ウィーン国立歌劇場。今夜は、ヴェルディ「ドン・カルロ」。
ガランチャ様の、エボリ公女♪ ウィーンでのこの役、デビューらしい。




2017年秋、パリのオペラ座のシーズン冒頭に、「ドン・カルロス」が上演された。フランス語の5幕、めっちゃ力入れていて、ヨナス・カウフマン、リュドヴィック・テジエ、ソニア・ヨンチョバ、そしてエリナ・ガランチャという、今ではもう想像もできないような、奇跡の配役だった。
みんな素晴らしかったけど、カウフマンすら食っちゃいそうなく極上以上のガランチャ様のエボリ公女に感動興奮した。

※ 2017年10月パリ国立オペラ座「ドン・カルロス」の様子はこちらです。
あの夜を懐かしく思い出しながら、また、ガランチャのエボリを、今度はイタリア語で聴ける、と、ワクワク。
指揮は、フィリップ・ジョルダン。パリオペラ座のあの夜も、ジョルダンだったね。もうすぐウィーンを去ってパリに戻ってくる。

始まってまもなく、ガランチャ様の登場。おぉ、革ジャン姿もお美しい〜。いつも思うけど、この奇跡のメゾソプラノ、お顔がそんじょそこらの女優顔負けの上、頭が少々大きいので舞台映えする。そして、声に負けず劣らず素晴らしい、抜群の表情演技。彼女が舞台にいるだけで、自然に視線が引き寄せられる。歌も演技も素晴らしくて、最高♪ 特に、二つのアリア、ブラ〜〜〜〜〜〜〜ヴァ!

エリザベットのニコル・カー。こういう、ちょっと寂しげな役、合う。昔、「カルメン」のミカエラもよかった。品よく美しく、優等生な声。
ドン・カルロのジョシュア・ゲレーロ、ロドリーゴのエティエンヌ・デュプイ、そろってまあまあ。ヴォリューム感あってそれなりにドラマティック。でもね、パリの「ドン・カルロス」が、カウフマン&テジエというスーパースターコンビだったので、比べちゃうとどうしても不利だよね。
フィリぺ2世は、つい最近、パリの「清教徒」で見事なサー・ジョルジオを歌い上げた、ロベルト・タリアヴィーニ。今宵も、臨場感と感情豊かな素晴らしいバスを聴かせてくれる。

演出(舞台セット、衣装も)は、キリル・セレブレンニコフ。
時代は現代で、場所は、本来のドンカルロの舞台である16世紀の衣装のアトリエ、なのかな?
美術史美術館にたくさん飾られている、あの当時の絵から抜け出てきたようなコスチュームを着せられた主要四人の傀儡みたいなのが登場し、歌手たちの分身みたいな感じで、歌手に絡んだり演技したり。ハプスブルクの本拠地ウィーンのオペラハウスで、スペインハプスブルクの雰囲気を殺伐とした現在に融合させていて、それなりに面白い。ただ、昨夜同様、お金かからない演出&セット&衣装ね、、。ルパージュみたいなダイナミックで華やかな演出、もう難しいのでしょうね。
ひどい演出が増えている昨今、ひどくない、というだけでも、ありがたい。

ジョルダンによるオーケストラ、曲の構成がはっきりしていてキレもあり、物語をちゃんと語っていて、なかなかよい。でも、「ドン・カルロ」、長いというか余分な部分、多いよね…。ワーグナーなら、長ければ長いほど嬉しいけど。
ガランチャ様の圧巻の歌声だけで大満足♪
そして彼女に興奮して、お腹ぺこぺこ。
夜更けの、デューラー野うさぎソーセージ屋台は、オペラ帰りの優雅な人たちが列をなし、昼間の列とはちょっと雰囲気違う。




編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々6」2025年3月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々6」をご覧ください。






