米国人として初のローマ教皇に選出されたレオ14世は今月8日で教皇就任4か月目を迎える。その間、レオ14世は、前教皇フランシスコのシナドス路線の継承を表明する一方、独自色を発揮していく姿勢も見せてきた。その新教皇は6日、米国の保守カトリック系の代表的メディアEWTN代表と会見した。EWTNは過去、前教皇フランシスコのリベラルな政策を激しく批判してきたメディアとしてよく知られている。

レオ14世とEWTN社長との会見を報じるドイツのカトリック通信のヴェブサイトから
先ず、EWTNメディアについて少し紹介する。EWTN(エターナル・ワード・テレビジョン・ネットワーク)は、米国における保守カトリック系メディアの代表格だ。同メディアは1981年、クララ修道院のシスター・マザー・アンジェリカによって設立された。アラバマ州アイアンデールに拠点を置く。
EWTNは世界最大の宗教放送局を自称し、ネットワークの運営は主に寄付によって賄われている。EWTNグループには、多数のテレビ局・ラジオ局に加え、多言語通信社CNAと新聞「ナショナル・カトリック・レジスター」も含まれる。世界中で2億世帯以上に視聴されている。
この保守系メディアは過去、フランシスコ教皇(2013~2025年)との間では、度々対立してきた。
2021年、スロバキアで行われたイエズス会との会合において、フランシスコ教皇は「大手カトリック放送局」(EWTN)が自身に関する中傷を広めていると非難し、「悪魔の業」と呼んだ。また、バチカンのナンバー2の国務長官ピエトロ・パロリン枢機卿は2022年、EWTNの編集者に対し、「愛と客観性、そしてバランスをもって真実を伝えるように」と注文をつけている。
EWTN はレイモンド・レオ・バーク枢機卿やゲルハルト・ルートヴィヒ・ミュラー枢機卿といった前教皇を批判する保守派聖職者の声をしばしば取り上げてきた。また、元教皇大使カルロ・マリア・ヴィガノ氏、トランプ前大統領顧問スティーブ・バノン氏といった著名人が定期的に出演している。
その代表的なカトリック系メディアの代表モンセ・アルバラード女史とレオ14世は6日、会見したわけだ。バチカン広報部によると、このメキシコ系アメリカ人ジャーナリストのアルバラード女史は、フィラデルフィア大司教区のネルソン・ペレス大司教と共に会見した。なお、バチカンは会見内容については明らかにしていない。
レオ14世が米国の代表的な保守派カトリックメディアの代表と会見したと報じられると、「新教皇の路線はやはり伝統的な保守派ではないか」といったイメージを与える危険性が出てきた。
それを懸念したのか、バチカンは早速、「EWTN代表との会談は、5月8日の選出以来、レオ14世が米国カトリック教会の保守派代表者と行ってきた数々の対話の一つだ。直近では、8月22日に、伝統主義カトリックの代弁者と目されるバーク枢機卿の謁見を受けた。バーク枢機卿は、前教皇の改革決定を批判してきた高位聖職者だ」と説明。
それだけでは十分でないと考えたのか、バチカンは「レオ14世は米国におけるリベラル・カトリックの代表者との対話も継続している。例えば、9月1日には、イエズス会のジェームズ・マーティン神父を謁見した。マーティン神父は、同性愛者などの性的マイノリティも含めたオープン・パストラル・ケアの最も著名な提唱者の一人だ」と述べている、といった具合だ。
バチカンがレオ14世とEWTN代表との会見内容を公表していないので、何も言えないが、シカゴ生まれの米国人教皇にとって、保守的カトリック系メディアとの会見で特に神経質になる必要はない、といったクールな認識かもしれない。
ちなみに、「ポスト・トランプ」の最有力候補者、カトリック信者でもあるJ・D・バンス副大統領は超保守派のカトリック系グループやメディアと積極的に接触している、という情報が流れている。‘アメリカ・ファースト‘のトランプ政権下では、「ゴッド・ファースト」が教会の垣根を超え、社会全般で多くの市民権を得ているのかもしれない。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年9月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。






