黒坂岳央です。
多くの人は、誤解されたときに必死になってそれを解こうとする。だが、その大半は徒労に終わる。なぜなら、そもそも人は他人を完全に理解することなどできないという前提があるからだ。筆者はそれをよく理解しているため、誤解されても基本的には放置するようにしている。
これは家族や兄弟といった近しい関係ですら同様である。言わずもがな赤の他人はお互いに誤解はつきものだ。人は常に自分の価値観、思い込み、経験というフィルターを通して相手を解釈する。したがって、誤解は避けられない。
そして、9割の誤解は訂正しようとする労力はあまりにも膨大で、報われないことが多い。したがって、「解く必要がない誤解は放置」という選択は合理的だと思っている。

Bulat Silvia/iStock
誤解を解く9割の努力は無駄だ
筆者は記事を書いたり動画を出している。毎回、なるべく誤解されないように自分では必死に頭を使って書いているし、独りよがりにならないように多面的な視点を意識している。最近はAIを使って書いた記事を読者の視点で印象や誤解の余地を確認するようにしている。
だが、それでも依然として誤解はゼロにはならない。「お前は間違っている!」という怒りの声を消すことは不可能なのだ。
もちろん、書き手である筆者の表現力不足は否定しない。だが、読み手が「自分の見たいようにしか見ない」のであれば、いかなる説明も無意味である。書いていないことを読み取り、書いてあることを無視するような相手に対しては、いかに論理的に精緻な文章を投じたところで徒労に終わる。こうした誤解は放置でよい。
駆け出しの頃は、そうした声にも1つ1つ丁寧に対応していた。だが、実際には相手が記事をろくに読まず、タイトルだけで判断しているケースも多かった。中には、論理的に説明を尽くしても「でもお前は性格がダメ」などと人格否定で返してくる人もいた。こうしたやり取りは極めて消耗するうえ、建設的な結果につながった試しがない。
この経験からも、このように生じる誤解は解かないで放置でいいと思っている。自分の責任の成果物には真摯に対応するが、相手側に責任がある場合はいちいち反論せず、好きに言わせっぱなしにしている。そうした相手から誤解されても失うものはない。そしてこのようなケースは人生を生きていて少なくないので、都度訂正をしていると時間が足りなくなる。
ビジネスでは限られたリソースをどこに投資するかが成功の鍵を握る。誤解を解く努力は、ROI(投資対効果)で考えれば明らかに非効率だ。
解釈は相手の課題
人生は「自分の課題と相手の課題」にわけられる。言わずもがな、人生は自分の課題に集中するべきなのだ。
誤解の多くは、相手の固定観念や認知バイアスから生じる。自分の発言が意図と異なる受け取られ方をしても、それは相手の解釈の問題であり、自分の責任ではない。
そのため、仮に相手から「お前のせいで不快になった」と言われても落ち込む必要はない。不快になることを選んだのは相手だからだ。この場合、大人が取る合理的な選択とは、不快になった相手から黙って離れることである。両者とも失うものはなく、最も低コストなディールとなるだろう。
たとえばSNSで情報収集をする上で不快な投稿が流れてきたからと言って、いちいち腹を立てて相手に絡むのはお互いに時間のムダでしかないし、その感情処理は本来、自分の課題であり、SNSという文明の利器を使う上で当然ついて回る副作用というわけだ。
1割の誤解は解かねばならない
自分は9割の誤解は放置でいいといった。だが、1割はそうではない。ここからはその1割について話していこう。結論、実害が生じうる誤解である。
実例を言えば、相手から「メールを送ったのに無視しないでください」と叱られたことがある。だが、筆者はビジネス顧客からのメールは「返信率100%」をずっとキープしているので、絶対に無視はしていないという確固たる自信があった。
「いただいたメールはいついつに速やかに回答をお出しておりました。下記はそのメールを転送したものです。もしかしたら迷惑メールなどに入っていないか、大変お手数ですがご確認をお願いしてもよろしいでしょうか?」
このように尋ねると、やはり相手の迷惑メールボックスに入ってしまっていたことが判明、信頼失墜を防ぐことができた。
こういった誤解は、黙って放置していると損失やトラブルに発展するリスクがあるため、早期に訂正することが求められる。また、相手は赤の他人ではなく、仕事の顧客なのでそうした重要な相手から信用を失うべきではない。
人によっては「相手からいきなり怒られた」と感情的になるかもしれないが、ここで重要なのは、感情的に反論するのではなく、事実を明確にし、冷静に誤解を解く姿勢である。
真摯に対応すれば、相手に伝わり、しっかりと誤解を解くことが可能だ。
◇
誤解が解けるケースは1割くらいと考えるのでちょうどいい。相手がこちらの話を理解しようとしており、根底に相互信頼がある場合に限られる。それ以外の場合は好きに思わせるほかはない。人生を強く生きる上では誤解を受け入れざるを得ない部分もあるのだ。
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