そろそろ終わりにしたい「組織票」

会社勤めの頃、会社の組合員だった時期に組合に非常に不満を感じていました。「団交の結果、満額回答!」と橙色のインクで大書きされたビラが社内に回ってくるのですが、何年たっても満額回答。そしてその金額はわずか。確か組合費が月に2000円ぐらい給与天引きで取られていたのでベアがほとんどない中、「組合費倒れ」とも言える状態だったのです。そこで組合の幹部に苦言を述べたのです。「皆さん、満額、満額っていうけれど結局、経営側と戦う姿勢がなく、お手盛りで自己満足をするような姿勢は間違っているのではないですか?」と。その後、本社勤務や秘書、海外勤務になってしまい、27歳にして管理職扱いとなり組合とはおさらばできました。山崎豊子の「沈まぬ太陽」の主人公のようなガチ戦うスタイルではなく、組合員の大多数は「面倒だし、関わりたくないから考えもしない」という人たちばかりだった記憶があります。

組織票というイメージは弱者の声を一まとめにして大きなものにしようということだと思います。〇〇労連なんていうのはその典型で業界や会社の習慣や風潮に穴をあけ、鉄壁の経営陣に戦いを挑むなどというのはずいぶん昔の話でしょう。今の労組なんて義務感丸出しの「お勤めご苦労様です」的な感じだろうと思います。

組織票で私に強い印象があるのが農家の票であります。自民党は昔からこの農家の票をうまく取り込んできました。そのために農水族と呼ばれる議員さんが数多く存在し、その人たちが波状攻撃のように農水の官僚に圧力をかけるわけです。これで官僚が中立公平な政策を策定できるわけがないわけで農水省は誰のための省庁なのかと個人的には何時も疑問視していました。よって一部の方からは今回の小泉氏はやり過ぎだとか、親父とそっくりだ、と言われてますが、あの構造的とも言える支配体制をぶっ壊すなら私は良いと思うのです。それは誰を応援しているという意味ではなく、ぬるま湯に浸り、時代錯誤感が大きくなっている組織に喝を入れるという意味です。

今回の都議選と参議院選挙。選挙のあり方は少しずつ変わってきていると思います。まず組織票がどこまで意識されるか、であります。一般に言う組織票、つまり個人の思想や信条にかかわりなくある理由によりある政党や候補者を推す人は非常に大雑把に約2割いるとされます。この人たちは確信的にその政党や候補者に投票しますし、多くがあまり裏切らないとされます。また選挙戦の最中、誰が何を言おうが、途中でどんなニュースが出ようとも「上からそういう風に言われているので…」という律義さを示します。

野田代表・斎藤代表・玉木代表・石破首相 各党・首相官邸HPより

一般に言う投票率が低めで終始した場合、組織票を牛耳る政党や候補者が有利になりやすいのはちょっと考えればお分かりになるかと思います。そしてある調査によると投票率が30%の場合組織票が占める割合は63%にもなり、投票率が50%なら38%となるとされます。確かに計算上ではそうなるのかもしれません。よってこの組織票のしがらみから解放される為には投票率をあげるか組織票解体を進めるしかないのであります。

近年、SNSが様々な形で選挙に介在し始めているのですが、個人的にはこれも一種の組織票ではないかと考えています。つまりSNSという手段を通じた党首や政党のある断面を捉えたシュプレッヒコールではないかと思うのです。これは心理的にその気にさせる効果があるのです。例えばコンサートに行き、圧倒的雰囲気で観客が大興奮していれば自分も未経験のその世界に入り込むでしょう。一種の催眠術のようなもので魔法にかかっているようなものなのです。

小泉元総理が行ったイシューを一点に絞り込む解散総選挙はわかりやすいというよりほかの99のイシューに触れずにそこだけを捉えるので白黒がはっきり出やすいとも言えるのです。元祖SNS型選挙戦略とも言えます。だけど世の中そのイシューだけではなく、我々は常に100のイシューの中で生きており、それがいま優先課題かどうかという順番の問題だけなのであります。小泉氏は郵政民営化というイシューを意図的に順番でトップに持ってくることで勝ち抜いたとも言えるのです。これは組織票ではないけれど日本全部を組織化したようなもので好き嫌いは別としてある意味優れた戦略だと私は思うのです。

ではお前が言う「そろそろ終わりにしたい『組織票』」とはどういう趣旨かと言われると情報化がこれだけ進んできた中で個人が興味持つ政治的関心ごとは百人十色だと思うのです。また政党政治故に選挙区から出馬した方がどれだけ力不足であっても「〇〇党の公認だから」で一票を投じなくてはならないのです。これは本心ではないし、選挙民軽視だと思うのです。やはり選挙区の代表選手になるのです。ギリシャ時代のポリスを思い起こしてほしいのです。真のリーダーは誰であるべきか、論戦を重ねたのです。芸能人や有名人がポッと当選できるほど政治家は楽な仕事なのでしょうか?

故に選挙民がしっかり候補者を選ぶプロセスを行うために選挙管理委員会が一定のフォームで候補者の顔をディスローズさせ、比較検討しやすくすべきだと思うのです。政党政治はわかるけれどもう少ししっかり候補者を選んで欲しいと私は選挙が近づくと思うのであります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年6月22日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。