ウクライナ政府によると、ロシア軍は3日夜から4日にかけ、ウクライナをシャヘド・ドローン539機、巡行ミサイル4発、弾道ミサイル7発で攻撃した。これは侵攻開始以来、ロシアによるウクライナへの最も深刻な攻撃だ。ウクライナ空軍によると、270発が撃退され、さらに208発が電子防空装置によって撃ち落された。

ゼレンスキー大統領(左2番目)、フレデリクセン首相(右2番目)、コスタ欧州理事会議長(右)、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長(左)と合同会談 2025年7月3日、ウクライナ大統領府公式サイトから
現地からの情報によると、ロシア軍はキーフに向けてキンジャール極超音速ミサイルを発射した。弾道ミサイルと巡航ミサイルも首都とその周辺地域に向けて複数回発射された。未確認情報によると、主要目標は人口300万人の首都キーフの南に位置するヴァシルキフ空軍基地だった。
なお、首都キーウでは多数の負傷者が出た。キーウのビタリ・クリチコ市長は「少なくとも23人が負傷した」と発表した。民間防衛当局によると、負傷者の中には10歳の少女も含まれている。ソロミャンカ地区で複数の火災が発生。火災はすべて住宅で発生した。市内の他の地域でもドローンによる被害が確認された。市内では数時間にわたり対空砲火の音が聞こえたという。
ウクライナのゼレンスキー大統領は3日、デンマークのオーフス市で開催されたデンマークの欧州連合(EU)理事国議長就任の会合で、「ウクライナへの武器供与とロシアに対する新たな厳しい制裁は、ヨーロッパの安全保障にとって極めて重要だ」と述べ、ウクライナへの支援を訴えた。
ちなみに、ドイツ連邦情報局、オランダ軍事情報局(MIVD)、そしてオランダ情報局(AIVD)は4日、共同記者会見を開き、「ロシアはウクライナにおける化学兵器の使用を増加させている。ロシア軍による催涙ガスとクロロピクリンの使用は、今や標準的な手法となり、広く行われている」と共同発表した。クロロピクリンは、トリクロロニトロメタンとも呼ばれ、肺攻撃剤に属する化学兵器である。西側情報機関は「クロロピクリンや催涙ガスの使用は明らかに化学兵器禁止条約に違反する」と強調している。
米国のウクライナへの武器供与に一部停止について、米国防総省のパーネル報道官は、「トランプ大統領はこの悲劇的な戦争を終結させるという目標に沿って、ウクライナへの強力な軍事支援の選択肢を引き続き提供していく考えだ」と述べた。一方、国務省のブルース報道官も「ウクライナへの支援や武器販売の停止ではない。トランプ大統領は、ウクライナへのロシアの攻撃に対抗する上で重要な役割を果たすパトリオットミサイルの供与に引き続き尽力する」と述べ、ウクライナ側の懸念払拭に努めている。
ロシア軍の大規模攻撃の数時間前、ドナルド・トランプ米大統領は、ロシアのプーチン大統領と電話で約1時間会談した。トランプ氏はウクライナ侵攻の早期停止を要求したが、プーチン氏は戦争の続行を表明、会談は平行線に終わったもようだ。トランプ氏は「ウクライナ情勢では進展は全くなかった」と不満を吐露している。
プーチン大統領は1日、フランスのマクロン大統領と電話会談したが、ウクライナ情勢について「ウクライナ紛争は西側諸国が長年にわたりロシアの安全保障上の利益を無視し、ウクライナに反ロシアの拠点を作り、ウクライナのロシア語圏市民の権利侵害を容認し、現在はキーウ政権にさまざまな近代兵器を供給しながら敵対行為を長期化する政策を追求してきた政策の直接的な結果だ」と従来の立場を繰り返し、平和的解決の見通しについては、「可能性のある合意は包括的かつ長期的なものであり、ウクライナ危機の根本原因の除去を規定し、新たな領土的現実に基づくものであるべきだ」と述べている。トランプ氏との会談でも同様の立場を明らかにしたものと見られる。

プーチン大統領 クレムリンHPより
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年7月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。