「人生やりたいことがなくなる病」の治療法

黒坂岳央です。

40代に差し掛かると、人生の格差が大きく開いていく。特に大きいのが経済格差以上に「意欲格差」である。

中年ともなると、やりたいことが何もない人と、やりたいことが多すぎて時間がいくらあっても足りない人。この二つのタイプに分かれる。

筆者はありがたいことに後者である。常に「次はこれをやりたい」「これも面白そう」と思いながら、24時間365日が足りないと感じている。スキマ時間があれば仕事、勉強、家族との時間、旅行など動きまくってしまう。

本稿では人生に飽きないためのコツをシェアしたい。

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人生に飽きてしまう人の共通点

30代までは、20代の延長線上にある。新しい経験も多く、まだ物欲もある。ところが30代半ば以降は気持ちが大きく変わってくる。あらゆるエンタメは既視感を伴い、受動的な娯楽は驚きや感動を与えてくれなくなる。仲の良かった友人は家族優先になり、物欲も消え、ただお金が貯まるだけで全く使い道が見つからないのだ。

その状態は、まるでRPGゲームでラストダンジョンに到達し、強力な武器や魔法をすべて手に入れた状態に似ている。一通り必要なものは全部手にしたが、もう残りの寿命をまっとうするまで何もやることはない。なのに人生はまだ半分残っている。

こうなれば事実上、もうそのゲームは終わりである。こうした「やり尽くした感覚」に陥ると、人は「何かやって人生を輝かせたいが、何もしたいものがない」と思うようになる。

適度な忙しさこそが薬

こうした苦しい人生を楽しくするにはどうすればいいか?その答えの一つが、小さな目標をたくさん持つことだと思っている。

世間的には「人生丸ごと使った大きなことに挑戦をしろ」みたいな提案がなされがちだが、そもそもやりたいことを失った人には現実的な提案ではないだろう。そうではなく、目標は小さくていいので「たくさん持つ」ことが重要だ。

筆者はゲームで言うところの「縛りプレイ」をすることで人生が楽しいと感じる。子育てや仕事はその代表例である。子どもを育てることは決して楽ではない。悩みも課題も多い。地域の集まりや学校での話し合いで、自分の子供以外のことも考える事が多い。だが、その分だけ新しいミッションが次々と与えられるし、小さな壁だけそれを乗り越えるたびに楽しさがある。

仕事も同じで、新しいことへの挑戦はとにかく楽しい。難しいこと、わからないことに出くわすとむしろ理解するまで粘り強く取り組む楽しさがある。わからないこと、できなかったことができる瞬間は最高の爽快感だ。

子どもが小さい今は、子どもの学力を伸ばす取り組みや旅行を楽しんでいる。やがて彼らが大きくなったときには、彼らとビジネスもしたいので自分自身も時代に置いてけぼりにならないよう、一生現役で第一線で働き続けたいと思う。

正直、この生き方は大変であり縛りプレイだが、大変だからこそ生きがいになる。

「楽」ばかり求める人生はつまらない

楽を求める人生は必ずしも「楽しい」とは限らない。たとえると、ラストダンジョンでもう敵とは一切戦わず、ただその場に立ち尽くしているようなものだ。確かに楽で自由だが、そんなゲームはまったく楽しくないだろう。誰しも虚無感に襲われる。だから楽だけを求めても人生は楽しくないと思うのだ。

昔、自分が子供の頃、今は亡くなったおじいちゃんの口癖が「もう自分の人生は終わったのでさっさとお迎えがきてほしい」だった。おばあちゃんは「外で散歩でもしてきなさいよ」といっていたが、「そんなことしても意味がない」と返していた。傍目にはその楽な生活がとても楽しそうには見えなかったのだ。

人は適度に忙しくないとろくなことを考えない。暇すぎれば生きがいは消え、孤独や不安に苛まれる。一方で適度に忙しければ、創意工夫を凝らして懸命に働き、ギリギリで突破するような高揚感が生まれる。

筆者は人よりたくさんのアルバイトを経験してきた。暇でぼんやりと時間を潰す仕事もあったが、若い頃から忙しくバタバタと走り回ってようやく終わるような仕事の方が圧倒的に楽しかった。人間の本能は、挑戦や負荷を楽しむようにできているのだろう。

人生は「楽する」方向に進むと、やがてやりたいことがなくなり、虚しさだけが残る。逆に、あえて挑戦を続ける人にはいつまでも楽しさが残る。

40代以降を「意欲格差」の分岐点ととらえるなら、自ら忙しさをつくり出すことが何より大切である。忙しさは不幸の象徴ではない。むしろ、忙しさの中にこそ生きがいがあり、人生を豊かにする要素が詰まっているのだ。

 

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