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大企業に勤めていても副業が推奨される今、起業に興味を持つ人は増えています。そんな中、常に注目されているのが資格の取得。なにもないところから資格を使ってどう稼ぐのか? 資格を取ることで人生を逆転させた、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏の著書『ごく普通の人でも資格を取ってきちんと稼げる本』から、再構成してお届けします。
試験難易度と成功の実現性の関係は?
資格には当然、試験があります。なかには講習を受けるだけで取れる資格もありますが、多くの場合は試験があります。ペーパーテストだけのものが大半ですが、弁護士や司法書士のように面接のようなものがある試験もあります。
資格試験受験生にとって気になる話題として、「試験の難易度」というものがあります。試験を受ける以上、どうしても合格率や難易度、必要な勉強時間などが気になるものです。
一般的な認識として、「難易度が高い=高収入、安定している」「難易度が低い=低収入、安定しない」という図式があります。しかし、察しのいい方はもうお気づきだと思いますが、この図式はもはや崩壊しました。
法律系最高峰の難易度である弁護士ですら、この図式は成り立っていません。弁護士は試験合格後、司法修習という研修期間を経て、弁護士事務所に就職するのが一般的ですが、この就職すらできない状況にあります。
規制されていた広告も緩和され、弁護士は競争が激化する一方です。難易度が高い資格を取ったからといって、高収入で安定しているというのはもはや幻想なのです。
合格率が高い資格一本で稼いでいる人もいる
これとは逆に、試験の難易度が低いからといって、低収入で不安定だとはかぎりません。たとえば、DTPエキスパートという資格の合格率はその半数が合格するという試験ですが、その資格を取って活動したからといって高い収入が見込めないかというと、そんなことはありません。
実際にDTPエキスパートという資格だけでもって、ウェブサイト制作のクライアントを多数かかえて収益を上げているデザイナーは数多くいます。
結論として、難易度と成功率には、ほぼ関係がないといっていいでしょう。弁護士や公認会計士など難易度が高い資格は世間的認知度が「やや高い」くらいの有利な点はありますが、ほとんど関係ありません。なぜなら、どんな資格を取ったとしても、結局、資格を取ってからはゼロからお客を増やしていかなければならないからです。
難関の弁護士や司法書士を取ったからといって、弁護士会や司法書士会があなたの宣伝をしてくれるわけではありません。そういう意味では、どの程度の難易度かは、実はあまり問題ではないのです。
もし難関資格に受からなかったら……
資格の選び方としては、資格からではなく「自分がやりたいことから選ぶ」という視点が大事なのですが、ここでひとつ判断しなければならないことがあります。
それは、自分がやりたいことから選んだ資格が「難関資格」だった場合です。何年受け続けても受かるかどうかわからない資格の場合、試験合格に何年もかかってしまうことがあります。それでも合格できればいいのですが、その保証はどこにもありません。
こういうとき、「何年くらい受けたらいいのでしょうか?」と相談されることがあります。理想を言えば、「短期間でスパッと取得する」ことができれば言うことはないのですが、現実はそう甘くはありません。実際には、合格に何年もかかるケースがあります。
その場合、どのくらい受け続ければいいかは悩むところですが、こればかりは答えがありません。
この「試験を受け続けるか、それともやめて別の道を目指すか」というのは、単なる資格試験の判断ではなくて、人生の決断です。これを人に委ねてはならないと、私は思います。
やりたいことをやらなければ、必ず後悔します。ですから、やりたいことはやったほうがいい。どうしても自分自身のやりたいことに難関資格が必要であれば、それは取るしかありません。
その決断は私ではなく、あなたがするのです。自分の人生ですから、自分で判断を下すことは当然でしょう。
ただ、これだけではあまりにも無責任ですので、ひとつの目安として、特殊な資格を除き、2年真剣に受けてまったく受かる気配もないような場合には、別の選択肢を考えてもいいと思います。
脳や適性には、人それぞれ必ず違いがあり、場合によっては向いていないことをやっている可能性があります。2年間真剣に勉強してもまったく結果がともなわないような場合、不向きな可能性があります。
そのまま試験を受け続けてしまうと、5年も10年も試験のことだけを考えた人生になってしまう恐れがあります。試験のことばかり考えていれば、いま勤めている会社の仕事にも悪影響が出てしまうでしょう。
その場合は、逆に資格人生以外を考えるチャンスととらえ、新しい道を選ぶ段階だと考えるほうが賢明かもしれません。
なんのために資格を取るのか?
難関資格に合格したからといって、約束された人生なんていまの時代にはありません。そんな幻想は捨てて、自分の人生を大切に考えてみてください。
たかが2年と言いますが、人生80年としたら40分の1の時間を費やすことになります。極端な例ですが、10年を試験勉強に使ってしまったら、人生の8分の1が「試験」です。
勉強したことは無駄にはなりませんが、資格の勉強をすることだけがすべてではないはずです。死んだ後、天国に資格は持っていけませんから、どこまで時間を費やすかは判断のしどころだと言えます。
たとえば、資格試験を受けるには家族の協力も必要でしょう。しかし、試験だけの人生が続けば、もしかしたら家族を不幸にしてしまうかもしれません。少なくとも「家族を不幸にすること」が資格取得の目的ではないはずです。
いま現在、このような資格試験のスパイラルに陥ってしまっている人は、あるいは気を悪くされるかもしれません。しかし、逆にこれは気づくチャンスでもあります。
勉強しかしないまま、収入も増えずに年老いてしまった可能性もあるはずです。いまから本当に自分のやりたい道に進むべく、切り替えていきましょう。
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横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/特定行政書士
士業専門の経営コンサルタント。2007年に日本では初めてとなる士業向けに経営スクール「経営天才塾(現LEGALBACKS)」を創設し、のべ全国3,000名以上の士業から相談を受け、相談件数は優に2万件を超える。主な著作に『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』(さくら舎)、『資格起業BIBLE』(技術評論社)などがあり、25冊20万部超の著者。2023年から士業のための生成AI・ChatGPT活用研究を開始。最新刊『「ムダ仕事」も「悩む時間」もゼロにする GPTsライフハック』を2024年11月に技術評論社より刊行。週刊ダイヤモンド、毎日新聞などメディア掲載も多数。
X(旧Twitter) : @yokosuka_ai
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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2025年6月11日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。







