金魚と古い街並みがある町・大和郡山


奈良県の郡山駅に来ました。福島県の郡山駅と同名ですが、町の名前は重複を避けて大和郡山市となっています。町の中心はJRの方ではなく、20分ほど近鉄郡山駅周辺にあります。

大和郡山市は郡山城のもとで栄えた城下町です。羽柴秀長(のちの豊臣秀長)のもとで発展を遂げ一時は大和国の中心地となりました。秀長は2026年の大河ドラマ「豊臣兄弟!」で主人公となっていますので、ここ大和郡山はこれから脚光を浴びることになると思います。

外堀通り。

今回はJR郡山駅から近鉄郡山駅方面に歩き、戻るルートで小一時間ほど歩きました。JR駅から5分ほどのところにある外堀通りは堀の跡に整備された遊歩道。城からはまだ相当離れていますが、城はそれだけ広い敷地をもっていたということになり、大和郡山城の当時の権力の強さが窺い知れます。

笑ってる…?

古い街並みが広がる町人地の端に鎮座する源九郎稲荷。豊臣秀長が郡山城の鎮守として建てたと由緒ある神社です。源九郎とはこの神社を護る狐の名なのですが、巻物をくわえるその顔がどこか笑っているように見えるのが特徴とされています。

源九郎狐は源頼朝と静御前が追っ手から逃れるのを援けた狐とされており、その後秀長の夢枕に現れて神社の建立を指南したとされていますが、両者は時代が大きく時代が離れていて関係性は不明です。

近鉄駅に近づいていくにつれて、このような古い街並みを目にするようになります。豊臣秀長は、城下の東南に町人を集めて自治権と独占商業権を与えます。これを「箱本十三町」と呼び、江戸時代まで続く郡山の経済発展の源となりました。

ちなみに十三町とは綿町、紺屋町 、本町、今井町 、奈良町 、堺町 、藺町 、柳町 、茶町 、豆腐町 、魚塩町 、材木町 、雑穀町。例えば豆腐町には豆腐の専売権を与え、それ以外の町で豆腐を売ることは禁止されました。

こちらは紺屋町の一角。道路の真ん中に今も水路が残ります。かつてはこの川で染めた布や糸をさらしていたといいます。

紺屋町の一角には箱本館があって、藍染体験のできる施設のほか、郷土の歴史を伝える資料が展示されています。1760年代の建物で大和郡山の町家の中では最も古いものです。

訪ねたのが6月中旬だったということもあって軒先には藍染のテルテル坊主が飾られていました。

藍染で飾られた水槽の中で金魚が泳いでいます。大和郡山は全国的に有名な金魚の産地として知られています。1724年に柳澤吉里侯が甲斐国から大和郡山に金魚養殖の技術を持ち込んだことが始まりで、幕末には藩士の副業として、明治維新後は藩士や農家の副業として養殖が盛んにおこなわれるようになったそうです。

民家の軒先にも金魚。

金魚は街のシンボル的存在で、いたるところに金魚の装飾が施されています。

こちらは大和郡山のお土産品店ですが、左手にあるのはなんと金魚すくい場。

縁日でもお祭りでもない普通の日にこのように金魚すくいを楽しむことができます。なお、大和郡山では毎年金魚すくいの全国大会が行われ、全国の金魚すくいの猛者が腕を競い合います。今年は2025年8月24日に開催予定だそうです。

大正期に建てられた小児科医院。

町を歩けば酒蔵跡やハイカラな小児科医院の跡など数々の歴史ある建築に出会える大和郡山。来年は大河ドラマも放映されて観光客が増えて大いに盛り上がると思います。ブームを先取りして街歩きを楽しむんでみてはいかがでしょうか。


編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2025年7月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。