S&P 500は第二解放の日を号砲に調整

S&P 500は決算が多い週をメガテックの好決算で乗り切ったと思いきや、最後の第二解放の日で思いっきり売られた。

もちろん第二解放の日とは言っても通商関連のヘッドラインとはもはや関係ない。四半期国債発行計画もFOMCもゴルディロックス・イベントとはならず、9月利下げ期待も盛り上がらなかったことで水曜7/30に指数は一度大きく売り込まれた。

水曜7/30引け後のMSFTとMETAがダブルで好決算を出したところで時間外から指数はすぐに全戻し以上に上昇したが、木曜7/31が寄り付くと一転して時間外よりも低い寄付きからの寄り天となり、終日売り込まれて大陰線となった。このように寄り天の陰線が多かったのがこの週の特徴となる。

木曜引け後決算組はアップルが堅調アマゾンが滑り気味だったが、金曜8/1はそれよりも雇用統計が滑ったことで大荒れになった。では9月利下げ観測が復活してゴルディロックスに移行するかというとISMもまとめて滑ったため、ただの景気減速トレードが続いた。

もっともそれでも金曜8/1は際どいところで1日2%下げを回避した。それまでは極端なまでの低リアライズドVolが続いており、金曜はそれを打ち破るかに見えたものの、1日2%下げが演出されなかったことで、低Volレジームが完全に終わったとまでは言えない。それもあってかその後時間外は反発している。

GSのシステマティック勢ポジションは、既にかなり膨らんでいるがまだマックスではないので買いが続くとしている。

DBのシステマティック勢ポジショニングも、直角で上がってきて天井まであと一歩というところまで来ている。CTAは94パーセンタイルまで膨らんできた。一方、裁量勢は売りに回っている。

野村のVolコントロールのポジション推計も同様のチャートを描く。一方、珍しく流れてきたシタデルはVolコントロールの復元がまだ道半ばと見る。

JPMによると個人投資家のオプション取引は再び盛り上がった。GSも投機的トレードの盛り上がりを指摘する。コンセンサス・ショートは焼かれた。ただ肉眼ではそれ以上コンセンサス・ショートを追い掛ける動きは盛り上がっていないようにも見える。そんなのよりメガテックを追いかけた方が分かりやすいではないか。

BofAのディーラーガンマは6200台に山があり、これはサポートになると思われるし、現に金曜の下落を受け止めたと思われる。上値の山は消えてしまっており、6400より上はネガティブガンマが続く。殺到するコール買いを相対で取らされていたということか。6200台の山を越えて6100まで割り込むと再びネガティブガンマ域に入るため、レジームが変わりやすいだろう。

決算自体はメガテックを中心にかなりよかったのだが、そこまで先取りされていたせいか好決算も利食いのきっかけになりやすかった。それでも、今後マクロネタで振り回される場面はあっても、「決算はよかった」という記憶を消すほどではない。

NAAIMは生意気にも調整を先取りした。これはDBの裁量勢のポジション縮小とシンクロしており、8/1の下落がそれなりの数の市場参加者にとって予想通り、或いは期待通りのイベントであったことを示唆する。それが「8月発表の雇用統計」という昨年の前例もある縁起の悪いイベントでそれ以上パニックが広がらなかった背景であったと思われる。その構図なら、仮に続落するとしたら何かしらの浅い底打ちと思わせるブル・トラップが構築されるはずだ。

一方、シーズナリティは8月に入ったことで一気に最良から最悪に転ずる。先週の目まぐるしいニュースよりもとにかく「8/1より前に一旦売れ」がワークしており、前回の記事でメガテックは滑らないだろうとした上で「もし8/1を前に既に大幅に上昇していたら8/1を前に撤収する選択肢も出てくるだろう」と述べたのが結果的にかなり高い精度の予言になった。自社株買いブラックアウトも大半が明けるものの、シーズナリティは悪化するため、売りたい参加者にとっては派手に売れる時間帯に入る。

7月に盛り上がったインサイダーの売りは自社決算を見たのか一気に止んでいる。もっとも「買い」に注目して逆の見方をする記事もある

テクニカル。週足サポートの6280がブレイクされたことで週足は調整入りを示唆する。最高値の6427は週足レジスタンスとなる。5月以降サポートとしてワークしてきた日足の25SMAががっつりブレイクされたことも、5月以降で初めての本格調整に入ることを示唆する。

6200はチャート的には6280の一個前のサポートであり、そこで跳ね返ったことで何となく水平サポートが出来たようにも見える。しかし上昇トレンドラインではなく水平サポートに頼る時点でそれはチャレンジされやすくなっており、例えばもししばらく6300近辺で浮遊した後にもう一回6200を貫通した場合、日足は大きなヘッドアンドショルダーを形成することになる。6300近辺での浮遊は逃げ場となるだろう。

下値目安としては50SMAの6130がまず目に付くが、その水準はガンマの山を滑り降りる最中なので上手い具合にヘッドラインが出ないと止まらない可能性が高く、その先は値幅より日柄で、もしネガティブガンマ域での滞留が続くとすれば8月Op Exで底打ちしやすいだろう。

S&P 500で見ると2月の天井を易々と越えてきているが、メガテックの影響が薄まるS&P 500等ウェイト指数やダウで見ると綺麗な水平ダブルトップとなっており、AIバブルの恩恵がないセクター群は7月高値をかなり強く意識することになるだろう。


編集部より:この記事は、個人投資家Shen氏のブログ「炭鉱のカナリア、炭鉱の龍」2025年8月4日の記事を転載させていただきました。