60歳以上の家計金融資産は過去最高でも高齢者はさらに二極化

日本は急速な高齢化と少子化が同時進行している。70歳以上はすでに約3,000万人に達し、家計金融資産の大半を60歳以上が持つ。一方で物価高や低金利の長期化で高齢者の資産は二極化し、相続や社会保障への影響が大きくなっている。

参照リンク:高齢者の金融資産、60代単身世帯の3割ゼロ 物価高響き二極化 日本経済新聞

家計金融資産の現状

  • 2025年6月末の家計金融資産は約2,200兆円で過去最高。株高と新NISAによる投信資金流入が要因。
  • 株式残高は約300兆円、投資信託は約140兆円へ増加。
  • 一方、現金・預金は約1,100兆円と18年ぶりに減少。キャッシュレス化や投資商品の拡大が背景。

高齢者への資産集中と二極化

  • 60歳以上が家計金融資産の約6割(1,200兆円超)を保有。
  • 70歳以上だけでも約650兆円を持つ。
  • しかし70歳以上の単身世帯の約3割は資産ゼロ4割弱が200万円以下にとどまり、資産格差が顕著。

大相続時代の到来

  • 団塊世代(現在後期高齢者)の高齢化により、今後20年で70歳以上の資産の半分以上が相続される見通し。
  • 相続税収は2030年代半ばに約4兆円へ増加の可能性。
  • 地方の持ち家相続は空き家増加や地価下落を招く恐れ。

単身高齢者の脆弱さ

  • 単身世帯の金融資産は中央値100万円程度。40~50代ではさらに少ない。
  • 病気や介護で代替者がいないため入院や施設入所が難しくなる事例も多い。
  • 心理的ハードルもあり「ひとり老後」への備えは進みにくい。

政策課題と対応

  • 物価高で年金だけでは生活困難な層が増え、給付金や消費税減税を求める声が強まる。
  • 住民税非課税世帯は約1,400万世帯で、その約7割が高齢者。
  • 給付付き税額控除や年金制度改革、日銀の利上げによる預金金利改善など総合的な支援策が必要。ただし低貯蓄層が多く、利上げだけでは不十分との見方もある。

日本では高齢世代に金融資産が偏り、かつ資産保有の二極化が進んでいる。団塊世代の高齢化で大規模相続が迫る一方、低貯蓄・無職世帯が急増している。物価高と人口減少が重なる中、年金制度改革や給付付き税額控除、相続税制見直しなど、包括的な政策対応が不可欠である。

なにもしなければますます格差は広がるばかり