出口里佐です。
酷暑の東京を離れ、涼やかな軽井沢へ。このたび訪れたのは、年に数回の軽井沢滞在で必ず足を運ぶ、私にとって“心のレストラン”とも言える〈エルミタージュ・ドゥ・タムラ〉。10年以上にわたり通い続けている、大切な場所です。

エルミタージュ・ドゥ・タムラの正面入口に続く小道
予約は夕刻の17時。夫とは現地で待ち合わせ、私はひと足先に軽井沢レイクガーデンを散策してから、タクシーでレストランへ向かいました。ちょうどバラのシーズンが終わったばかりでしたが、初夏の緑に包まれて静かに歩く時間は、何よりの贅沢です。

7月中旬の軽井沢レイクガーデン
タクシーの運転手さんからは、軽井沢の最新グルメ情報を教えていただいたり、かつてエルミタージュ・ドゥ・タムラで修業した料理人のお店まで案内していただいたりと、短い移動時間もまた旅の楽しみ。食を愛する者同士、初対面でも自然と会話が弾むものです。
この季節の最大の楽しみは、スペシャリテの「白桃の冷製スープ」。7月に訪れるなら、絶対に逃したくない逸品です。
この日のコースは、季節の恵みを余すことなく表現したラインナップ。
アミューズ
塩水ウニとズッキーニのフラン、無農薬人参のコルネ、フォアグラのサンド バナナとパッションフルーツの香り

塩水ウニが潜む、ズッキーニのフラン

無農薬人参のコルネ

フォアグラのサンド、バナナとパッションフルーツ
前菜
炭火焼きのうなぎと茄子のマリネ

鰻の炭火焼の下には、茄子のマリネ
オプション
岩牡蠣のヴィネグレット添え――エシャロットの酸味が、濃厚な牡蠣の甘みと絶妙に調和

大きな岩牡蠣とエシャロットのヴィネグレットソース
温野菜
無農薬の新玉ねぎをシンプルに

新玉ねぎのムース
魚料理
和歌山県産の白甘鯛をポワレに。新ニンニクがやさしく香る

白甘鯛のポワレ、新ニンニクのソース、黒トリュフ
お口直し
スペシャリテ「白桃の冷製スープ」
凍らせた白桃を器に見立て、その中に桃のスープを注ぎ込む。スープを飲み終えたあと、時間とともに果肉がとろけ始め、デザートの頃合いにふたたびいただけるという趣向。美味しさと演出の妙が光ります。

白桃の冷製スープ。エルミタージュ・ドゥ・タムラの夏のスペシャリテ。

蓋を開けると、くり抜いた中には、ほんのりと甘い桃のスープ。桃は凍らせています。だんだんと溶けるのを待ちながら、メインの肉料理に進みます。
肉料理
ブルターニュ産仔牛のロースト(もしくはアイルランド産仔羊のローストを選択)

ブルターニュ産仔牛のロースト。ジュのソース。
デザート
生姜のパンナコッタ、ジャスミンティーかき氷、メロン

生姜のパンナコッタのうえに、ジャスミン茶のかき氷、丸くくり抜いたメロンが頭をのぞかせています。
信州産リュバーブのムースにスイカ、バラの香るスープを添えて

バラのスープに浮かぶ、スイカの台のうえにリュバーブのムース。リュバーブで取り囲んで、バラの花びらと、花びら状のリュバーブの茎がトッピング。
チーズプレート
この日はすべて海外産。バローロの搾りかすをまとわせたイタリア産チーズと、フランス産カマンベールチーズなど。蜂蜜を添えていただきました。軽井沢近郊の長野産チーズも楽しみにしていたのですが、この日はお目にかかれず。

奥から逆時計回りに、イタリアのバローロ搾りかすの香りを移したチーズ、AOPカマンベール、ウィスキーの香りのチーズ
ミニャルディーズ
ブルーベリータルト、トリュフショコラ

ミニャルディーズは、トリュフショコラとブルーベリータルト
フレッシュハーブティー
コースの余韻を静かに締めくくる一杯
美食とホスピタリティが織りなす時間
スタッフの皆さんの接客は洗練されながらも温かく、心地よい距離感でゲストをもてなしてくれます。前回訪問時と同じ料理が重ならないよう、メニューにさりげない変更を加えてくださった心配りにも感動しました。
古民家をリノベーションした一軒家のレストランは、大きなお屋敷に招かれたような気分。全面ガラス張りのダイニングから眺める庭の緑は、昼と夜とでまったく異なる表情を見せてくれます。陽光にきらめく植物の姿も、日が落ちてライトアップされた幻想的な風景も、それぞれが美食の時間を引き立てます。

エルミタージュ・ドゥ・タムラの店内。天井近くまでのガラス張りで、お庭の緑に癒されます。
おわりに
桃の季節は格別ですが、それ以外の時期でも、この店ならではの味わいと静けさが、必ず心を満たしてくれます。東京から新幹線でわずか1時間。軽井沢の静かな森の中に佇む名店〈エルミタージュ・ドゥ・タムラ〉で、特別なひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
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