日本一の信者数を誇る創価学会がいかなる宗教か。連立与党の一翼を担う公明党とどんな関係か、かなり物知りな人でも、きちんと説明できる人はあまりいない。
創価学会SNSより
また、公明党が何を主張しているかも、自民党や立憲民主党はもちろん、日本維新の会や国民民主党、共産党ほどには知られておらず、自公連立の双方にとっての損得がどうなっているのか、なぜ公明党は選挙に強いのかも同様である。
また、それ以前に「日本にはどんな宗教があって、それぞれの教義は何か?」と外国人から聞かれても、回答できない日本人が多い。伝統仏教のなかでも、浄土系・禅宗系・密教系に比べて、創価学会が属する日蓮系をよく知らない人が多いようである。
近年、ベストセラーになった日本通史に、日蓮がまったく登場しないということもあった。
世界の政治地図でも、キリスト教・イスラム教・仏教など宗教系政党は多いが、保守系・リベラル系・革新系などと比べて、よく知っている人は多くない。
キリスト教系民主主義というのは、ドイツで第一党の名にもなっているが、今世紀初めのローマ教皇レオ13世によって方向付けられた考え方であり、新しい教皇レオ14世はその志を継ごうとしている。
さらに、教科書でも日本の主要な宗教として創価学会は登場せず、テレビのドラマでも創価学会の信者や行事が描かれることは絶対にない。日本最大の宗教が、いわば、社会的に存在を隠されているのである。
こんなことでは、創価学会や公明党に何を期待すべきか、どんな注文をつけていいか分からないし、それが日本のためにも良いこととは思えない。
マスメディアで創価学会や公明党に対する好意的な報道が極端に少ないことも指摘できる。批判的でなくとも、懐疑的であったり、得体の知れないものとして扱いたがるのである。
私は、創価学会の会員でも公明党支持者でもないが、どちらかといえば常に好意的である。しかし、各種のメディアで執筆するとき、保守系であれリベラル系であれ、創価学会や公明党について好意的に書くと、編集者から是々非々の立ち位置を限度としてほしいと注文されてきた。
それが、日本の言論空間における暗黙の常識なのである。そんなことは、他の宗教でも政党でもありえない、不思議なことである。
単行本も、一般向けの創価学会や公明党に関するものは、ほとんどがアンチ感情を満足させるように書かれたものである。一方、創価学会や公明党では、このところ少し前向きの変化が見られるが、内部への説明はものすごく丁寧であるのに対し、外部へ声高に主張を展開することには同じだけのエネルギーを使ってこなかったように見える。
そこで、小学館新書から一昨年刊行した『日本の政治「解体新書」──世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱』で、「創価学会、公明党だけがなぜ成功したのか」というテーマの一章を書いたところ、創価学会の方からもアンチの立場の人からも、客観的で公正だ、長年の疑問がいろいろ解けたと評価をいただいた。
そこで、おおまじめに、創価学会とはなにか、公明党との関係はどうなっているかについて、長年研究してきた成果を一冊の本にまとめてみた。
創価学会についての本といえば、佐藤優さんのように称賛するポジションが明確なもの、田原総一朗さんのように弁護するというような色彩が強いものもあるし、島田裕巳さんや小川寛大さんのように批判色がやや勝ったものもあるが、私のものは、歴史や世界の宗教のなかでの特色などを踏まえて、骨太に客観的な姿を描いていこうというものである。
基本的には好意的であるが、その理由について、創価学会や公明党はトヨタやパナソニックに似ているという指摘をし、長期にわたって成功し続けている組織は、基本的にそれが優れた組織であるがゆえだというポジションである。それを私は、「顧客満足度の高い組織である」と称している。
この本は、基本的には一般の人たちを読者として想定したものである。この日本最大の宗教と、連立与党の一角を占める巨大組織をもっと一般の人に知ってほしいと思っている。一方、創価学会や公明党の人たちに対しては、一般の人たちに対してはこういうふうに説明したらどうかという提案である。また、海外への広宣流布(布教)へ進むにあたって考えるべきことは何かも詳しく論じている。
序章
日本人が知ろうとしない創価学会と公明党
第一章
自公連立の歩みと評価
第二章
池田大作というカリスマを客観的に評価する
第三章
釈尊から池田大作まで二千数百年の軌跡
第四章
公明党と創価学会の「読む年表」
第五章
現代世界における宗教と政治から考える「創価学会と公明党」