出口里佐です。

青森ねぶた祭
winhorse/iStock
夏の青森に、また足を運びました。東京と変わらぬ気温ながら、港町らしく海風が新町通りのアーケードをすり抜け、バスを待つひとときにひんやりとした涼感を運んでくれます。ちょうどねぶた祭りの季節。夜の祭りを前に、日中の青森をどう楽しむか。今回は、食を中心にご案内します。
朝の滋味:帆立で始まる青森の一日

青森郷土料理 帆立貝焼き味噌 iStock/GI15702993
青森を訪れたら、まず味わいたいのが帆立。地元のホテルの朝食ビュッフェには、必ずといっていいほど「帆立貝焼き味噌」が並びます。大ぶりな貝殻に帆立と味噌、そして溶き卵を合わせて加熱した、まろやかで滋味深い逸品です。朝のひと皿として、ぜひお試しを。
もうひとつの名物は「のっけ丼」。青森魚菜センター(青森駅徒歩圏)では、食券を購入し、好きな具材を選んで自分だけの海鮮丼をつくる楽しみがあります。帆立にマグロ、ウニ、イクラ。早朝7時から営業しており、朝食や早めの昼食にも最適です。
▶︎ のっけ丼公式サイト
お寿司屋さんで、ランチやねぶたの前の早めの夕飯を食べるのもよいでしょう。一八寿しは、青森駅から徒歩7分。お寿司、海鮮丼はもちろん、焼き帆立、ほや酢など、ひと手間かけた料理もいただけます。

一八寿しの海鮮丼。肉厚の帆立、数の子、ウニ、シャコ海老、まぐろ、イカなど。

お寿司屋さんならではの、肉厚の、ほや酢。
果実の恵み:りんごが織りなす甘味たち

iStock/BirdShutterB
青森といえば、やはりりんご。フレッシュな果実のみならず、和菓子やアップルパイ、ジュース、シードルワインなど、その加工品も秀逸です。
老舗・おきな屋(青森駅前)では、りんごの焼菓子に加え、かぼちゃの和菓子「まんどろ」も人気。奥のカフェスペースでは、りんごのマドレーヌとコーヒーのセット(約500円)でほっと一息。旅の途中の癒しになります。
▶︎ おきな屋公式サイト
海沿いにあるA-FACTORYは、シードルやりんごジュースの品揃えが豊富。こぎん刺しや津軽塗などの工芸品も並び、旅のお土産選びにぴったりの場所です。ハンバーガーが人気の「OCEAN’S DINER」、2階のクレープ店「Galetteria Da Sasino」も注目。明るく開放感あふれる空間で、青森らしい食体験が楽しめます。
▶︎ A-FACTORY公式サイト

A-Factory内のOCEAN’S DINER。青森県産のグラスフェッドの牛肉使用のハンバーガーが人気。
お土産は、青森の“旨味”を
帰路につく前に立ち寄った青森空港では、心に残る品々を見つけました。
ほたて飯の素(山神):2合のお米と炊くだけで、本格的な帆立ご飯に。自社養殖・加工の徹底ぶりに、味の説得力を感じます。

ほたて飯の素。二合のお米と炊くだけ。本当に美味しかったです。

実際に炊いてみました。白ごまとネギをトッピング。リピート決定です。
昭和の塩辛(赤羽屋):熟成された濃厚な旨味。解凍してすぐ、ご飯のお供に。

熟成した旨味が感じられる、今までにない味わいの塩辛!!
胡麻新月(マルカワ渋川せんべい):素朴な黒ごま煎餅。郷愁を誘う優しい味。

黒ごまが香ばしい、素朴な味わいのせんべい。耳だけのはいつも売り切れるほどの人気。
ピーカンナッツせんべい(小山せんべい店):香ばしく、ほんのり甘みも。ピスタチオ味も隠れた逸品です。

手焼き津軽路せんべい、ピーカンナッツ。先に写真を撮るのを忘れるほど、美味しいです。
いずれも青森空港の売店で購入可能。ほたて飯の素と塩辛は、1階のチェックインカウンター前の、青森漁連、それ以外は、2階のアスパム物産。
空港内の「ライアン」では、鯵ヶ沢町の長谷川自然牧場の豚肉を使ったポークジンジャーやポークステーキもおすすめ。旅の最後の食事に、しっかりとした満足感を残してくれます。

長谷川自然牧場の豚肉使用のポークジンジャー。絶品です。
昼の楽しみ:アートと歴史と温泉と

青森県立美術館
現在開催中の棟方志功展、佐野ぬい展は必見。特に佐野ぬいの「青」を主題にした抽象画は、観る者の心を洗い流すような爽快さを湛えています。ミュージアムカフェの「ブルーハーブカルピス」も展覧会とリンクした素敵な趣向です。

棟方志功展より

佐野ぬい展より
美術館のすぐ近く。日差しが強い日は無理せず、秋の訪問もおすすめ。

三内丸山遺跡。広いので、ゆっくり歩くだけでもエクササイズになります。日陰がないので、暑い時よりも涼しくなってからがおすすめです。
駅ビル「LAVINA」の中華料理店「吉慶」で供される栗ソフトクリームには、遺跡にちなんだ埴輪クッキーが添えられ、青森の歴史に遊び心で触れられます。

青森駅ビル、ラヴィナ1階吉慶の栗ソフトクリームに添えられた縄文クッキー。手作りなので、それぞれ顔が違うそうです。
八甲田山の森に抱かれた、歴史ある湯治場。混浴の「千人風呂」は有名ですが、湯浴み着レンタルもあるので安心です。隣接する八甲田ホテルでは、地元食材を用いたフランス料理も堪能できます。

田舎館村の田んぼアート。こちらは、2年前、2023年8月22日。テーマは、棟方志功とフェルメールの有名な作品から。
色とりどりの稲で描かれる巨大なアートは、まさに圧巻。8月中旬までが見ごろ。アクセスは不便ながら、弘前からの小旅行として価値のある体験です。復路は、趣きのある弘南鉄道を利用するのがおすすめ。
ねぶたの余韻のなかで
「ねぶたが終わると、青森に秋が来る」と地元では語られます。確かに、夏の喧騒の後に訪れる静けさの中でこそ、青森の本当の魅力が味わえるのかもしれません。祭りの余韻に浸りつつ、ぜひもう一度、ゆっくりとこの地を訪れてみてください。






