目標設定の意味:5年、10年先の数値目標は意味がなくなるわけ

小学生のころから「目標を立てよ」と教え込まれ、今日に至るまでその呪縛から逃れられたことはありません。20年ぐらい前に本田健氏の著書「〇十代に出来ること」シリーズに引っかかり、挙句の果てに氏の講演会にまで行き、なるほど、人生10年ごとの節目それぞれに目標というか、生き方のターゲットを設定するのはなかなか良いアイディアだと腑に落ちたことがあります。

では今でもその「10年単位目標」を踏襲しているのか、というと実は少し変化してきたのです。それは本田氏の設定する枠組みである50代とか60代にこうすべき、という一般的観念から自分にズレがあると認識したのです。

以前から申し上げているように私は健康には留意している方で、運動はこの年齢にしてはかなりハードにそして回数もこなしていると思います。ただそれには理由があり、医者通いと病院の検査漬けがあまりにも多いことでより健康を意識したのです。つい数か月前には2週間の間に医者と検査が10回あり、その時はさすがに「自分は健康なのだろうか?」と疑ったほどです。

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一方、私が業務で接点を持つ人々は基本的に20代から90代までとにかく広く、さまざまな年齢層の方々の生き方を見ている中で自分の所属する60代という枠組みから超越できないか、と考え始めたのです。それこそ本田さんの著書における「40代にできること」にもう一度戻れないか、いや、ひょっとすると「20代にできること」まで遡りゼロスタートを切れないか、と自分に掛け声をかけているのです。

理由は「気」をどう持つか次第で精神年齢の20-30年の差は容易にブレるからです。現代社会の急速な変化対応に「もうこの歳だからできない」という諦めではなく、「よし、やってやろうじゃないか」という挑戦者の意気込みを取り戻したいのです。

会社を経営しているので年次計画と3年間の中期計画は作っているのですが、3年計画が良い意味でも悪い意味でもさっぱりその通りにならないのです。理由はビジネス環境が急速に変化し、3年前に作ったその設定条件がほぼ無意味になり、何のための目標か意味をなさなくなることがしばしば発生したからです。

「すると、お前、目標ナシのその場しのぎの経営をするのか」と思われるでしょう。逆です。もっと長いスパンの会社や手持ち事業の将来像をもう少し抽象的な観点で捉えることでベクトルは外さないように心がけ、目標数値は年次計画に謳い込むことで中長期的な数字設定をやめたのです。

例えば書籍事業は2019年12月に始めたのですが、買収当時「書籍は電子化される、よってこの事業は3年で投下資本を回収する」と設定していたのです。あれから5年半たちましたが電子書籍化の大きな波は来ておらず、いまだに教科書卸事業は健在であります。

我々の住む現代はテクノロジーとの競争になっています。より便利で効率的になり、それが新たなトレンドになると誰も疑うことはありません。そんな中、最近あるアメリカの記事に接し、「あぁ、やっぱりこの業界も反動が押し寄せたな」と思ったのです。それはオンライン デート業界の売り上げが軒並み下がっていること。今やデートや結婚相手はマッチングアプリで探してもらうのが当たり前かもしれません。だけどコンピューター程進化していない人間様が「なんか違うよな!」と気がつき始めたのでしょう。

こうなると今のスタンダードが10年後にどうなっているかなど想像すらできないのです。絶対はあり得ないのだという前提に立つと5年、10年先の数値目標は意味がなくなるのです。

何歳であろうと大事なことは判断力と実行力をどれだけ維持できるか、です。私は即断即決に近い方だと思います。会社勤めの時、稟議というまどろっこしい仕組みに辟易とし、不動産事業に携わっていた際、上司からは「稟議は同意者に一人ずつ手で持って廻って同意のハンコを頂くものだ」と教えられ、挙句の果てに3人だけの特命係の際には稟議は後付けという世界になり最後は独立したので稟議書から解放されたのです。その際、思ったのは判断はその時々の環境により変わることはある。自分が頑なになり過ぎず、よりフレキシビリティを持ち、どんな話にも対応できるようにすることが重要だと思っています。

経営においては〇年に売り上げいくら、利益はいくらという細かい設定よりもっと大雑把でよいと思います。むしろその事業経営を通じて何をどれだけ改革し、自分たちが業界の中で如何にユニークで誰にも負けない存在感を出せるかということに注力した方がより良い結果が生まれると思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年7月11日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。