
S&P 500は前の週の混乱からあっさり反発した。先週の記事で下値余地についてあれこれ議論したのは滑稽なまでの徒労になったのである。
雇用統計の下落を受けてウォール街の大手証券勢はこぞって短期的な10%や15%の調整の可能性を指摘し始めた。しかし現実には先週の下げ1日2%の下げ幅には届かなかったことで、それ以上あちこちのトリガーを引くこともなく、週末を通過するとすっかり市場参加者は冷静になってしまい月曜8/4は反発が優勢になった。
火曜8/5はISM非製造業も悪かったこともあり再び反落となったが、水曜8/6はアップルが米国内での追加投資と引き換えに関税回避を図るとのヘッドラインでアップルがブチ上がり、更に木曜8/7に長らく残尿感を残してきた半導体関税が発表され、米国内での生産を約束すれば適用されないと分かると半導体もブチ上がった。
もっとも木曜8/7自体は利食い優勢で寄り天となったが、それも更に金曜8/8に否定されるなど日足では鯨幕となった。ナスダックは先々週の週足が上ヒゲ陰線となっていたが、連日そのヒゲ先を攻め続けた。



GS CTAは既にポジションが重いということもあり、8/1の調整を経ていずれのシナリオでも一旦は売りに回る。


BofAと、最近になって流れてきたシタデルもだいたい似たような分析となっている。

珍しく流れてきたUBSのCTAポジショニングもここ5年のピーク近辺まで上がって来た。米株のエクスポージャーも92パーセンタイルまで上昇している。


代わりに長らく大人しかったDBのリスクパリティが7月末になって突然買いに回っている。BofAのリスクパリティモデルも同様に債券を売って株を買っているため、これは信用できる推測と思われる。最も足が遅いこれらのモデルでも4月の高Volレジームが抜け始めたか。ついこの前の記事で「60:40ポートフォリオが疑問視される中、60:40で上を買って下を売るだけのこの戦略はもう流行らないだろう」としていたのは油断だったということになる。
思えば2018年VIXショックの頃に本ブログが始まった当初からメインテーマの一つが「リスクパリティの罵倒」であり、リスクパリティが買ったので下がる、リスクパリティが売ったので上がる、と連呼していたのであり、今はすっかりそれどころではなくなったのだが、せっかくなのでやはりリスクパリティが買ったからにはクラッシュは遠くないという判断を繰り返すこととする。

バリュエーションは2021年並みに伸びてきたが、メガテック主導なので等ウェイト指数との差が拡大している。

NAAIMは再び急速に楽観化した。先週が雇用統計ショックから無理な角度で反発したのは、やはり「NAAIMが生意気にも調整を先取りした」からではないか。そう考えると総楽観へのシフトによって「雇用統計の下落を期待していた」機関投資家の買戻しは済んでいる可能性が高い。そういう意味でNAAIMだけ見ると「ブルトラップを作った」ようにも見えるが、果たして。

インサイダーは売り止めが続く。

テクニカル。S&P 500ベースでは6427の週足レジスタンスが健在であるが、ナスダックは週足上ヒゲ陰線の高値を利食いもこなしながら数回攻めた上で僅差ながら突破しているため、ショートもじり高に燃やされるリスクが高い。
下値では引続き、過去最高値を更新しないまま6200を割り込んだら日足ヘッドアンドショルダーが形成される。いずれにしろ6300近辺での一旦の浮遊は想定していたのだが、半導体関税が上げ燃料を作ったのは意外であった。
今週はCPI、PPI、小売りとマクロの週であり、よければアンチ・ゴルディロックス気味、悪ければ雇用統計を蒸し返しやすくなるため、イベントを跨ぐのはオッズが悪いように見えるし、またそう見えるからイベント前にはヘッジが出る可能性もあるものの、指標がない時間帯はじり高が続きそうな雰囲気である。
イベント自体も、1日2%以上の下落を招いたら続落トリガーを引く可能性が高いが、そうでなければ――雇用統計ですらそうだったように――多少の下げは買戻しのきっかけになりやすそうに見える。

メガテックに上げが集中するのは全くリーズナブルであるが、一般的にアップルの急騰は相場のかなり後半に見られることが多い現象であるため、腰を据えた買いについては引続き雇用統計後にイメージしていたような調整を待ちたいところ。上方手当て不足を狩るような上昇の試みが続くようなら、ポジションが綺麗になる金曜8/17のOp Exが転換点となりやすいのではないか。
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編集部より:この記事は、個人投資家Shen氏のブログ「炭鉱のカナリア、炭鉱の龍」2025年8月11日の記事を転載させていただきました。






