アメリカの人気コメディアン、ジミー・キンメル氏のレイトナイトショー番組が、突然の「無期限休止」となりました。放送局は、米ウォルト・ディズニーの子会社である大手放送局ABCです。その背景には政府機関による圧力の存在が指摘されています。
FCC委員の発言が波紋を呼ぶ
番組休止の直前、連邦通信委員会(FCC)のブレンダン・カー委員が、キンメル氏の番組を放送するABCに対して放送免許の停止を示唆していたことが明らかになりました。これを受けて、ネット上では「実質的な政府介入ではないか」との批判が噴出しています。
表現の自由が建国以来の価値観とされてきたアメリカで、政府の関与を疑わせるような対応に、懸念が高まっています。
政権批判が“引き金”?
問題の発端となったのは、キンメル氏が番組内で発した政治的風刺コメントでした。
最近発生したチャーリー・カーク氏の暗殺事件をめぐり、キンメル氏はトランプ支持派が「「チャーリー・カークを殺害したこの少年を、自分たちの一員ではない何者かとして必死に描こうとしていた」し、さらに「トランプ前大統領は舞踏室の増設の方に関心があるように見える」皮肉を込めた風刺を披露しました。そのうえで、「4歳児が金魚の死を悼むレベル」と揶揄するなど、風刺のトーンを強めていました。
この発言が一部の保守派から反発を招き、政治的な圧力へとつながった可能性も否定できません。
「放送免許を取り上げる」発言の余波
トランプ前大統領はかねてより、自身に批判的な報道機関に対して「放送免許を取り上げるべきだ」と発言してきました。これまでは「レトリック」として受け止められてきたものの、今回の件は、それが実行に移される可能性を示したものとして注目されています。
実際、ABC以外のテレビ局でも人気トーク番組の打ち切りが発表されており、放送事業の再編や買収交渉の影響がからんでいるとの見方も出ています。
トランプ大統領とジミー・キンメル氏 Wikipediaより
「自由な表現」はどこへ向かうのか
今回の番組中止をめぐる騒動は、で政府の権限の強さと、テレビ局側のリスク回避姿勢が浮き彫りになりました。コメディという表現形式は、歴史的にも政府による弾圧の対象になることが少なくなかった分野です。
そして今、多くのメディア関係者の間で懸念されているのは、「次はニュース番組や報道の自由が標的にされるのではないか」という点です。表現の自由は、ただのスローガンではありません。それが現実の中でどこまで守られるか──今回の騒動は、その試金石となるかもしれません。
しかし、米国のコメディアンに「気骨」はまだまだあるようです。