40代からの人生はコスパより寿命対効果で考える

黒坂岳央です。

近年はコスパやタイパが当たり前の新常識として定着している。だが、40代を迎えた人間にとって、本当に最適なのは「寿命対効果」という視点ではないだろうか?

寿命対効果とは筆者が考えた造語だが、自分の人生残り時間と健康寿命から逆算し、「限られた時間をどのように使えば最も価値が高いか」を評価する考え方と定義したい。

特に40代以降の中年からはコスパより寿命対効果が重要だと考える。なぜだろうか?

具体的にどのようなものがあるだろうか?

AaronAmat/iStock

1. 運動

運動の健康効果は、すでに多くの人が知るところとなっており今さら大規模統計データやエビデンスを出すまでもないだろう。

若い頃は「運動は大事」と言われてもほとんどの場合はダイエットとしての意味合いで解釈されがちだ。そしてコスパを感じにくい運動は後回しにされがちである。しかし、40代になると運動は健康を維持し、将来の健康寿命を延長させる重要度が高い活動という捉え方に変化する。

筆者は昔から運動が大嫌いだったが、毎日ウォーキングだけはしていた。40代からは心を入れ替えてパーソナルジムに通って筋トレをし、毎日エアロバイクとウォーキングをしている。運動には1時間以上投資する日々を送っている。

これは運動が寿命対効果が非常に高い活動と理解しているからだ。仮にずっと運動しなければ、生活習慣病になったり可動域が減少し、日常生活でも不便を感じることが増えていくだろう。将来の寝たきりリスクも増大する。

短期的に見ても体力が増大し、疲れにくくなれば仕事のパフォーマンスにもプラスの影響がある。毎日の運動習慣で体型、体重は高校生の頃とほとんど同じをキープできており、旅行へ行っても1日2万歩くらいなら歩く。だから中高年にとっての運動は実はコスパもいい。

若い内はコスパが悪いと感じる運動だが、40代以降は寿命対効果が抜群に高い投資価値が大いにあるのだ。

2. 睡眠

睡眠時間は短すぎても長すぎても死亡リスクが上昇する。最新のメタ解析では、1日7〜8時間の睡眠が最もリスクが低いという。忙しい現代人は長すぎる睡眠ではなく、短すぎることが問題になるケースが多いだろう。

睡眠中は何もできないので、しっかりと睡眠を取ることで物理的な活動時間は直接減少する。だが、寝ないと起きている間のパフォーマンスは直接悪影響を受け、睡眠不足だとまるで二日酔いのような頭になってしまう。

また、睡眠不足が長期化するとダイレクトに寿命を削る。さらに生きている間も生活習慣病のリスク上昇、集中力や記憶力の低下、免疫力の低下、精神的な不調などのリスクが付きまとう。

「睡眠を削って時間を作ろう」というコスパの発想が通じるのは、多少の寝不足でも問題が起きない若い頃限定である。40代以降はしっかり眠って残りの時間でどう生きるか?を考えるべきだ。

3. 人間関係

若い頃は誰とでもあっという間に仲良くなれるので、「人間関係を維持する投資」という発想はない。コスパよく、その時々で楽しい人間関係をサクッと作れる。自分の子供たちを見ていると、つくづくそう思わされる。

ところが40代以降は友達は新規でできるのではなく、既存の友達を維持するという考えに移行する。筆者はこれに失敗し、仕事と家庭にコミットしすぎたことや、引っ越しが多かったので旧友は数えるほどしかいない。

動画や記事発信をしている立場で、新規の出会いは毎日り、読者や視聴者とのコミュニケーションは非常に楽しい。だが、どうしても「お客様」という感覚で接する事が多くなり、「友達」という感覚とは違ってくる。

先日、髪を切りに行った時、同じくらいの年代の店長さんから「休日何をやって過ごしていますか?」という質問を受けた。「子どもと遊んでいる」と正直に答えたら、「いいですね!僕もそうですがずっとだときついので、夜は古い友人と飲み屋でずっとくだらない話ばっかりですよ」と返ってきた。それが不思議と自分の記憶に強く残った。

ああ、普通の40代は旧友と酒を飲んで騒げる友達がいるものなのか、と。友達関係への投資を怠ってきた自分に、身近でそういう相手はすぐ見つからないなと気づいてしまった。

40代ともなると新規の友達はできないし、旧友と仲の良さを維持する「投資」を意識しないといずれ誰もいなくなってしまう。一度、関係が切れてしまうと再接続は難しい。

友達の維持は人生全体の寿命対効果が高い活動と思うのだ。

4. 自炊

自炊は過小評価されがちだ。「手早く外食した方がコスパいい。洗い物もいらないし、日本は外食が安く東京なら選択肢も多い」という意見の持ち主も少なくないだろう。

だが自炊は技術として極めると、人生を変えるほどのインパクトがある。手前味噌ながら筆者は自炊が大得意である。

朝の味噌汁から始まって基本的に食事はすべて自分が作る。毎日3食、野菜は豊富にできるだけ健康を意識した献立にする。忙しい時は下ごしらえをしたものを冷凍しておき、いざ食べる時にサッと仕上げれば完成品になる。食器も食洗機前提にすれば、洗い物の手間もほとんどかからない。

自炊を極めるとまず外食にいかなくなる。理由は複数ある。1つ目に外食は店までの移動時間、食事提供の待ち時間がムダ。2つ目は外食は栄養が偏り、野菜が少ない。3つ目は自炊の方が圧倒的においしい。

筆者が外食する時は自宅で作らない料理を楽しむ時か、誕生日会などイベント限定である。

「自炊はコスパ悪い」というのは料理の技術力がない人が言っている事が多い。一朝一夕に技術は身につかないが、毎日作っていればこれほどコスパも寿命対効果も高い能力はないと分かる。

40代以降は「今日の1時間」が将来の自由時間や健康寿命を決定する。コスパやタイパで短期の効率を追求するのも重要だが、それだけでは人生後半の資本である「健康な時間」を確保できない。寿命対効果という長期的視点を持ち、時間のポートフォリオを戦略的に組み替えることこそが、これからのビジネスパーソンに求められる生存戦略である。

 

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。