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外国人政策から広がる発想
私は以前、外国人政策に関する論考の中で、政府および国政政党が自党の政策スタンスを入力・公開できる専用サイトの必要性を提起した。
これは、政策の透明性を高め、有権者が政党の立場を比較検討できるという点で、情報公開として大きな意義を持つ。
しかし現実には、政府機関がそのようなサイトを取りまとめて運用するには、政治的調整コストが高すぎることに考えが及んだ。政党間の利害、官僚機構の中立性、予算措置など、政治力学的・制度的・予算的な壁が立ちはだかり、現実性は低いと言わざるをえない。
民間主導という選択肢
そこで私は、こうしたサイトの構築と運用を、民間企業が担うという選択肢に着目した。民間主導であれば、柔軟な設計と迅速な実装が可能であり、政治的中立性を担保する仕組みさえ整えば、政府主導よりも現実的かつ持続可能な制度となり得る。
このサイトは、外国人政策に限らず、教育、福祉、財政、外交など、国政における重要議題を定期的に提示し、各政党が一定の猶予期間内にスタンスを入力・公開するという仕組みを想定している。これは、おそらく他国でも類例はないだろう。この仕組みが実現すれば、民主主義の言論の土台となる新しいプラットフォームという意味で、画期的といえるのではないだろうか。
議題設定の課題とAIの可能性
民間主導ならば、採算面の都合さえつけば現実可能性は高い。
一方、このサイトで扱う議題設定そのものに課題があることに思い至った。民間企業であれ公的機関であれ、このサイトの最重要事項である「議題の選定」には政治的なプレッシャーが不可避であり、特定の立場に偏るリスクを孕むからだ。
そこで私は、議題設定をAIに委ねるという制度設計を提案したい。AIは、国会審議、報道、SNS、世論調査などの膨大な情報を横断的に分析し、客観的かつ網羅的に議題を抽出することが可能である。
もちろん、AIによる議題選定には信頼性の担保が不可欠だ。複数のAIプラットフォームによる合議制、議題抽出ロジックの公開、過去との比較可能性など、制度的な透明性と説明責任を組み込む必要がある。
実装に向けた呼びかけと展望
この構想にご関心のある方は、私のX(旧Twitter)アカウントまでDMをいただければ幸いだ。制度設計と技術実装の両面から、共に議論を深めていければと考えている。
なお、実装可能性の一例として、チームみらいの安野貴博氏のようなIT技術者の協力が考えられる。氏は、私がIPAの未踏事業に関わっていた頃の未踏人材でもあり、現在は「デジタル民主主義」の実現を掲げる国会議員として、制度設計と技術の橋渡しに取り組んでいる。本構想においても、信頼できる協働候補者の一人である。
ちなみに、私の意見はいらないが、とにかくこの仕組みは面白そうだ、と考える事業者があれば、それはそれで構わない。ぜひしっかり検討・実装し、我が国の民主主義の言論空間を広げてほしい。
地方自治体への応用可能性
この仕組みは、私が議員として活動している地方自治体とその議会にも準用可能である。地方議会においては、そもそも議会が機能していない、という根本的な問題を抱えている自治体が少なくない。この仕組みの地方自治体版ができれば、議会の在り様はかわるかもしれない。
この点については、次回の原稿で改めて検討したい。
おわりに:制度設計と民主主義の再構築
民間主導型の政党スタンス一覧サイト、そしてAIによる議題設定という制度設計は、情報公開の新たな地平を切り拓く可能性を秘めている。政治的中立性、透明性、説明責任を制度に組み込むことで、有権者と政党の間に新たな信頼の架け橋を築くことができる。
制度は人を映す鏡である。だからこそ、制度を設計する者は、構造的思考と実践的知性をもって、未来の民主主義を構想しなければならない。