以下は自民党総裁選(2025年9月22日告示)に立候補した5人の主張を整理した要約である。少数与党に転落した自民党が、党の立て直しと物価高対策、野党との連携という前代未聞の課題にどう向き合うかが焦点となっている。
小林鷹之氏
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現役世代の支援
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所得税の定率減税を時限的に実施。控除や税率構造を見直し、子育て世代を含む現役世代を支援。
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防衛・外交
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防衛費はGDP比2%では足りず、国家戦略を改定し必要額を積み増す。
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経済安全保障のインテリジェンス機関を創設し、対外情報機関も政治主導で整備。
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憲法・安全保障
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憲法に自衛隊を明記し、緊急事態条項を創設する。
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外国人政策
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重要土地や不動産の外国人取得規制を強化。外国勢力の干渉に刑事罰を設ける。
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党改革
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自民党の解党的出直しを掲げ、原点回帰と世代交代を断行。
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茂木敏充氏
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党再生と人材登用
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2年で党と日本経済を再生。閣僚平均年齢を10歳若返らせ、女性を3割登用。
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経済政策
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増税ゼロを掲げ、数兆円規模の「生活支援特別地方交付金」を創設。
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個人金融資産や企業の内部留保を投資へ誘導し、成長の好循環を形成。
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地方分散と成長分野
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AI、半導体、データセンター、グリーン事業などを地方に誘致して東京一極集中を是正。
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外交・治安
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外相経験を活かした強い外交。違法外国人ゼロを目指し厳正な法令順守を徹底。
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野党連携
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維新や国民民主との連立拡大に前向き。
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林芳正氏
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継承と改革
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岸田、石破両政権の官房長官経験を踏まえ、継承の中に変革を求める。
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経済・社会保障
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実質賃金を毎年1%上昇させる経済環境を定着。
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規制緩和でDX(デジタル)とGX(グリーン)を推進。
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「日本版ユニバーサルクレジット」で低・中所得層を支援し、中間層を再生。
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団塊ジュニアが高齢化する2040年代を見据えた社会保障工程表を作成。
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地方・防災
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コメや麦・大豆の国産化促進。地方税の偏在是正。防災庁設置を提案。
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野党連携
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まずは政策ごとの連携を重視し、連立拡大には慎重。
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高市早苗氏
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伝統と安全保障
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日本古来の伝統を守るため体を張る。皇統を男系で維持するため皇室典範改正。
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自衛隊の憲法明記。
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外国人・治安政策
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外国人犯罪への厳格対応。通訳体制など現状の捜査の限界を是正。
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経済・補助金改革
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補助金制度の「大掃除」を実施し、歪んだ再エネ補助金政策を是正。
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給付付き税額控除の制度設計に着手。
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党再建
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自民党を「よく働くチーム」へ刷新し、女性を積極登用。
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野党連携
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基本政策が合致する野党との連立拡大を容認。
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小泉進次郎氏
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党改革と一致団結
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2009年の野党転落時を引き合いに、再び「解党的出直し」を断行。
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国民との約束を着実に実行するため、党を一つにまとめ信頼回復を図る。
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経済対策
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物価高対策を最優先。臨時国会で補正予算提出を目指す。
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ガソリン税の旧暫定税率廃止。物価・賃金上昇に応じて基礎控除等を調整。
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野党連携
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物価高対策や社会保障で野党との政策協議を積極的に推進。政権枠組みの議論も視野。
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今回の総裁選は、衆参ともに少数与党となった自民党が直面する「物価高対策」と「野党連携」を主戦場としている。
経済政策では、小林氏が税制改革、茂木氏が地方交付金、林氏が賃金上昇、高市氏が給付付き税額控除、小泉氏が基礎控除調整と、いずれも異なる手段を提示。野党との連携では、茂木氏・小泉氏・高市氏が積極、小林氏が段階的、林氏が慎重と温度差が鮮明だ。
自民党は党員投票と国会議員票を合わせて新総裁を選出する。決選投票をにらんだ混戦が予想され、党再建と政権安定のビジョンをどこまで明確に示せるかが、次期総裁を決する鍵となる。
総裁選所見発表演説会に臨んだ各候補 自民党HPより