「国籍より経済力」という判断基準

黒坂岳央です。

近年、インバウンド需要や外国人労働者増加により、以前より外国人との距離が近くなったと感じる人もいるのではないだろうか。

筆者も仕事や旅行、さらには住宅購入で彼らと関わる機会が増えた。正直に本音でいえば、同じ内容なら自分は外国人より日本人同士のほうが安心だと感じる場面は多い。日本人同士の方が文化や常識の共有度が高く、意思疎通の齟齬が少ないからである。

しかし一方で、国籍よりも所得や資産、社会的立場といった経済的シグナルは、取引の信頼性を測る上で役立つ場面が多いと感じるのである。

センシティブで燃えそうなテーマだが、可能な限り差別的トーンが出ないよう冷静かつロジカルに持論を展開したい。

sommart/iStock

高級サービスは安定している

日々、いろんな人とコミュニケーションを取っていて感じることは、「お金持ちはわかりやすい」ということだ。価値観は多様とはいえ、彼らには明文化されない共通認識がある。

たとえば外資系の高級ホテルに宿泊すると、スタッフも利用者も外国人が多い。普通は異文化故に想定外のこともありそうだが、対応は総じて落ち着いており、サービスもエレガントだ。ギョッとするような悪い意味でのサプライズはない。

これは文化差を超えて、標準化されたマニュアルやプロトコルに基づく均質なサービスが徹底されていることによるだろう。良くも悪くもサービスや応対について推測しやすいといえる。

この背景にあるのは、顧客からのクレームや評判毀損のコストが極めて高いという事実だろう。高級ホテルはお金持ち自身が働いているわけではないが、流れている雰囲気や対応サービス、資本力という点で間接的に富裕層が好む対応を受けられるといっていいだろう。

お金持ちは本当に合理的

また、筆者は来年からの新居移住に伴い、現在は住宅売買の取引中だ。この取引に当たり、複数の住居の売主全員が外国人オーナーだけで、日本人は一人もいなかった。

最初は「ネットには異文化でゴミ出しトラブルなどで揉めている話をよく見るが、本当に大丈夫だろうか?」と不安になった。しかし、実際に物件や地域の見学、直接売り主や仲介会社とのコミュニケーションを経て安心感を得た。まったくそうしたネガティブな情報は出てこず、現地を見学すると平和で穏やかな空気が流れていた。

そして外国人オーナーは国際的に活躍するデザイナー、企業経営者、そして開業医などの職業についており、彼らとのやり取りは極めてビジネスライクで、交渉もスムーズだった。内1件で途中、物件価値において数百万円単位の交渉が入ったが「わかりました」と即答で解決。もっとあれこれと話し合いが入ると思っていただけに驚かされた。

直接対面で話をしたが、全員柔和な表情で穏やか。極めて平和的で日本語も非常に流暢だった。家を手放す理由を尋ねてみると、「もっと大きな家に引っ越すため」といってネガティブな理由ではなかった。聞けば引っ越し先は近所の豪邸へ行くようである。

彼らはビジネスライクで、ゴールが「合理性」にある。そのため、細かな文化差や国籍を超えて理解共通性がある。合理性に国籍はなく、お互いに同じゴールを目指すというわかりやすさがある。

一方、一般的には人によってゴールが異なり、何を優先するかはまちまちである。そのため、どこで相手の気に障るか、逆に好感を持たれるかは予測が難しい。合理的な相手はわかりやすいのだ。

富裕層にとって揉め事は時給負けしてしまい、下手すると炎上やトラブルに巻き込まれることは合理的に避けるべきコストという見方ができる。だからこそ、交渉も穏やかに進む傾向が強いのだろう。

自分は大富豪などではないが、少しずつ経済的余裕が出るほど、「お金で解決できる揉め事は、お金で解決できるうちにさっさと処理して時間や手間をかけたくない」という思考に変わっていった。

もちろん、所得や資産が高ければ必ず誠実というわけではない。外国人富裕層にも不義理を働く人はいるだろうし、所得が低くても極めて誠実な人もいる。あくまで統計的、確率論でしかないということだ。

だが学歴がある種の信用シグナルとして労働市場で機能しているのと同じく、相手の信頼性の指標の一つに社会的地位などはあるのではないだろうか。

 

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