市場支配的地位の乱用
「ウインドウズ10のサポートがついに終了。今すぐ対策を」という新聞の全ページカラー広告(7月24日)を見て「一体、なんのことか」と驚きました。「そのまま利用していると、セキュリティーリスクが高くなる。ソフトウエアのサポートがされない。OS(基本ソフト)のアップデートができない」と、脅迫調の文言が並んでいます。ウインドウズ10の終了に初めて気が付きました。
以前からパソコンやスマホ業界の消費者に新機種への買い替えを促す商法に疑念を感じていましたので「またか」の思いです。
私のパソコンはウインドウズ10を使っています。新聞広告では、NECの担当者が「10のサポート終了→リスクが生じる可能性→新機種をお薦め。今すぐ対策を」と、脅迫調です。広告では「ウインドウズ11搭載の最新パソコンへの買い替えも選択肢」といい、新機種が紹介されています。私も買い替えなければならないのかと、思いました。
仕事にもパソコンを使っているユーザーやパソコンおたくならともかく、一般的な消費者、高齢者などは、パソコンについて限られた知識しかありません。「機種によっては10から11に切り替えられる」とか、「古い機種でも操作すれば、一年間は10のサポートを続けられる」との説明も広告にはありません。使用中のOSが終了するので、11搭載の新機種に交換しない危ない目に合うと印象づける内容です。
Microsoft HPより
バッテリー交換も個人では無理
バッテリー交換でも、同じことがいえます。ノートパソコンでは「バッテリーの内装型」が主流で、寿命が尽きたバッテリーをユーザー個人で交換するのは無理です。メーカーに配送してバッテリーを交換し、送り返してもらう。その手間や配送料のコストを考えると、新機種を買ったほうが簡単と思わせる。スマホも同様で、蓋を自分で開け、バッテリーを交換することはできません。
わたしはデジタル機器については素人です。そこで、その道はプロのChatGPTにこの問題を質問してみました。「OSの終了、バッテリーの寿命が切れるタイミングで新機種への買い替えに誘導する。基本ソフト(OS)は10年程度で更新される。そうしたビジネスモデルを構築してきた」、「業界では計画的陳腐化と呼ばれています。旧機種をだんだん使いづらくしているのです」との回答です。
「独占禁止法との関係はどうなのですか」の質問には、Chatさんは「市場支配的地位の乱用の疑いはあります。消費者に不当な不利益を強い、買い替えを事実上、強要する行為は違反です。メーカー側にも理屈があることはあるので、不当性を可視化することが簡単ではないようです」と答えました。
EU当局は積極的に対応
Chatさんはさらに「EUはこの問題に熱心で、ユーザーが自分でバッテリー交換できるスマホを義務づける法律を作るそうです。囲い込み型の販売モデルには警告を発しています」とも言っています。日本はこうした問題に対し、腰が重いようです。
新聞側にも問題がある私は思います。編集特集のようなページを掲載し、中身は古いOSの終了に伴い、新機種、新製品を買わせるよう誘導する広告特集なのです。説明も不十分です。Chatさんは「なぜまだ使えるものを、なぜ買い替えさせられるのかという素朴な疑問をジャーナリズムは拾い上げるべきです。企業に都合の良い『当たり前』をう疑う視点が新聞やメディアに求められています」と。全く同感です。
編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2025年7月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。