確かに少数与党になった以上、内閣不信任案はいつでも出せるわけですが、野田氏があえてそこに踏み込めなかったのはそうやっても良い結果が得られないと判断したからでしょうか?

野田氏 立憲民主党HPより

実は私はこの1か月強の間に参議院選動向について大きく見方を変更しました。当初見込みは自民のボロ負けでそれこそ国民の玉木首相もありかと思ったのです。これでは細川内閣の再来ではないかとすら思ったし、事実、岸田氏ですら玉木氏も有力候補と発言するぐらいだったのです。その風向きがガラッと変わったのは江藤氏の発言でした。あの軽はずみな一言がとんでもない変化を引き起こす引き金となったのです。そして自民の信認が上昇、一方、国民は山尾氏問題で味噌をつけ支持率は急落、かと言って立憲も国民のハートを掴むほどではないのです。とすれば参議院選は与党が制するとみるのがナチュラルになってしまいます。

ただ石破氏がいいとも思えないのです。赤沢大臣が毎週のように通ったアメリカ。期待されたG7でのトランプ氏との合意とはなりませんでした。日本の報道には「日本との交渉はタフ」と出ていますが、報じられていないのが「それなら近いうちに日本に手紙が一枚届くだけだ」というセリフであります。「タフ」という英語は必ずしも良い意味ではなく、むしろ「嫌な相手」というニュアンスがあります。仮に日本がアメリカからお手紙を頂くようならば石破氏は交渉失敗の責任は取らざるを得ないと思います。とすれば参議院選挙が終わった際に石破氏が自らの処遇を決めざるを得なくなる公算もあると私は考えています。

どうするアメリカ、イランに参戦するのか?

アメリカが正式に参戦した場合、アメリカはひと時の勝利の美酒に酔うことはできるかもしれません。そしてトランプ氏にとって政策が冴えず、目だった功績がほとんどないまま約半年がたとうとする中、これが起死回生の一発と考えている節はあります。そしてトランプ氏の性格からすれば戦争は嫌いだけれど市民を巻き添えにせず、核施設を破壊し、指導者を粛正するという限定的な理由なら自分で正当化することは可能であり、参戦に踏み込むような気がします。

仮に想定通りうまく行ったならば次は関税と減税法案に全精力を傾け、より強気の政策にでる可能性は大いにあります。正直、これが怖いと思います。一方、対イラン作戦が絵に描いたような短期決戦で完了するのか、私には想像がつきません。テロもより活発になるような気がします。またイランがアメリカやイスラエルの思惑通りに再生の道を歩むとも思えないのです。イラクがボロボロになってしまったのと同様、一度壊すと修復には非常に時間がかかります。

一方、もう少し壮大な話をすると文明は西に延びる歴史でみれば古代ギリシャからスタートして地球を4/5ほど廻って今、インドまで来たところですが、その次はペルシャの時代に戻るのです。つまりインドの次はイランの時代になれるのか、ほぼ一周、廻った時そのシナリオは崩壊するのか、であります。国家間の紛争解決方法は外交と実力行使の2つ、そして歴史では外交努力は目立たない存在です。今、欧州勢は外交で必死の説得工作を続けますが、アメリカ、イスラエルは「言っても聞かないのなら実力行使」という姿勢を崩しません。これから約10日は歴史に残る事態が生じるのか、目を離せません。

後記
今週はじめにバンクーバーで松本紘 京都大学元総長の訃報に接し、ある気がかりがありました。昨日、けいはんな学研都市で打ち合わせのち、理化学研究所の入るビルでランチ会合を終えた後、松本氏のご逝去で3年間練り上げたある提携話は人事問題で根本から揺るがされる可能性が出てきました。学術界は魑魅魍魎の世界であり、前近代的な白い巨塔が未だ不朽の虚像としてたちはかり、理路整然とすべき知識層が泥仕合を演じる姿は誰も想像できないでしょう。以前から小耳にはさんでいた国立大学の教授会もそんなもの。ビジネス界とは180度真逆の見聞きしてはいけない世界のど真ん中に放り込まれたなぁと私が勤めていた会社が施工した梅田の連結ビルのスカイラウンジで傾けるグラスも夜景もうつろでありました。今日は気を取り直して通天閣に行こうかな。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年6月21日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。