戦国時代の「支払い方法」:「君たちはどう支払うのか?」

20年前ならこのようなタイトルの話題は存在しなかったと思います。「君たちはどう生きるか」ならぬ「君たちはどう支払うのか?」であります。

80-90年代はクレカ全盛だった記憶があります。各社特典を設け、提携カードならば大手店舗や百貨店、航空会社のポイントがたまりやすいなどが売りでお財布の中に4-5枚のクレカをお持ちの方も多かったと思います。

ではクレカのポイント、日本ではそれなりに使いやすさもあるのでしょう。ここカナダの場合、私が加入しているクレカのサービスレベルが低いのか、使いたいという気が全く起きず、どうしようかと困っている状態にあります。理由は何一つ特徴的なサービスがないのです。航空券が取れるというふれ込みですが、一般航空会社のポイント数よりはるかに多くのポイントと追加料金払いが必要です。カードの支払いをポイント払いでやっても1ポイントで66セントにしかなりません。ショッピングのサイトはくだらなすぎてみる気にもなれずであります。

若い方はクレカの支払いが1か月前後あとにまとめて行うというメリットを既に見出していないのか、PayPayのようなQR決済でにすぐに現金の支払いが認識される方式の利用に移行しています。こう見ると日本でクレカ使用率は数値だけ見れば8割以上ですが、安泰とは言えないのかもしれません。

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日経に「デジタル地域通貨 迫る淘汰『素人運用』に限界、目的・機能の明確化が必須」とあります。いわゆる地域通貨が雨後のタケノコのように乱立しすぎたというもの。記事によると24年末でデジタル地域通貨は289もあるとのこと。一般的には商店街などで地域消費を促進するために導入するケースが多いようです。中には私の母校のように学校の同窓祭用に作った二次元コード決済もあります。特典はあるようですが、年に一度の同窓祭のためにそれを準備するのか、と思うとへぇ???という気持ちになります。

一方、私が時折行くカナダのある建物内の中華系商店街とフードコート。ここの特徴は何十店舗もある生鮮食料品とフードコートでは支払いは全部現金のみという豪快さであります。なのでここに行くときは銀行で現金を下ろしてから行かないと何も買えないという不思議なところですが、生鮮品は安く、フードコートは知る人ぞ知るレベルで、お手軽中華天国なので人のごった返し方はハンパではなく、キャッシュレス決済方法がビジネスを活性化させるというマーケティングの反証的存在です。

私はこのブログで相当前、たぶん、10数年前に日本から現金がなくなる時代が来ると何度か書かせていただいたのですが、その頃からよく反論を頂戴しておりました。「そんなわけない」と。でもそんなわけある訳です。「お前、香典はどうするのだ、結婚式のお祝いは…」とも指摘されましたが、そちらもデジタル化が進み、一部からは「味気ない」とコメントもありました。でも慣れてしまえば「香典、3000円、ハイ」とスマホでパッパと済ませてしまえば義理香典も義理結婚祝いも気にならないのであります。

その昔、冠婚葬祭は祝儀袋や不祝儀袋をコンビニで買い、その中に現金を詰め、しかも結婚式ならピン札をいれよ、と言われ、更に慣れない筆ペンで汚い字を書き、人前にさらさねばならないかと思うと私は今の時代にほっとしているのであります。

日本のキャッシュレス率は24年で42.8%だそうで確実にこの比率は上がっており、たぶん、27年ごろに50%を超える勢いです。先日話題に振ったステーブルコインがこの後確実に普及するのでキャッシュレス比率は加速度的に上昇するかもしれません。他方、まだ現金決済なのが病院、床屋や理容室、郵便局や宅配もそうです。私は業務上、日本で宅配着払いが結構あるのですが、10万とか20万円とかを宅配時に現金払いかい、と思うとぞっとするときもあります。理髪店は何故か、レシートをくれたことがないので税務署はどう監視しているのでしょうか?まさか洗髪する水の量で脱税の有無を調べるとか…。(昔、あるラブホが脱税していたのを税務署が水道料から見破ったケースがありましたね。)

脱線しました。デジタル通貨戦国時代、私が思うのは政府通貨の現金を一定額だけウォレットに移すか、指定の口座ないしクレカを通しての決済が主流なのですが、リスク管理的にはダイレクトに口座引き落としはするべきではないでしょう。一種の「ホット ウォレット」状態を維持するのと同じです。通常はコールドの状態にしてちまちまお金を動かしたり、残高が少なくなると自動的チャージ完了する仕組みが安全な気はします。

アップルウォッチで決済機能を持っている人が時計越しにチャージしているのを見るたびに「イケてるな」と思います。財布なんてもういらない時代はすぐそこに来ているのでしょう。

最後に、こちらでホテルに泊まると枕銭とか、ボーイにチップだったのですが、いまや小銭も札も持たない時代になりました。一部のホテルではキャッシュレスチップなるものがあるようですが、もはや枕銭はおかない、荷物は自分で運ぶ時代なのかもしれません。小銭と縁が切れるとこういうところにしわ寄せがくるとも言えそうですね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年8月28日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。