世界のエクソシストが一堂に集まった

「国際エクソシスト協会」(AIE)第15回年次総会が今月15日から20日まで、イタリアのローマ近郊のサクロファーノで開催された。ローマ教皇レオ14世はオンラインで参加し、「悪魔からの解放という、繊細で極めて必要な奉仕だ」と、エクソシストの業を評価した。同総会には、約300人の聖職者らが参加した。

エクソシストたちの年次総会風景、バチカンニュース2025年9月23日から

イタリア通信社(ANSA)によると、レオ14世は挨拶で「悪に取り憑かれた者は、祈りとキリストへの呼びかけを通して支えられなければならない。神は悪魔祓いの秘跡を通して悪魔に打ち勝つことができる」と述べた。ピエトロ・パロリン枢機卿をはじめ、数名の枢機卿と司教が同総会に参加した。

エクソシストと言ってもピンとこない人が多かったが、1973年に制作され、脚本賞を含む2部門のアカデミー賞を受賞した米国のホラー映画『エクソシスト』によって世界に知られるようになった。

約30カ国に会員を持つAIEは1994年、バチカンから正式に認可された。AIEの創設者ガブリエーレ・アモルト神父は2016年に亡くなった。同神父によると、「1986年から2010年まで7万回以上の悪魔祓いを行った」という。同神父は英日曜紙「サンデー・テレグラフ」とのインタビューの中で、「自分は毎日、悪魔と話している。自分がラテン語で話しかけると、悪魔はイタリア語で答えた」という。

カトリック教徒が多数派を占める国では、悪魔祓い(エクソシズム)が依然行われている。教会はエクソシズムを「人々を悪の力から解放するよう神に祈る行為であり、特別な祝福の儀式」と受け取っている。悪魔祓いには、聖水の散布や按手も含まれる。AIEではまた、エクソシスト(悪魔祓い師)の養成も行っている。

前教皇フランシスコは、「悪魔」や「悪霊」と戦う必要を繰り返し述べてきたが、悪魔祓いに批判的な聖職者もいる。「悪魔祓いを願う人は実際は医学的および心理的な支援を必要としているのだ」と主張し、悪魔祓いに懐疑的な立場を取る。例えば、旧約聖書研究者ヘルベルト・ハーク教授は、「サタンの存在は証明も否定もされていない。その存在は科学的認識外にある」と述べ、エクソシズムに対しても慎重な姿勢を取っている。ちなみに、悪魔祓いは、被害者本人の同意を得た場合にのみ行われることになっている。

バチカン法王庁は1999年に、1614年のエクソシズムの儀式を修正し、新エクソシズム儀式を公表した。それによると、①医学や心理学の知識を除外してはならない、②信者が霊に憑かれているのか、通常の病気かを慎重にチェックする、③秘密を厳守する、④教区司教の許可を得る―など、エクソシズムの条件が列記されている。

バチカンが新エクソシズムを公表した背景には、霊が憑依して苦しむ信者が増加する一方、霊の憑依現象と精神病との区別が難しくなり、一部で混乱が生じてきたからだ。霊の憑依現象と精神病の相違として、「精神病患者の場合、祈祷に反応を示さないが、霊に憑依された人の場合、祈ると激しく反応してくる」という。

聖ヨハネ・パウロ2世は悪魔について、「悪魔は擬人化した悪」と規定し、「悪魔の影響は今日でも見られるが、キリスト者は悪魔を恐れる必要はない。しかし、悪魔から完全に解放されるためには、時(最後の審判)の到来を待たなければならない」と述べている。

エクソシストの一人、グリッファ神父は「悪魔は存在し、その様相は多種多様に及ぶ。その活動はここにきて激しさを増し、悪魔の憑依現象が広がっている」と証言している。

新約聖書の預言書「ヨハネの黙示録」によると、「終わりの日に、霊界の戸が開き、無数の霊人がこの地上界に降りてくる」という。すなわち、封印されていた戸が開き、多くの悪魔が地上に降りてきて、世界はハルマゲドンの様相を呈する。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年9月日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。