第26回参議院議員通常選挙(2025年7月20日投票)は、自民・公明の与党にとって、改選過半数はおろか、非改選議席を加えても過半数を維持できないという厳しい結果となった。

NHKより
野党第一党である立憲民主党は、社民党と共産党の議席減を吸収した程度にとどまった。32ある一人区では、前回すべてに候補を立てていた共産党が今回は6選挙区で候補を取り下げ、これらの選挙区で参政党が候補を立てた結果、自民党候補の票を分散させ、自民党は14勝18敗と惨敗を喫した。ただし、和歌山では自民系の無所属候補が当選している。
公明党にとっても結果は厳しかった。選挙区では前回と同様に7選挙区に候補者を擁立したが、埼玉・神奈川・愛知で惜敗し、いずれも参政党候補の当選によってはじき出される形となった。
比例区では、公明党は改選議席7人を目標としていたが、3年前の選挙よりさらに後退し、4人にとどまった。
比例区の政党別得票率を前回と比較すると、保守系ポピュリストである参政党が大躍進を遂げ、極右とも言える日本保守党も比例で2議席を獲得した。国民民主党は保守色を強め、自公両党の票を吸収したことがうかがえる。
野党では、比例区で国民民主党、参政党、立憲民主党の三党がそれぞれほぼ同数の票を得て、7議席ずつを獲得した。立憲民主党は、与党の不人気にもかかわらず、議席数は横ばいにとどまった。共産党は7→4→3と議席数を減らし続けており、社民党はラサール石井の擁立が奏功し、かろうじて議席を維持した。
ただし、自公両党が参議院で過半数を失ったといっても、足りないのは3議席にすぎない。和歌山で世耕氏の支援を受けた候補が当選しており、残り2議席の扱いが焦点である。絶対に野党とは組めない日本保守党が2人おり、参政党も14人の議席を有しているため、衆議院ほど与党が苦労する状況ではない。しかし、三年後の参院選では、三年前に自民が大勝した反動で激減が避けられず、影響は長く残ると見られる。

参議院選挙各特議席
NHKより
自公の敗因については、石破内閣の発足当初から続く不人気が大きく影響している。発足直後の解散総選挙での敗北はすでに周知のとおりである。その後も内閣支持率(NHK月例調査)は、鬼門とされた2月の日米首脳会談を無難に乗り切った際の44%が最高であった。
外交を得意としない石破首相は、歴代首相のように外交で支持率を稼ぐことができなかった。特にサミットなどの多国間会議で孤立する様子が報道され、トランプ大統領との関税交渉では無為無策という印象を与えた。
内政では、食料品価格の高騰が不人気の一因となった。コメの供給不足を輸入米で補う選択を避けたことで、品薄と価格高騰が発生した。小泉進次郎氏が農水相に就任し、公明党の高橋みつお議員の提案に基づく備蓄米の放出が奏功し、一時的には価格上昇は抑えられたが、政権支持率の回復には至らなかった。
WTOの関税引き下げ交渉において、日本はミニマムアクセスの無税枠を設けたものの、これは加工用などの用途に限定され、それ以外のコメには1kgあたり141円、協定締結時で国際価格の700%、現在でも400%の高関税が課されており、実質的な輸入禁止状態である。
価格急騰時に輸入方針を示せなかったことが、トランプ大統領との関税交渉における日本側の柔軟性欠如として映った。米の自給率100%を守るという姿勢は、食料安全保障の観点から理解はされるが、柔軟性のなさが過大なコストを生んだ。
このような状況で、食料品の値上がりへの対策としては、給付金または減税が選択肢となる。公明党は従来より軽減税率の拡大を主張していたが、実現時期は消費税率の見直しに合わせるという前提が常識であった。しかし、前倒しの可能性も模索されていた。野党もまた軽減税率の恒久化・臨時化の別なく実施を求めていたが、最速でも来年度からの実施が現実的とされた。
石破首相は当初、減税や給付金に否定的な立場であったが、6月13日に突如、参院選公約として「全国民一律2万円の現金給付」、18歳以下の子どもおよび住民税非課税世帯には1人あたり4万円を加算して支給すると発表した。
給付金は迅速であり、年内支給が可能で、低所得者層に厚く分配される点で妥当ではあったが、それまでバラマキを批判していた政権の方針転換は場当たり的であるとの印象を与えた。野党からは「税を取って配るより、最初から減税すべきだ」と揶揄された。
こうした給付金や減税策は、海外ではより迅速に実施されており、その背景にはマイナンバーカードと銀行口座の紐付けやインボイス制度の厳格運用がある。これらに関しては公明党は前向きであるが、野党の反対により進展が遅れており、与党への批判に繋がっている。
この1年間で急速に拡大した不満が、外国人労働者や移民、インバウンド観光客の急増に対するものである。欧米に比べれば、日本における外国人の割合は3%程度と少なく、英仏独では15%、米国では不法移民を含めて同程度となっている。帰化者も年間1万人以下であり、難民の扱いに困るような事例もほとんど存在しない。
制度上も、国民健康保険では外国人労働者が若年層中心で保険料の負担以上の医療費を使用していない実態があるが、制度の隙間を突いた悪用事例が反感を買った。日本の制度は性善説に基づいて設計されており、特段の優遇措置があるわけではない。
外国人観光客に関しても、京都市バスに大きな荷物を持ち込むなどの不満はあるものの、コロナ禍で観光客が減少した間に京都市は対策を講じる時間があった。主要寺院が事前予約制を導入すれば多くの問題は解決可能である。
欧州でもオーバーツーリズムは問題となっているが、主な課題は住宅不足であり、日本の観光地ではそのような問題はほとんどない。外国人による不動産取得や投資も、具体的に問題が起きなければ経済上の問題にはならない。
観光客は日本経済に莫大な利益をもたらしているが、「観光に頼るべきではない」あるいは「米不足は外国人が食べるからだ」といった感情的な批判も一部には見られる。
また、「外免(外国の自動車免許)切り替え」に関しても、公明党が国交省を担当しているため中国人優遇の改正が行われたとのデマが流されたが、自動車免許の権限は警察にあり、実際にはそのような事故の原因になった事実もない。






