7月の外国人旅行者が減っている理由は「日本の酷暑」ではないか

日本経済新聞の報道によれば、今年7月の外国人訪日観光客数は前年割れとなったそうです(図表も同紙から)。

これは2ヶ月連続のマイナスで、外国人だけではなく日本人の宿泊者数も前年同月比割れとなっています。

日本人の宿泊者数が7ヶ月連続で前年割れとなっているのは、賃金の上昇が物価上昇に追いつかず、旅行費用を削る日本人が増えていることを示しています。ホテル代や飲食費の高騰で限られた可処分所得の中では致し方ない面があるのだと思います。

外国人に関しては、6月7月は悪質なこのデマがSNS上で拡散したことで、外国人観光客が減った側面もあるようです。

記事の中では外国人観光客の減少の理由として円高の影響があり、かつ訪日客が一巡してピークアウトしたという分析もなされています。

本当にそうでしょうか?私は外国人に関しては別の要因が考えられると思っています。それは日本の夏の厳しい暑さです。

通常7月8月のサマーシーズンはバケーションで旅行に出かける人が多くなります。日本人の場合、8月もお盆や子供の夏休みがありますから、暑くてもこの時期に旅行をする人が増える傾向があります。

35度を超えるような猛暑が続き、しかも湿度が高い日本の夏は体感温度では比較的乾燥している海外の都市よりもむしろ暑く感じます。

海外からやってくる外国人の間で、SNSなどを通じて日本は夏に旅行すべきではないという情報が広がってきています。

かつてはハイシーズンであった夏は、むしろ旅行者からは避けられる季節となっているのです。

外国人訪日客の減少の理由が日本のインバウンド需要が1段落したからかどうかは、秋から冬にかけての旅行者数のデータを待ってから判断すべきだと思います。

もし私の推測が正しければ、夏に旅行をせざるを得ない日本人にとっては、外国人訪日客が夏の間減少するのは朗報です。

しかし、本当に暑い夏を避けているだけだとすれば、その反動が秋の行楽シーズンにやってきます。

そうなれば、今年の年末にかけて宿泊施設の料金は一段高となり、日本人にとってはさらに旅行のハードルが高まることになるでしょう。

Hanafujikan/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年9月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。