ゼレンスキー大統領「米企業との関係強化」を強調

ウクライナのゼレンスキー大統領は2日、テレビ演説で,米国がウクライナへの重要な武器供与の一部を停止すると発表したことについて、「現在、ウクライナと米国は実務レベルで防衛支援の詳細を明らかにするために協議している」と説明。一方、「今日、米国の起業家、アメリカ商工会議所の会員の方々と会合した。彼らは重要な企業の代表であり、ウクライナでウクライナのために尽力していただいている。その場でウクライナの安全保障アジェンダの推進に、米国企業がより一層積極的に関与してくれることをお願いしたばかりだ」と強調、ウクライナが米国企業と密接な関係を有していることを明らかにした。大統領の演説は、米国の武器供与の一部停止ニュースで動揺する国民を落ち着かさせる狙いがあったはずだ。

米実業家、企業代表と会談するウクライナのゼレンスキー大統領、ウクライナ大統領府公式サイトから 2025年7月2日

なお、ゼレンスキー大統領の発言直後、ウクライナのシビハ外相はオンラインサービスXで、「わが国はより多くの迎撃システムを必要としている。これらのシステムを購入またはリースする用意がある」と述べている。

米政治専門紙ポリティコは1日、「国防総省がウクライナに送る予定だった一部の武器・弾薬の供給を停止したのは米軍の備蓄が不足しているためだ」と報じた。停止したのは地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」用のミサイルや精密誘導弾などという(この項、ワシントン発時事)。

ちなみに、トランプ米大統領は6月25日、北大西洋条約機構(NATO)首脳会談の際、ゼレンスキー大統領とオランダで会談した際、パトリオットの提供を示唆したが、同時に「入手が非常に難しい。われわれも必要としている」と語っている。

米国防総省のショーン・パーネル報道官は、「トランプ大統領はこの悲劇的な戦争を終結させるという目標に沿って、ウクライナへの強力な軍事支援の選択肢を引き続き提供していく考えだ」と述べた。一方、国務省のタミー・ブルース報道官は、「ウクライナへの支援や武器販売の停止ではない。トランプ大統領は、ウクライナへのロシアの攻撃に対抗する上で重要な役割を果たすパトリオットミサイルの供与に引き続き尽力する」と述べ、ウクライナ側の懸念払拭に努めている。

なお、トランプ氏は2月28日、訪米したゼレンスキー大統領とホワイトハウスで首脳会談を開いたが、激しい口論を展開し、予定していたウクライナの鉱物資源の権益を巡る合意文書への署名は中止された。その直後、トランプ氏は3月3日、ホワイトハウスで「ウクライナへの全ての軍事支援の一時停止を命じた」と報じられたことがある。

いずれにしても、ワシントンからの発表はキーウで大きな懸念を引き起こした一方、ロシアを喜ばしたことは言うまでもない。プーチン大統領は1日、マウロン大統領との電話会談で、ウクライナ情勢について「ウクライナ紛争は西側諸国が長年にわたりロシアの安全保障上の利益を無視し、ウクライナに反ロシアの拠点を作り、ウクライナのロシア語圏市民の権利侵害を容認し、現在はキーウ政権にさまざまな近代兵器を供給しながら敵対行為を長期化する政策を追求してきた政策の直接的な結果だ」(クレムリン公式サイトから)と繰り返している。そして、平和的解決の見通しについては、「可能性のある合意は包括的かつ長期的なものであり、ウクライナ危機の根本原因の除去を規定し、新たな領土的現実に基づくものであるべきだ」と述べている。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年7月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。